第二百六十三話【懐かしい顔】
◇
およそ半年の時が流れた。
みんなと都合が合わなかった月は、昼過ぎに一人で大通りを歩いていた。
「まずは何から買いましょうか」
「…………えっ!?」
今日は一日、疲れ切った身体を休めるついでに、買い物をしようというプランだ。
とはいってもこの街の売り物は基本的に全て無料で手に入るため、買い物と言えるかはわからないが。
「ローブがわりとボロボロになってきたんですよね~」
「…………ま、まさか」
「あとは、おいしい物もたくさんほしいです」
月は朝、昼、晩の三食だけでなく深夜にも食べたりするため、アイテムボックス内に蓄えていてもすぐになくなってしまうのだ。
そんな食生活を送っているにもかかわらず太っていないのは、たくさん動いているおかげだろう。
「ついでに、普段行かないようなお店に入ってみてもいいかも」
「…………お母さん?」
「はい?」
呼ばれた気がして振り返ってみると、
──そこには、二人組の男女がいた。
女性のほうは金髪ポニーテールで、全身の肌が茶色い。
黒いタンクトップと緑色の半ズボンを着ており、年齢は20代前半ほどに見える。
耳が細長いため、ダークエルフと言った感じか。
そして男のほうは、ふわふわした白髪で、女の子みたいにかわいらしい顔つきをしている。
それらの特徴は、最後に見た数年前とほとんど変わっておらず、驚きと懐かしさが同時に込み上げてきた。
「あなたはまさか……祈!?」
「やっぱりお母さんだよね!? 昔とあまり変わらないから、すぐにわかったよ! ずっと探してたから嬉しいなぁ~。けど、その腕はどうしたの?」
「ま、待って……。全然理解が追いつかないんだけど」
「うん。ぶっちゃけ僕も追いついてない。だってお父さんとお母さんに会うために、こうして神が創ったと言われているダンジョンを攻略し続けて……で、ここにたどり着いたら、本当にいるんだもん。……まさかこれって夢じゃないよね?」
「えっと……私の息子は異世界に転移していて、こんなところにいるはずはないので、夢の可能性が高いですね。……というわけで私は一度ホテルに帰って寝ます」
「ま、待って! 夢なら夢でいいから、対面できているうちに、いろいろと伝えたいことがあるんだ」
祈は隣の女性を一瞥し、
「お母さん……僕、大切なパートナーができたんだ」
「……あんたが祈の母親か。マジでそっくりだな」
「昔からお父さんとお母さんみたいな関係に憧れていたから、ようやく叶えることができたよ」
「自己紹介が遅れたな。アタシはアステア。祈の嫁だ」
「まあ結婚式を挙げたわけじゃないから、正確には付き合っているって感じなんだけど……というかアステア! 僕のお母さんが相手なんだから、もう少し口調には気をつけてよ」
「あぁん? これでも抑えてんだぞ?」
「…………」
月は冗談抜きで理解が追いついていない様子だ。
「あれ、お母さん? 大丈夫?」
「やっぱりこれは夢ですよ。……だって私の知っている祈は、そんなに傷だらけじゃなかったから」
「これは、強くなるために負った傷で、つい昨日も無理しすぎて怪我しちゃったよ。……お母さんのほうこそ、そのいろんな傷、どうしたの? ……左腕もなくなってるし」
「えっと……まあ、祈と同じで、強くなるために努力した結果で」
「お父さんといたのに、それだけの傷を負ったの?」
「……っ」
「……あれ? そういえばお父さんはどこにいるの?」
「あれだよな? 祈がよく言ってた世界最強の男ってやつ。……確かにそれっぽい姿は見えないけど、別行動でも取ってんのか?」
祈とアステアの問いかけに、月は俯き、
「……とにかく積もる話もあるし、私の部屋に移動しましょう」
「あ、うん」




