47話
47.章 エンディング
カリナたちの乗った交易船は、ユーラ大陸の東北地方、ウランド半島まで、たどり着いた。
残りの船の船員たちの奮闘もあり、アルガ地方の小さな港に、生きて港に到着できたことを皆で喜びあった。
─そうして船は深夜に、小さな港町、ノルスに着港した。
時間も時間なので、宿屋のオヤジは渋い顔をする。
「あいにく、今、部屋が満杯で…」
そう言って、宿屋のオヤジは、ふたりを見くらべる。
「一部屋だけ、ベッド1つの部屋なら、用意できるけど、大丈夫かい?」
魔王は、こともなげに、カリナに尋ねる。
「別に一緒の部屋でも、問題ないだろう?」
カリナは少し戸惑ったようだったが、了承して言った。
「う……うん。」
この港町についてから、魔王はときおり、浮かない顔をする。
『…魔王様は、…マユリという、言葉がでてから、感じが変わった。』
『…マユリ、なんの言葉だろう…』
『…名前…?…』
『…わからない…』
『…魔王様のこと、何にも知らない…』
『どうして、心臓を捨ててしまったのかも…。』
魔王の落ち込んだ顔には、気づかないフリをして、カリナは明るく提案する。
「とりあえず、お腹減りましたね。何か食べましょう!」
港町ノルスのある、アルガ地方は、野山にすむ原生種の『ぶんぶん豚』が有名な土地だった。
「こっちに、郷土料理のお店がありますよ。」
そう言って、一軒のぶんぶん豚専門店『豚のしっぽ亭』に入る。
いい匂いをさせながら、たくさんの皿がテーブルに並べられた。
カリナは、その美味しそうな料理の前のでうっとりする。
「わーっ。これがこの地方ノルスの、名物『ぶんぶん豚の目玉モジャモジャ焼き』ですね」
「美味しそうー♡」
魔王は、いかにもゲテモノという眼差しでぶんぶん豚の目玉を見ている。
生臭く、白濁した目玉は、食べないこちらを、にらんでいる。
「どうしたんですかぁ♡ほのかな苦味があって、おいしーですよ♡」
この世界のものは、ほぼ見た目通りの味をしている。
「あーラーメン食いたい…」
魔王はそう言って、テーブルに突っ伏した。
「もしかして、要らないんですか?わたし、いただきますね♡」
「んー、滋味があって美味しい~♡」
魔王は、美味しそうに、幸せそうに食べるカリナを見て、少し心和んでいた。
もっとも、食べている物が血の滴る、目玉でなければもっと、かわいく感じるのだが…。
港町ノルスのうらびれた、宿屋に帰ると、
カリナは、今まで平気で魔王の隣で寝ていたのが信じられないほど、
急に眠れなくなってしまう。
『……ねむれない』
目を瞑っても、おかしな気持ち。
そわそわして、眠れない。
『だめ…眠れない…』
『…どうして。今まで、平気で眠むれていたんだろう…』
『……好き。』
『近くにいられるだけで、いい…』
そうやって、ふわふわとした気持ちで、
目をつぶっていると。
魔王が起き上がるのがわかった。
どうにか、なってしまいそうなほど、
カリナの心臓は、強く打ちつける。
魔王は少し戸惑いながら、
カリナの髪に触れると、ひたいにキスをした。
「すまない」
苦しそうに、ぽつりとそう言って、
離れていった。
『…………。』
《バタン…》
扉が閉まる音がした。
『どうして…魔王様は部屋から出て行ったの…?』
カリナは激しい、胸騒ぎが止まらない。
『……なぜだろう。……もう魔王様は、戻って来ない気がする。』
そうして本当に、もう2度と、
魔王は戻って来ることはなかった。
小さな港町ノルスのうらびれた宿屋の一室に、朝の日差しが差し込んでくる。
カリナは身を起こすと、
自分が、ひとりぼっちで置き去りにされていることがわかった。
『…たぶん、もう魔王様は帰って来ない…。』
悲しくないわけじゃない…。
「大丈夫…。もともと、ひとりだった。」
「それに戻っただけなんだ。」
そうつぶやくと、涙が一粒だけおちた。
あとがき
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