83章 フォースプロローグ
83.章 プロローグ
ジルド領、幻惑の地底湖に、魔獣王と男が話し合いをしている。
魔獣王は、子供の死体を喰んでおり、時々、バキッ、バキッ、と上腕骨の砕ける音がする。
アメト、もとい司祭のインベルは、この魔獣と何事か話し合い、取り決めがあったようだ。
「狙い通り、おびき寄せは上手くいったが、
こちらにもイレギュラーが発生した…。これ以上はここに留まる必要は無い」
司祭インベルはこう言った。
魔獣の王ゾロアは、子供の両腿を握り込みながら、頭蓋を、ガリ、ガリ、と噛み潰しながら聞いている。
子供の死体は、見知った顔だったが、司祭は眉ひとつ動かさない。
魔獣の王は人ならざる声で話す。
「そうか…この辺りの人間の肉は、ガリガリで喰う部分が少なかったが、
引き締まっていたから、割合と好きだったのだがね…」
「まぁ…守備良くやれたのなら、よし。次なにかあったら協力しよう…」
魔獣の王はそう言うと、一呼吸おいてこう付け加えた。
「むしろ、昔のように大攻勢を仕掛けるなら、喜んで駆けつけよう」
魔獣王の言葉を受けて、司祭は答える。
「それは…いずれ…」
司祭はそう言って、ふくみを持たせる。
「…そか…それは…あな…うれしや…
アレは楽しい祭りだった…からねぇ」
魔獣王はそう嬉しそうに語る。
その声の振動で地下空洞は、ボウボウと震え砂埃が天井から落ちてくる。
『魔物と人間との、戦争か…』
司祭は来るべき、大攻勢について、考えはじめていた。
どうやら魔獣王は、食事を終えたようだ。
かつて、アスタクだった、何かはあらかた歯噛みされ喰い潰され、残された骨だけが、地底湖の底に沈んだ。
司祭が地底湖の洞窟から出ると、外には雪が降り出していた。
今年初めての雪の降り出しに、遠いふるさとを思い出す。
空の上の、天のもっと上から、落ちてくる雪。
『美しい…』と素直に思う。
あの場所まで行けば、遠いあの子に逢えるのではないだろうか。
もう星も、なにもいらない。
どれだけの人が傷つこうが、かまわない。
『こんな世界…いつ滅んでもいい…』
─例えそれが、彼女をどれほど悲しませたとしても。
あとがき
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