119話「新・無頼漢!!⑤ 強敵出現……!」
……覚えているだろうか?
かつて学院入学したばかりの時期に起きた出来事。
世界各地でエンカウント現象が起きて、モンスターが襲いかかってくる現象。
その前提として、最初期でナッセとリョーコはオカマサとドラゴリラと一緒に歩いていたら、異常に強いボス級モンスターとエンカウントした事を……。
『巨大な女王人形』
精神生命体で物理攻撃の一切が効かず、様々な人間大の人形の手下を従える強敵。
とても強く、そこそこのベテランでは束になってかかっても勝てないほど。
しかも普通にエンカウントして遭遇する事があるから、犠牲者も少なくない。
威力値は二四〇〇〇と結構高い。
あの時は威力値一四〇〇〇のナッセと威力値六〇〇〇のリョーコが粘っていたし、最後は威力値四〇〇〇〇のマイシが一撃で粉々にしたから助かった。
ウパウパウパウパ!
「糞がっ!!」
なんと、そういう不意打ち的なボスクラスモンスターが目の前に現れたのだった。
オカマサは悔しくてたまらずギリッと歯軋り。
【双頭のアホロートル】(水族)
威力値:21000
デフォルメされたような巨大なウーパールーパー。乳白色の透き通るような肌。愛嬌のあるつぶらな目。牙のなさそうな大きな口。左右の耳あたりに三本ならぶ羽毛のようなエラ。精神生命体。
見た目こそ可愛いが、とんでもない!
ウパウパと反響音を響かせる。下級特上位種。
ウーパールーパーの開かれた口から飛び出した凶悪なウツボみたいな黒いバケモノが長────く身を伸ばして、テンチュの頭に噛み付いて体をぶら下げていた。
血が流れて滴り落ちていく……。
「ま、マミりやがった……ッ!」
ボホモは顔面真っ青でガクガク震えていた。
オカマサは気を抜かず、前もって「気を付けろ! 見た目通りと思わないでくれ!」と警告した。
テンチュも本気を出して偶像化や言霊スキルも多用していて、なおかつ全員で全力で総攻撃して、このザマである。
理不尽なまでに強いソレは無情にもテンチュの頭を食らってしまった。
ウパウパウパウパウパウパウパパパパパ……!
あちこち反響する不気味な音。精神生命体による反響音。
そして周囲はあちこち点在する水草が揺れる不思議な風景。これも精神生命体の具現化されたイメージ空間。
ウパウパウパウパパウパウパ……!
ガリッと齧られて、首のないテンチュの体が床に落ちる。血もボタボタッと。
「ぼあああああーっ!! テンチュがーっ! テンチュがーっ!!」
親友の無残な死骸に、ボホモは動転して無策に駆け出す。
オカマサは「待て!!」と手を差し出すが遅い。
バリボリ咀嚼していたアホロートルのウツボはゴクンと飲み込み、ギザギザの歯を剥き出しにボホモへ食らおうと襲い掛かる!
ドガガガアァァアァンッ!!
見事、それはアホロートルのウツボを爆発の連鎖が呑み込んだ。なんとオカマサとドラゴリラが揃ってランチャーを肩に乗せて砲撃したのだ。
それでも汗を垂らす苦い顔だ。
「逃げろ!! 手に負えるモンスターじゃあないっ!!」
「せや!! はよう逃げるんやでっ!!」
しかし爆煙から平然と抜け出してきたウツボは、呆然と見上げていたボホモをガリッ! 血飛沫が舞う!
ボホモの下半身だけの死骸がボテッと倒れていった。
オカマサは絶句し脱力感を覚えた。
テンチュとボホモの転がる死骸に光の粒々がボワワワと舞い上がり、死骸を光子化させていく。そして虚空へ溶け消えていった……。
エレナもそうだったように、死ぬと異世界転生させられると言うのは聞いていた。
「前のと同じや! 全く堪えてへんっ!」
「く……! このランチャーもヤツにとっては玩具でしかないのか……!」
近代兵器ですら物理攻撃の域を出ない以上、精神生命体には全く歯が立たない。
「糞が────ッ!!」
拳銃で銀の弾丸をバンバン撃ち込んでも、目にすら掠り傷を負わせられない。
オカマサたち漢どもは精神世界関連の攻撃が使えない。つまり詰んでる。
平然としたアホロートルはギョロリとこちらへ視線を向けながら、バリボリ咀嚼している。食べ終わった時が襲撃の合図かも知れない。
ウパーウパウパーウパーウパウパウパーウパウパウパパパパー!
「……糞がッ! 全員撤退だ!! 生き残る為になっ!」
煙玉を放り投げて大規模に煙をボフフフンと巻き起こして、その隙にフロアの出入り口へ駆け出していった。
通路へ入ると、オカマサは手榴弾をフロアへ放り投げてドガンと爆発を起こした。
オカマサ、ドラゴリラ、ナウォキは必死に通路を走って息を切らしていった。追いつかれないかと、未だ心臓がバクバクしている。
安全地帯……。
緑生い茂る大木を中心に、果実をつけた小さな木々が点在。
貴緑の草原が広がっていて、底が見えるほど透き通った湖がある。結構広いフロアで、唯一モンスターが出てこれない空間だ。
オカマサ、ドラゴリラ、ナウォキはぜぇぜぇはぁはぁ息を切らして、草原に腰を下ろしていた。
「な、なぁ……フクダリウスを誘えば良かったやん?」
「……大会が終わった直後だ。それにあまり頼りたくない。これは俺のワガママだ。済まない……」
「そうなんやね……」
ナウォキはフルフルと唇を震わせる。
「あんな事が起きるんだったら、参加なんかしなかった!! こんなの危険極まりない! もう帰ろう!!」
立ち上がって怒鳴り散らす。
もう堪えられないと、怒りをぶちまけずにいられない。
「黙っててくれ! ……今は休んでおいてくれないかい!」ギロッ!
オカマサの凄む形相でナウォキは引き下がるしかなかった。
今はもう体力を消耗して、逃げる余裕すらない。ましてや引き返せば例のモンスターが待ち構えているかもしれない。
激情が引いていって、落ち込んだままトボトボと離れていく。
オカマサもこの惨状を痛感して、煮え切らない想いを溜め込まずにいられない。
今や漢どものメンバーは砂上の楼閣のように脆くなっていた……。




