69章
69.章 眼鏡
雨、雨、ダラダラと降りつづく雨。
窓から外を見ながら、なんとなくする事もない。
カリナは、仕方なく先延ばしにしていた、本の整理を始めようとする。
「魔法文字…ルーン文字体系の…フェオは…」
背伸びをしながら本を、引き出すと、湿気で湿った本は張り付き、大量に落下した。
《バサバサバサ……》
本を大量に取り落としたせいで、積もった埃が部屋中に舞う。
「ゴホッ…ゴホッ…何してるんですか?」
師匠のカシウスは、そう言って声をかける。
「…す…すみません」
謝りながら、本を片付けようと手を伸ばす。
すると、開いた本はバサバササ…と、高速でページが捲られる。
「…えっ?!」
開いた本から、真っ黒な煙が湧き、部屋は『本』の魔物の魔力で満たされた。
開いた『本』から、人ならざるモノの声がする。
「…呪わし…ゃ…人間ども。我を…この様な所に閉じ込めて…」
そう聞こえるやいなや、『本』の中から魔物が手を伸ばす。
ガシッとカリナの手首をつかむと、本の中に引きずりこもうとする。
《バタン!》
師匠が、慌てて本を閉じる。
「魔導書は危険なんですから、不用意に開いてはダメですよ!」
そう言ってカリナに注意する。
「特に私の本は『概念封じ』が施されていないんですから、
読む際には自分で封じてから読んで下さいね」
カリナは呆然としながら、答える。
「……すみません。油断してました。
危険なのは、もちろん心得ています。」
カリナはそう言って、先生の何事かに気がつく。
「……?」
「あのー、先生…触っていいですか?」
魔導士は、少しドキっとして聞き返す。
「…えっ、なに?」
カリナが不意に、カシウスの眼鏡の蝶番に手をかけて、そっと外す。
「ちょっと、貸して下さい。」
「あっ!…カリナ、眼鏡っ返して…っ。取られると何も見えない…」
「すぐ返しますょー♫」
「壊しませんから、安心して下さい。本が落ちた時…汚れたみたいですねぇ……」
そう言ってはーっと息を吹きかけ、眼鏡を拭き始める。
「それに、ずっとコレかけてみたかったんです」
そう言って戯れに、眼鏡をかけてみる。
「きっと何にも見えないよ。」
「ほんとです、何にも見えません。」
「さ、返して。」
師匠は呆れて、カリナをみている。
「なんだか先生の顔って…。」
そう言って、じっと師匠を見る。
「なに……?素顔は間抜けに見える?」
「いえいえ。意外と可愛らしいんですね。」
「………。そ…そう?」
師匠は照れて下を向いてしまう。
「ふふっ。はい、出来ました。」
そう言って、カリナはカシウスに眼鏡をかけてあげる。
師匠は赤くなって、なすがままだ。
「ん?……どうしました??」
「ねぇ、キスしない?」
「……はぁぁっ?!(キレ気味)」
カリナは、威圧的に返事する。
「いや、じょーだん。じょーだん…」
「………。」
カリナは、師匠を信用できないとばかりに、軽蔑した眼差しでながめていた。
あとがき
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