109話「全国大会 ~超激戦だぞ!⑤」
最初に見せた時のソージは自分の顔を手で遮って、こちらを見ようとしない。
「その姿は止めてくれませんかねー。耐えられないですー」
ウミノが竜宮乙姫へと変身した時に、ソージから拒絶されてしまった。
その事だけがショックで心にトゲが刺さったままだった。だからなるべく彼の前では変身しないようにしていた。
もし、こんな醜い魔獣になるなら、ナッちゃんのような妖精王になりたかった……。
「表向きだけの熱愛を演じてソージと歩んできたけど、本当は…………」
「そんなもの知らないわよ」
やはりヤマミも呆れた顔で言ってのけてくる。
怒りを昂ぶらせてウミノは「ウミアアアアアアアアアア!!!」と咆哮を上げて、大地を揺るがし粉塵が巻き上がり、烈風が吹き飛ばす! ブオアッ!
それに抗するようにヤマミも足元から黒い花畑を広げ、背中に漆黒の羽を四つ浮かばせる。
「あ、あなたもッ……!?」
「私も妖精王よ!!」
「羨まああああああああああああああああッ!!!」
嫉妬で胸中を満たし激情昂ぶらせてウミノは自身を左右に分裂させ、偶像化中のヤマミへ飛びかかる!
阿修羅となったソージは更に二対の腕を増やして、漆黒剣を生み出す!
「今度は八つの腕でやっちゃいますねーッ!!」
「増やせんのかよ……」
「今度こそやっちゃいますねー!! 闇紋深淵剣!! 残影扇風剣ッ!!!」」
理屈は分からんが、上半身は動かず腕だけが体表を滑るように高速回転していって、黒い残像斬撃が無数と放たれていく! 周囲の全てを切り裂いて破片と飛沫を飛ばしながら、オレへと迫る!
しかし太陽の剣を正眼に構え────!
「流星進撃ッ!!」
ソージの見開いた目に、ナッセの背後に天の川が横切る美しい夜景が造形付加として映る!
そして何十撃もの軌跡が同時に等しく降り注いでくる!!
「十連星ッ!!!」
幾重の残像斬撃と撃ち合い、けたたましく連撃音が響く!
なおもオレは気合を漲らせて「二十連星ッ!!」と続けて連撃を更に撃つ!!
苛烈を増す流星群のような軌跡が次々とソージへ襲いかかるが、更に残像斬撃が集中砲火と乱射されて互い相殺し合っていく!!
「三十連星ッ!!!」
「ならば十腕式・残影扇風剣ですねーッ!!」
ソージは更に十つの腕に増やして「ウオオオオオ!!」と残像斬撃を更に乱射しまくる!!
一瞬連撃で打ち合う連鎖が繰り返され、乱雑に衝突音が鳴り響いていく!!
それでも徹底的に打ちのめすべき、更なる連撃を撃つ────────!!
「四十連星──ッ!!!」
「なんの!! 胸周りに十の腕!! 腹周りに十の腕!! 二十腕式・残影扇風剣ねーッ!!」
「更に五十連星────ッ!!!」
ソージが腕を増やしまくるなら、こっちは連撃数を増やすだけだ────ッ!!
「六十腕式・残影扇風剣ね────ッ!!」
「百連星────────ッッ!!」
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッ!!!
嵐のような剣戟の撃ち合いで烈風を巻き起こし、衝撃波の津波が幾重に吹き荒れて地面を蹂躙していく!!
オレもソージも反動でビリビリッと全身を衝撃が突き抜けていく!
ガギィィィィィンッ!!!
ソージとオレの激突が限界点を迎え、武器破壊と共に互い弾かれていく! 巨体のソージは後退り、小柄なオレは数十メートル吹っ飛ぶが、地面に着地してスザザザッと惰性で滑っていく!
「闇紋深淵剣!! 残影五月雨剣ッ!!!」
図体の割に瞬足で間合いを縮めてきたソージは、こちらへ八本腕による突きを繰り出し、それに伴って幾重の残像刺突が機関銃のように地面を蜂の巣に穿ちまくっていく!!
それに対し、右手の杖から太陽の剣を、左手、肘、膝から光の刃を生やして、軽やかな体術で捌ききっていく!
ガガガッガガガッガッガッガッガガガガッガッガッ!!
修羅のように耐えない猛攻をしかけるソージの気迫には凄まじいものを感じる!
捌ききっている内に刃こぼれが進み、次々と砕かれ、それでも新たに生やして必死に抗する!!
「真の姿を晒したウミノとエッチできるように、ウブを克服するんだねーッ!!」
そんな気迫に押され、二つの残像刺突がオレの肩と脇にドッと命中! 血飛沫を噴く!
「ぐあ……ッ!」
そのまま吹っ飛ばされて、後方の瓦礫に身を打ち付けて破片を四散させた。
ガラガラと瓦解していく。
それでもオレはボンッと瓦礫を吹き飛ばして、気迫の勢いで立ち上がる。
はぁはぁ……、息を切らす。
額から血を流し、左肩と右脇辺りに血が滲んで広がっている。それでもなお右手には太陽の剣を具現化し、ソージを睨み据える!
「真の姿? 話が見えねーんだが?」
「……こっちの事情ですねー。ウミノも魔獣王なのでねー。これはまた美しい竜宮乙姫で、直視できぬほどに美しい爬虫類みたいな顔と肢体なんですねー」
オレはついヤマミの方へ振り向く。さっきまでウミノはヤマミと交戦していたが、なんか硬直している。ソージの本音を聞いたな……。
確かにウミノはウロコ浮かぶ水色の肌。爬虫類のような平たい顔。更に服は着物、そして薄布の羽衣を纏っている。
まさか彼女まで魔獣だとは思いよらなかったぞ。
「た、確かにキレイとは思うが……?」
「隠しておきたかったんですけどねー。実は……ボク、爬虫類フェチなんで……ウミノの竜宮乙姫は……なんというか至高の姿というか……直視するのもおこがましいっていうかね……」
でっかい阿修羅姿のソージは三つの顔を赤面してモジモジしている。
「そ……それで……何度か頼みたかったんですが……引かれるかなーって思って今まで……言いそびれまくってたんですねー。何を隠そうボクは爬虫類フェチだしねー。普通引くっしょね?」
「オレに言われても……」
「想像するしか真のウミノを再現できないのがもどかしくて……オカズにする時……ホラ、困るじゃないですかね? やっぱ生の写真撮りたいって言うかねー」
腰クネクネ、指モジモジで、赤面してる顔は俯き気味。
ソージの性癖が爬虫類フェチってのも驚くが、こうも友達に打ち明けるみたいな風に言われても……。
勇気出して恥ずかしい性癖とか暴露してくれて悪いけど……。
「つか、そういうの本人に言えよっ!」
「ええっ、ねーっ!!」
オレは太陽の剣の切っ先をウミノへ向けてきっぱり言う。ソージはビックリして仰け反る。
「だそうよ? ウミノ?」
今度はヤマミがウミノに振る。
ソージの一連の言動を目の当たりにして硬直していたウミノはハッと我に返る。
「え? ええ? ええーっ??」とわたわた慌てて赤面していく。
慌てたソージは両手を振りながら「は、爬虫類が好きなんじゃないからねーっ!」と赤面しながら自分の性癖を否定していく。
赤面しながらモジモジしまくるウミノとソージ。
「……こんな姿、やっぱり嫌?」
上目遣いのウミノ。いやに可愛いな。
「い、いやいや! そ、それはすごく綺麗で素晴らしくて女神以上でですねーっ!」
「めめめめめ女神いいいい以上おおおおお!! そそそそんななな事!!!」
「本当は好きなんですねーっ!! 一生抱きしめて生きていきたいくらいねーっ!!」
「あばばばばばばばばばばばばばば!!!」
動転して支離滅裂になっていく赤面状態のソージとウミノ。
本当はその間に奥義でもぶちかまして一緒くたに倒してしまいたいんだがなぁ……。でもま、回復する暇にするってだけにしとこーか。
自分に回復魔法をかけて徐々に傷を癒していく。
「恋愛もまた戦い!! 己の弱い心に打ち克ち、愛を通じ合わせよッ!!」
なんと血塗れのマジンガが遠くから吠えてきたぞ!?
なおもカレンと激しく付き合っててドカーンドゴーン天変地異起こしているぞ。
「フン! リア充め! 今更恥ずかしがるな! 堂々といちゃつけ!」
今度は黒炎龍をいくつもドバドバ放っているジャオウが励ます。
マイシとドラゴン対決を繰り返してズドゥアッと派手に爆発を繰り返している。
「もげろ!! リア充が!! もげてもげまくれ!!」
なんとカイガンだけは罵倒!? 血眼でギリギリ歯軋りして悔しがっている!?
怖ぇーよ!
チササの振るう槍がその頭を砕く! ボンッ! あと何回だろ?
「ウミノ!! その竜宮乙姫状態とエッチできるように頑張りますねーっ!」
「え!? あ、うん! わ、私も嬉しい! こんな私とエッチしたいって言ってくれるなんて嬉しい!!」
「あ、ああ! もちろんですねー! エッチしまくりたい、ですねー!」
思春期真っ只中みたいにドギマギしながらも、人間形態に戻ったソージとウミノがドキドキ赤面しながらエッチしたいエッチしたい言い合っているぞ……。
次第に「大好き!」「愛してる!」とラブコール連呼を始めていったぞ。
そんで何故か、夕日をバックに二人はしっとり顔でキスをした。更に!
ぐちゅぐちゅぺちょぺちょ! ずりゅぺろぺろちゅっぽちゅっぽ!
「「「もげろああああああああああああああああッ!!!」」」
観戦客からはそんな絶叫が湧き上がっていたのだったぞ……。
置いてけぼりされたオレとヤマミは呆けるしかなかった。




