第二百五十一話【頂上】
それから更に五時間が経過した頃。
二人はまだ塔の壁を登り続けていた。
あの巨鳥は一定の高さに達した時点で追ってこなくなったため、現在は姿が見えない。
「私……もう……ダメかも、しれません」
手足を止めて弱音を吐く月。
それも無理はないだろう。
凍えそうな寒さに加えて、空気が非常に薄いのだ。
二人とも、息をするので精一杯だったりする。
「月」
「ここから飛び降りたら……何時間くらいで……暖かい地面にたどり着くんでしょうか?」
「月」
「…………少しだけ、眠ってもいいですか?」
「おい月、しっかりしろ! こんなところで寝たら終わりだぞ」
「…………はい」
「俺の勘では、あと少しでたどり着く気がするから、もうひと踏ん張りだ! 頑張れ月!」
彼女は歯を食いしばり、
「瑠璃さんも大変なのに私だけすみません……頑張りますっ」
それから十分が経過したタイミングで、月の手が空を切った。
掴むべき壁がない。
「あれ?」
凍えそうな首を無理やり動かして上を向くと、いつの間にか塔の壁が終わりを迎えていた。
とうとう頂上にたどり着いたのである。
とそこで、身体から力が抜けてしまう。
「あっ……」
なんとかして壁を掴もうとするも、身体が言うことを聞かない。
そのまま落下していく。
しかし、途中で瑠璃に腕を掴まれた。
「月……大丈夫か?」
「すみ……ません。もう入らない……です……力」
「……ああ、任せろ」
瑠璃は彼女を両足で挟み、すでに限界に達している腕のみの力で登っていく。
「くっ…………おらぁぁぁ!」
少しして。
無事に頂上へたどり着いた二人は、地面に寝転がった。
「はぁ……はぁ……」
「……はぁ……はぁ」
「もう……動けねぇ」
「はぁ……はぁ……。うぅ、寒くて、しんどいですぅ……」
「…………」
瑠璃は頂上の中心部へと視線を向ける。
小さな一軒家。
「このままここにいても体力が削られるだけだし、とりあえずあのなかへ入ろう」
「……は、はい」




