Episode.15
それから少しの間沈黙が続き、ふいに真上から声が聞こえてくる。
「……そっちがその気なら仕方ない」
「?」
直後、──脇腹を掴まれた。
そして勢いよく、くすぐってくる。
「ひゃぁぁぁっ!?」
月は大声を上げるも、決して体制を崩そうとはしない。
「チッ、強情なやつだな」
悪魔の指が細いせいで死ぬほどくすぐったいが、彼女は歯を食いしばって堪える。
しかし、それも長くは続かなかった。
「ひゃぁぁぁん! わ、わかりました! 出しますから! 出しますから、もう許してください!」
硬い羽根による足裏への攻撃が追加されてすぐ、月は音を上げてしまった。
だが、くすぐりが止む気配はない。
「次はどこを攻めようかなぁ~」
「ゲホッ、やめて、ぐださぁぁぁい!」
「よし、じゃあ脇を……ん? 何か言ったか?」
「メモ帳を出すのでやめてくださいと言っているんですっ!!」
涙を浮かべながらも大声を上げる月。
悪魔は手を止め、
「ふぅ、ようやく諦めてくれたか」
「もう少し早くギブアップしていたのに……ひどいですっ!」
「すまん。楽しくてつい夢中になってしまった」
「むぅ……」
「というか、元はと言えばすぐにメモ帳を出さないお前が悪いんだろ。ほら、さっさと出せ」
「…………」
月は渋々アイテムボックスからメモ帳を取り出した。
悪魔は人差し指と親指で受け取り、入念に中身を確認していく。
「……ふむ、どうやら本物らしいな」
「偽物を渡したところで、どうせすぐにバレますからね。そしたらまたくすぐるんでしょう?」
「よくわかっているじゃないか」
「…………」
「にしても、こんなことを書いていたのか。まるで俺が悪者みたいだな」
「悪者で間違いないと思いますけど」
「まあ、お前にとってはそうだろうな」
「……あの~、恥ずかしいのであまり読まないでもらっていいですか?」
「安心しろ。もう見ることはない」
そうつぶやいた直後、メモ帳が灰になって消えていった。
燃やした様子はなかったため、特殊な力によるものだろう。
「ふっ、これでお前が次のステージへ進むことはなくなったな」
「…………」
「おっと。別のメモ帳に記入されたら困るから、眠りにつくまで拘束させてもらうぞ」
悪魔は指先から黒い糸を放出し、月の身体に巻き付けていく。
「…………」
月は元々あまり体調がよくないため、ほとんど抵抗することなく目を閉じた。




