103話「全国大会 ~雑魚二人組!?」
数時間前────……。
田んぼ広がる平地を約時速三〇〇キロ以上で疾駆る新幹線!!
「ぬううう!! ワシのチササと愛人を逃すかァァァァ!!!」
なんと大柄な河童が尻、足裏、掌から水鉄砲をドド────────ッと噴出させて、新幹線と併走していた!!
窓越しでそれを見ていたチササとカレンはジト目でドン引きだ。
それでもオオガは! シスコンとして! またロリコンとして!!
チササとカレンを二人きりにさせまいと憤怒で並走っ!!!
「ぬうおおおおおおおおおおおっ!!!」
「その気力を戦いに向けろ馬鹿ーァ」
「もうええだ。変態はほっとくだ」
全力全開で新幹線と併走していたオオガは二時間もすれば血反吐を吐いて田んぼに沈んだ。
精根尽き果てたオオガはしばらく復帰できなさそうだ……。
「なしてナッセにそこまで執着するだか? 彼女いんぞ?」
「知ってらーァ! それでもな、アタシを負かした男は後にも先にもいねーェ! だから力ずくで寝取ってやらーァ!」ククク!
ギザギザの歯を剥き出しな凶悪な笑顔。目の奥でメラメラと炎が滾ってる。
チササはそんな好戦的な性格に困り果てた。
だが、そのムチャクチャな言動にではない! 別の案件に────……!
そして現在!
観戦席を離れて、コハクとモリッカはジュースを買いに行ったのだが……。
声援が微かに響くだけの静かな通路。
二人を遮るように立ちはだかっている男が二人!
「殺気がただ漏れですよ?」キリッ!
ただ事ではない殺気まみれの男に、コハクはキメ顔で問う。
モリッカは剣呑な笑顔でコハクの背後から左右へニョキニョキ生えてふざけまくっていた。シリアスなコハクの雰囲気がふざけているモリッカで台無しになっている。
「気が散りますから、大人しくしてくれませんかね?」
「あははー! おこったーおこったー!」
ぐぎぎ、とコハクとモリッカが力比べする。男は汗をかいていた。
「──って、馬鹿にしてんのか!! 屑野郎がっ!」
「おうおう! 舐めとんけ! ふざけてんじゃねぇがし!」
殺気まみれの男は長身中肉。尖ったような顔で更に左右の目に対照的な傷跡があるもんだから人相が余計悪い。垂れ鼻がどっかの自称熱血漢を彷彿させる形状だ。
白髪になった二つの触覚のような前髪、あとは黒髪のオールバック。
そしてもう一人の男は足先しか見えぬほど、かなり太っている。しゃくれた下顎からヒゲ線が腹まで続いている。お相撲さんのように髪の毛を上に結っていて垂れ気味の細目。
「オデは海部トラクジラけ! よろしゃあごぜぇ!」
「俺たちを無視しやがって!! 屑野郎はぶっ殺す!!」
なんと両手に機関銃が!! いや水色の玩具風水鉄砲だ!
「蜂の巣──いや、狆穴子の巣になれいッ!! メダカ銃殺刑ッ!!」
発砲音を鳴り響かせて(なぜか)メダカ弾を乱射したぞ!!
本物の機関銃と遜色なく、壁や床を弾痕で穿ち続けコハクとモリッカへ迫る!
身構えたコハクは具現化した槍を複製し────……!
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!
容赦のない乱射が狭い通路を狆穴子の巣にしてしまう!
硝煙が辺りを漂ってモワモワしばらく視界を悪くした。殺気まみれの男は「殺った」と思いニッと笑う。
トラクジラも「ぐひひっ」と下卑た笑いする。
「ゲスさは相変わらずだなーァ」
前に聞いた事がある声に殺気男はピクッと反応する。
立ち込めた硝煙が収まっていくと、コハクとモリッカを庇うようにカレンが不敵な笑みで立ちはだかっていた。
「こんな不意打ちで相手校の選手を潰すのが好きかーァ?」
「屑アマが……! 血脈の覚醒者カレンッ!!」
「んあ!? あ、あの凶暴ロリぜぇ!? なしでここば来てんなが?」
ズオッとカレンからエーテルが噴く! さっきの被弾でパワーが増したようだ!
しかも体格が大きくなっている!
「夏の大会でも試合前に不意打ちしてた雑魚二人組じゃねーかァ」
「雑魚だとっ!? 俺は海潮ウオマサだッ!! 冥土、いや深海の土産に覚えとけや!!」
「オデは海部トラクジラけー!」
「二度紹介せんでいいっ!!」
なんとトラクジラはムクムクとトラ模様のクジラ化していく!? 蛮族か!?
狭い通路を埋め尽くすようにミシメシ巨大化するとピタリと動きを止める。しばしの沈黙……。
「う、動けねぇかが!? どうしながー??」
「こんな狭い所でクジラ化するなよっ!!」
動けなくなって汗タラタラのトラクジラに、キレの良いツッコミをするウオマサ。いい漫才コンビだ。
つーかなんで変身したのかコハクは疑問を抱いた。
……しかし別校のオカマサとドラゴリラみたいなもんだなと第一印象。
「いいコンビですね……」フッ!
「屑がっ! 馬鹿にしてるだろっ!!」
「うん!」キリッ!
「どっかのアホ二人組と同じだなーァ……」
「どいつもこいつも! 俺たちの戦略を踏みにじりやがって!! 屑がっ! カジキ爆殺刑ッ!!」
今度はウオマサが出したのは肩に乗せた大きな玩具風水バズーカだ! コイツも水色だぜっ!
とてつもない爆音を響かせ(なぜか)尖ったカジキを発砲!!
ドガアァァァンッと狭い通路で大爆発!!
しかし爆風を螺旋状に跳ね除け、カレンは両腕を広げたままエーテルを爆発的に噴き上げていた。
「ありがたーァ!! これで力が増したぜーァ!!」
「ほざけッ! 狆穴子の巣になれいッ! イワシ大群銃殺刑ッ!!」
爆発的にエーテルを噴き上げるカレンに、ウオマサも負けじと玩具風ガトリングガンを手前に設置して、ガガガガガガガガと(なぜか)イワシ弾の大群を斉射だ!!
普通の人間ならば狆穴子の巣になって肉片に飛び散るほどの殺傷能力を秘めたイワシ弾の大群がカレンを集中砲火だっ!!
しかし硝煙にまみれるカレンは逆に不敵に笑う! 依然五体満足!
「グッ! この血脈の覚醒者がァァァァ!!」
「遊びは終わりだーァ!」
地を蹴ったカレンはストレートパンチで玩具風ガトリングガンを砕き、そのままウオマサの腹を穿つ! ウオマサは「ウオバッ!」と吐血しながら吹っ飛んでトラクジラの腹にめり込んで数メートルほど通路をガリガリ削って後退。
ウオマサとトラクジラ二人揃ってグルグル目で舌出してグッタリ……。
呆然するコハクとモリッカ。
カレンは一息を付いて「まったく懲りてねーなーァ」と吐き捨てる。
気絶したトラクジラはシュシュシューと人間へ縮んでいった。風船みたいだな。
「こいつらは一体……?」
「ジャキガン学院のメンバーだーァ。しかし弱くて心象が悪い雑魚二人組はずっと補欠だーァ……。だから憂さ晴らしで他校の選手を闇討ちしてるんだーァ」
「く……冷血漢な賢い戦略と……褒め称えろよ! 屑が!」
手加減されたとは言え、それでも憤怒と起き上がるウオマサ。その回復力には驚かされた。
弱いと言われた永遠の補欠でも、相当な実力が窺える。
トラクジラの方はダメっぽいが……。
「ああ!? 俺の彼氏をよくも! もう許さんぜ! ならば──……」
「え? そういう関係なんですか?」
「あはー! HO☆MOのオカマサとドラゴリラみたいだぁー!」
「何をしておる!?」
いきりたつウオマサの頭をガシッと鷲掴みする大男……!
ウオマサは目を丸くして次第に青ざめていく。ガタガタ震えて尋常じゃない怯えに変わる。
「紫香楽マジンガ!!」
コハク、モリッカ、カレンにピリッと緊張が走る!
逆にマジンガは落ち着いた風で振り向き「無礼して済まなんだ。コイツらの悪癖でな。退学させるから許せ!」と頭を下げた。
ウオマサは驚いて「そんな!? 退学は──!」と抗議!
ギロッとマジンガに睨まれ黙る……。恐怖で打ち震えるしかない。
チササが遅れてきて、ハッと驚く!
「マジンガ!?」
コハクは「顔見知りなんですか……?」と聞くと、チササは頷く。
カレンとマジンガが睨み合うような感じになっている。因縁がありそうだ……。
「フハハッ! 夏季では存分に楽しませてくれたなァ!」
「そん時、まだ決着つけてなかったなーァ?」
「乱闘キタ──!! いいですね! いいですねー!」
三頭身になったモリッカがはしゃいでグルグル走り回る。コハクはジト目。
チササは「……こうなって欲しくなかっただ」と呟く。
思わずコハクは「えっ!?」と振り向いて汗を垂らす。
「……幾度もワシを傷付けた雑魚は他にいたが、深手を負わせてくれたのは二人のみ! 澤谷ユウキと照美カレンだ! 滾ったわ!」
コハクはマジンガの嬉しそうな告白に目を丸くした。
彼は話を続けてくれた。
夏季の仮想対戦・甲子園で、レキセーンモサ学院と対戦してマジンガとカレンは血塗れで激戦を繰り広げていた。個人戦ではなくチーム戦なので完全なタイマンにならず完全決着とはいかなかったとか。
マジンガはこの事で不燃焼とも言っていた。
「昨年の空間結界使いは話にならなかったがな!」
コハクは予選大会の決勝戦で戦ったエンターコミック学院の事を思い出した。
昨年までは空間結界使いの学院が予選大会連覇していた。だからか。
「……しかしうぬが予選落ちしたなら興醒めもいいところだ。戻る」
「ハン! ほざいてなーァ!」
カレンの遠吠えを聞いて、マジンガはウオマサとトラクジラを手に踵を返して去っていった……。
チササは大事にならなくてホッと安堵。
不燃焼が故に、ケンカ吹っかけてきて乱闘沙汰にならないかと危惧していたのだ。
逆にカレンは不敵に笑んでいた。
ナッセに負けたから、と言い返さなかったのはマジンガに余計な情報を与えぬ為である。だから敢えて抑えたのだ。
なぜなら、恋する乙女だからである。(え?)




