第二百四十七話【塔の攻略】
少しして。
塔の前に到着した瑠璃は、アイテムボックスから光り輝く槍を取り出した。
「あっ、ちょっと前に手に入れた聖なる槍……使うんですね」
「ここの敵は全体的に闇属性の可能性が高いからな。月も聖なるネックレスを装備しておいたほうがいいぞ」
「あ〜そういえば、そんなのありましたね。わかりました」
「俺は……この槍だけでいいか」
「えっ、防具は装備しないんですか?」
「俺はどうせダメージを食らわないからな。邪魔になるだけだ」
「油断しないほうがいいと思いますけど。……まあ、瑠璃さんに口出ししても意味がなさそうなので、この考えは心のなかに留めておきます」
「もう出てるぞ」
「…………あっ、ちょっとこのネックレスをつけてもらえませんか? つけ慣れていないので難しいです……」
「えぇぇぇ…………もちろん!」
「なら最初から素直にやってくださいよ」
「いやぁ〜……わかった」
「なんですか、それ」
やがて装備を整えた二人は、ゆっくりと石の階段を上がっていく。
「瑠璃さん。なるべく敵に見つからないように進みましょうね。試練までは体力を温存しておきたいので」
「了解っ!!」
瑠璃が大声で返答した瞬間、真っ黒の熊や甲冑たちが一斉にこちらを向いた。
「いや、何をしているんですか!?」
「因縁の敵だし、とりあえずぶっ飛ばしておきたいなぁ〜と思って」
「はぁ……」
瑠璃は槍をグルグルと回転させたあとで、勢いよく走り出した。
そしてほとんど力を入れずに薙ぎ払う。
直後、数体の甲冑が真っ二つになって地面へと倒れた。
「よっと!」
続けて瑠璃は熊の胸元に槍を突き刺す。
「ガルゥゥゥゥ」
これでもかと言わんばかりに暴れる熊だが、一分と経たずに動かなくなった。
瑠璃は槍を引き抜き、
「弱すぎだろ」
「……こうしてみると私たち、めちゃくちゃ成長しましたよね~」
「ああ、月はともかく、俺はかなり強くなったぞ」
「ですよね~……って、なんでですか!? それはまあ、瑠璃さんほどではありませんけど、私だって昔に比べれば強くなりましたからね? なんだったら残りの敵は全て私が倒しますよ? というわけで瑠璃さんは下がっていてください」
「えー、もっと戦いたかったのに」
「…………攻撃魔法を放ちたいので、早く避けてもらえます?」
「……はいはい」
そうつぶやいて瑠璃が下がったのと同時に、月はMPを消費して光属性の球体や剣、槍などを大量に創り出す。
そして、躊躇なく発射した。
その数秒後、魔物たちは一瞬にして死体へと変わる。
「お前……普通にすごいな」
「でしょう? ふふんっ。今ならもしかすると、瑠璃さんにだって勝てるかもしれません」
「ならやってみるか? 早く杖を構えろ」
「やりませんよ!? 戦うわけないじゃないですか」
「なんだよ……ぬか喜びさせやがって」
「そんなことで喜ばないでください! というかこれを見てみてくださいよ。ちゃんとMPが回復し続けています」
瑠璃は月のステータス画面を覗きしつつ、
「……本当だ。すげぇ」
「マジで便利ですよね~」
「羨ましいなぁ」
「瑠璃さんはMPを使うことがほとんどないので、別に必要ないと思いますが」
「確かに」
「……さて、この階は勢いで戦ってしまいましたけど、次からは冗談抜きで隠密行動を取りましょう」
「ああ、そうだな。けどもし仮に見つかったら、その時は俺に任せておけ。月は基本的に幽霊系の退治や回復担当を頼む」
「わかりました」
◇
塔を登り始めて十時間が経過した頃。
二人の目の前には、扉が立ちはだかっていた。
「私、普通に疲れてきました……」
「ああ、俺もようやくウォーミングアップが終わったって感じがする」
「元気ですね~」
「……で、とうとうこの先が試練会場か?」
「う~ん。でもなんか呆気ない感じがするんですけど、試練について難しく考えすぎていたんですかね?」
「この先にとんでもない強敵が待ち受けているのか、それともまだ道中なのか」
「開けてみればわかるでしょう」
「俺はいつでも行けるけど、月は準備OKか?」
「あ、はい。大丈夫です」
「じゃあ行くか」
そう言ってゆっくりと扉を開ける瑠璃。




