104話「全国大会 ~黒炎龍を操りし男!」
ドット風の戦闘機がビュ────ンと日本の空を飛んで、目的地の明治魔導聖域が開催されているコロシアムへ向かっていた……。
その正体はエンターコミック学院の例吐露ピコヒコが空間結界によって自身を変身させた姿なのだ。現実空間にも顕現できるじゃんと思う事なかれ、実際はそのまま空間結界で移動しているだけなのだ。
前置きして言うが『空間結界』はその中でのみ自分が“万能”になれる固有の亜空間を操る術。
逆に言えば現実ではあまり効力を発揮しない。
通常はただ四角い箱として浮かんでいるのだが、それを自分の理想とした姿に置き換えれば空間結界そのものの自分として外部へ見聞ができる。
ただし、自分の空間内でできた“万能”は現実空間ではかなーり制限される。とはいえ移動自体はできる。
なので空間ごとビュ────ンと移動しているのだ────っ!(力説)
「飛行機になれるピコヒコ便利ですね」
「はっはっは! 座標転移できなくもないが、射程距離が数十メートルしかないので連発しまくらないといけないからなー」
「なんで私まで……」チッ!
「ヤマミと出会ってズキューンして以来ドキドキ止まらないですぅ」
なんと戦闘機状態のピコヒコの上に、顔面がついた四つの小さな箱(空間結界)が乗っていた。
亜仁目イイダロウ、小露戸ロハダ、寿絵ヌリエ、賀廊コミッコの四人だ。
「予選決勝戦で我々と戦い、全国大会へ勝ち進んだアニマンガー学院の応援したいというのもありまして」
「ヤマミと今度こそコンビでぅ! 二人は魔法少女諦めきれないですぅ!」
「巻き込むなだわさ……」チッ!
戦闘機になっているピコヒコは「ゲームしたい」が頭いっぱいになってきて、一刻も早くと速度を上げた。
その下でオオガが田んぼに行き倒れていたのだが、気付かずに通り過ぎた。
ビュ────────────ン!
二〇〇九年十一月一四日、午後五時────!!
明治魔導聖域コロシアム周辺のホテルへチェックインしたエンターコミック学院の五人。窓を見れば夕日となって紫のグラデーションで空を染めていた。
猫背のメガネ青年であるロハダ以外は、自身の空間結界で包んだ理想の姿だ。
緑髪ショートの紳士服を着た美系男子はイイダロウ(アニメVer)。
水墨画風の美女ヌリエ、ハイライト入りまくりの金髪ロング美少女のコミッコ……。
「ん? ピコヒコは??」
「あそこにこもってるだわさ……」
とある部屋からピコピコ、ピコピコ、と妙な音が漏れていた。
どうやらゲームに夢中で部屋にこもりきりだぞ。
「なぜにっ!?」
「これだからレトロゲーマニアは時代遅れの上に協調性のないヒキコですぅ!」
陰険なヌリエは「そんなヤツほっとけばいいんじゃなえ」と舌打ち。チッ!
イイダロウ、ロハダ、コミッコはより薄暗くなった夕日の外へ散策を繰り出した。
ヌリエは乗り気じゃないのでピコヒコ同様、部屋へこもったのだった。
「コロシアムではもう試合はやってないのか?」
「スケジュール上の試合はもう終わってるはずだよ。アニマンガー学院の試合は明日だね」
「それよりレストラン行こぅ~!」
「貴様らいたのか?」
その声に振り向くと、一人の妙な男が歩いてきていた。
漆黒の戦闘服。逆立った黒髪。陰険そうな目付き。あちこちの肌に妙な紋様がある。
「お前は!? ジャキガン学院の刻劉ジャオウッ!!」
「わ、忘れもしない……! 昨年の全国大会で惨敗させてくれた優勝校の選手ッ……!!」
「カッコイイんだけど、私は百合専なので断りましゅぅ」
かつての忌まわしい記憶を揺り起こされて、イイダロウとロハダは戦慄を覚えた。
コミッコは気にしてないのでマイペースだ。空気読んでいない。
「何しに来たんだ? 予選落ちした雑魚どもが……」
眼中にないとでも言うように白けた顔で踵を返そうとするが、それでプライドを傷つけられたロハダは「空間結界展開ッ!!」と両手で印を結んだ!!
イイダロウも印を結び、亜空間を広げてジャオウを引きずり込んだ!
コミッコは「いってらっしゃ~いぅ」と手を振って現実世界に残った。おい。
デジタル風に加えアニメも加わって、堅強なデフォルメ城壁で囲んだ空間!
なんと! 二つの亜空間が融合して混合空間と化したぞっ!!
巨大な王様ロボのロハダ(アニメVer)と緑髪紳士服の美形男子のイイダロウ(アニメVer)が、ジャオウと対峙した!!
「フン! まさかケンカ売るのか? 笑えん冗談だ……」
「この亜空間でなら、誰も乱闘に気づくまい! リベンジさせてもらうぞ!」
「なめるな! 去年より腕を上げてきたのだ────っ!」
兵士、騎士、僧正、城兵、女王の巨大なチェスの駒(アニメVer)が数十体もエーテルを纏って、高速でジャオウへ襲いかかる!
アニマンガー学院と対戦した時よりも段違いだ! 憎悪満々である!
それでさえ、ジャオウはフッと一笑に付した。
『邪凶滅殺拳! 獄炎黒龍牙!!』
ジャオウが手を挙げると、黒炎の龍が轟々と現れた!
それは獰猛に燃え盛って牙を剥いて駒を全て喰らい尽くしていった!! 圧倒的なその蹂躙にロハダもイイダロウも戦慄を取り越して恐怖の絶望に陥りそうだ……!
その黒炎龍が二人に襲いかかる! が!
イイダロウはセル画、ロハダはレイヤーで座標転移で連鎖してかわし、一定距離を保つように設定した。
これでこの亜空間内でなら、敵は近づく事も当てる事も不可能────!
「そんなハメ技のような児戯など笑わせる……! 邪凶滅殺拳! 獄炎・九頭黒龍牙!!」
なんと黒炎龍が九匹も現れた!! ギャオオオオオオンッ!!
絶句するロハダとイイダロウ!!
獰猛な黒炎龍が所狭しと亜空間内を貪り食らい蹂躙し尽くしていった!! 深淵の闇で蠢く黒炎が全てを呑み込んでゆくぞっ!!
「「ぎゃああああああああああああああッ!!!」」
現実で浮かんでいた四角い箱が豪快に破裂してドカ────ン!!
ボロボロのロハダとイイダロウはズザザザッと床を滑って横たわる。
降り立つジャオウは冷徹に笑み「フン! 肩慣らしにもならんな……」と言い捨てると、踵を返して去っていった……。
身を持って味わったのだが、彼は自分たち以上に腕を上げていたのだ。
「それでもマジンガはそれ以上に強いんだよね…………」
「あ、アニマンガー学院は……、こんなのに勝てるのか……?」
「いや、恐らく勝てまい……」
未だガクガク震える自身の体。
ロハダとイイダロウは、小さくなっていくジャオウの背中を睨み続ける。遠く遠く感じる絶対的力の差。どんなに血の滲む努力を重ねようが永遠に追いつけない気がする……。
コイツ一人だけでも圧倒的でチームごと壊滅させるほどだ。
そんな化け物が五人もいるのだ! 誰も勝てるワケがない!
秋季大会でも彼らは当然のように連覇をするのだろう!
コミッコはのんきにアイスクリームをペロペロしながら「おつかれぅー」と労う。
「「せめて緊張くらいしてくれよっ!」」




