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第二百八十二話【再チャレンジ】


      ◇


 ワープした先は、白い円形の部屋だった。


 後ろを振り返ると、転移石が設置されている。


「えっと……いつでも戻れるみたいですね」


 それから数秒ほど周囲を観察していると、突然正面の奥が眩く光り始めた。


「?」



 やがて光が消え去ったかと思えば、一人の女性が立っていた。

 この世の物とは思えないほどの美貌の持ち主で、肌の所々が機械のようになっている。

 他にも頭上に輪っかが浮いていたり、背中に翼が生えていたりと、まるで天使のような風貌だ。


 天使はこちらを見つめて口を開き、


『これより、試験を開始いたします』


 直後、──音もなく動き出す。


「……」


 月は冷静にユグドラシルの杖を薙ぎ払い、力ずくで相手を吹き飛ばした。


 勢いよく壁にぶつかり、地面に崩れ落ちる天使。


 月は一切止まることなく、攻撃魔法を連発する。


 だが、ある程度被弾したタイミングで、突然相手の姿が消えた。


「っ…………」


 月は一瞬驚きつつも、すぐに気持ちを切り替え、神経を研ぎ澄ませる。



 0.1秒後。

 本能的に危険を感じ、後ろにジャンプした。


 すると先ほどまでいた位置に、光と闇の槍が一本ずつ地面に突き刺さる。


「そこっ!」


 間髪いれずに槍が飛んできたほうへ向かって、高出力の魔法弾を発射した。


 その直後、

 ──天使の心臓部に小さな穴が空き、相手は地面へと落下。

 

 そんな敵に向かって、更に魔法を撃ちこもうとした、その時だった。


 ふいに天使の至るところから金属製の物体が出てき始めた。


「えっ!?」



 その後天使だったはずの相手は、言葉では形容できないほどぐちゃぐちゃな形の化け物へと変貌した。


 相手は金属音を立てながらも近づいてくる。


「っ」


 月は反射的に巨大な爆発を起こした。

 

 しかし、全く効いている様子はない。


「そんな……」


 化け物はそのまま接近してくるなり、鉄球で攻撃を仕掛けてくる。


「──っ!?」


 魔法壁を展開したことにより直撃こそ防いだものの、月は吹き飛ばされて壁にぶつかった。


「むぅぅっ」


 月は頬を膨らませながらもすぐに立ち上がり、身体能力強化の魔法を自身にかける。

 そして、相手に向かって駆け出した。


 化け物はそんな彼女にとどめを刺そうと、高速回転するドリルを突き出す。


 月は反射的に横ステップを踏むが、一瞬間に合わず頬を抉られてしまった。

 しかし足を止めることはない。

 血を流しつつも走り続ける。


「私は……負けるわけには……いかないんですよっ!」


 とその時、敵の肩から千発を超える小型ミサイルが発射された。


 月はさすがに無視できないと判断し、習得している魔法を駆使して迎撃する。

 だが全て撃ち落とすことは叶わず、


「きゃっ!?」


 数発被弾してしまった。

 直前で魔法壁を張ったおかげで致命傷を負うことはなかったが、病も相まって更に呼吸が困難になる。


 相手はそんな絶好のチャンスに、なぜか立ち止まっている。


「?」


 お腹を押さえつつも不思議に思っていると、突然化け物が頭上に真っ黒の球体を創り出し始めた。


「──っ!」


 月は本能的に危険を感じ、踵を返して全力疾走する。


 その途中に一瞬顔だけで振り返ってみると、ちょうど球体が発射されたところだった。


 月は風魔法を使用して真横に大ジャンプをする。

 そのおかげで、間一髪で躱すことに成功した。

 

 そして振り向いてみると、

 ──先ほど通り過ぎていった黒い球体が、壁を貫通していた。


「はいっ!?」


 その穴からは、虹色の膜が見えている。


 一瞬何だろう? と疑問に思う月だが、すぐに切り替えて視線を戻すと、再び敵の頭上に真っ黒の球体が出現していた。


「あれに触れたらやばそう──っ」


 再度発射された球体に対し、彼女は遠距離の魔法壁を展開する。

 しかし音すらなく貫通してしまった。


 月は驚きつつも先ほどと同じように真横へ跳ぶ。

 結果──少しだけ命中し、ローブの一部が消滅した。

 そのせいで腹部が露わになる。


「っ」


 月は次の球体が創り出される前に駆け出し、化け物の足元へと移動した。

 そして頭上めがけて大量の攻撃魔法を放つも、やはり効いている様子はない。


「だったら弱点を探すだけですっ!」



 死と隣り合わせで戦い続けること数十分。


 いろいろと試した結果、月は敵の本体ではなく、各武器に手ごたえを感じていた。


「ゲホッ。つまり武器を全て壊せば……私の勝ち?」


 そうつぶやいた瞬間、

 ──化け物の動きが急加速した。

 相手は複数の武器を同時に使いながら攻撃してくる。


「っ!?」


 月は反射神経と防御魔法を駆使して回避するも、さほど時間がかかることなく殴られてしまった。

 それを機に、次々と被弾していく。


「や、やめっ……」



 やがて鉄球に吹き飛ばされたタイミングで月は気絶した。

 しかし壁にぶつかった衝撃により、意識を取り戻す。


 同時に、目の前まで迫った敵の姿が視界に入ってきた。


「ちょっ!?」


 月は反射的に防御魔法を唱えようとするも間に合わず、鉄球を叩きつけられた。

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