第七話【予想】
とそこで赤髪の赤松も近づいてきた。
「よう、鳳蝶。元気にしていたか?」
赤松の言葉に月は笑いながら返答。
「はい、元気いっぱいですよ。赤松さんはここ数年でなんか老けましたね」
「うるせぇ。いい年の取り方をしていると言え」
「ふふっ」
「というかお前。久しぶりに会ったってのに、数年前と全然見た目が変わってねぇな。本当に人間か?」
「それ、褒めてます?」
「ははっ、要するにいつまでもちびっこ…………お、おう。もちろん褒めているぞ。鳳蝶はいつまで経ってもかわいくて綺麗だなと思ってな」
そう言って頭を掻く赤松。
最初は馬鹿にしようと思っていたのだが、途中で瑠璃の殺気が飛んできたため、急遽褒める方向にシフトチェンジしたのである。
「絶対瑠璃さんが怖くて途中で意見を変えましたよ、この人」
「おい赤髪。あんまり調子に乗るなよ?」
「す、すみません。それでは俺はこの辺で失礼します。…………はぁ。やっぱり俺にだけ当たりが強いような気がするんだよなぁ」
小声でつぶやきつつ、赤松は他の団員の元へと戻っていく。
「それじゃあ俺たちはもう行く」
瑠璃が村雨に視線を戻して言った。
「あ、ああ。引き止めてすまなかった。どうしても挨拶がしておきたくてな」
「いや、構わない。むしろわざわざ話しかけてくれてありがとな」
そう返答し、瑠璃は階段のほうを向く。
「えっ……。瑠璃さんがいい人っぽいこと言ってます?」
「何言ってんだお前。俺は昔からずっといい人だろ」
「いえ、普通に違いますよ? もっと尖ってました」
「それは三次元の視点から見たときの話か?」
「三次元であれ四次元であれ関係ありません。瑠璃さんは瑠璃さんですから」
「お、おぉう? ……まあ、あれだ。四次元にきたらわかる」
「あれ? 今一瞬納得しました?」
「それよりもこの階段すごいな」
「……相変わらず話題を変えるのが雑ですね」
「今までとは全然違う感じだ」
そう言いながら瑠璃は階段を下り始めた。
一定距離ごとにたいまつが設置されているが、階段だけでなく壁や天井も真っ黒なため、かなり暗い。
三分ほど無言で下りていったところで、月がつぶやく。
「なんというか不気味です」
「そうか?」
「だって今までと全然雰囲気が違うじゃないですか。全部が真っ黒なんですよ?」
「俺はむしろワクワクするけどな」
「それ、絶対病気だと思います」
「おっ、例のやつが見えてきたぞ」
行き止まりには、おなじみの水色のクリスタルが浮いていた。
「これはいつも通りですね」
「ファイナルステージってどんな場所なんだろうな。ちょっと行く前にどっちが近い予想ができるか勝負しようぜ」
「えっと……。またオリハルコンの部屋だと思います」
「俺は魔王城みたいな場所がいいな」
「…………ん? 願望ですか?」
「ああ。四次元の思考回路になれば、願いがそのまま反映されることがあるんだ」
「今までで一番言っている意味がわからないんですけど、私はどうすればいいでしょうか」
「……月は月のままでいればいい」
「誤魔化すために低音ボイスを使わないでください。失礼です! 謝ってください」
「誰にだよ!」
「もちろん、瑠璃さんの声帯にです」
「……俺の声帯、変な使い方をして本当にごめんな。こんなつもりじゃなかったんだよ。謝って済む問題じゃないのはわかっているんだが、それでも謝罪をさせてほしい。……みたいなことを自分に向かって言えということか? するわけねぇだろ」
「ふふっ、すごいノリノリじゃないですか」
「さて、もう冗談は終わりだ。ファイナルステージの予想は、俺が魔王城で、月は……キャベツ畑だっけ?」
「オリハルコンの部屋ですっ! そんなのどこから出てきたんですか」
「思い出せないから適当に言った」
「じゃあせめて尋ねてくださいよ。キャベツ畑って、赤ちゃんでも拾いにいくんですか?」
「あーそういえば、欧米ではキャベツから子どもが産まれるらしいな。正直想像がつかないぞ」
「……コウノトリは想像がつくんですね」
小さい声で月がつぶやいた。
「ん? 何か言ったか?」
「言ってません。もう行きましょう」
「? おう」
瑠璃と月は同時にクリスタルへと触れた。




