第二百九話【階段】
床に放置されているボロボロの金属蜘蛛を無視し、更に通路を進むこと数十分。
ようやく二人は階段の前に到着した。
今までの巨大な通路とは打って変わり、人が一人通れそうなほどの幅しかない。
「……なぁ月」
「なんですか?」
「通路が二つあったわけだが、多分こっちの道が正解だよな?」
「…………なんか嫌な予感がしますね」
「もう片方の通路がどうなっていたのか、気になる」
「つまりどうしたいと?」
「戻って探索しよう」
「うえぇぇぇ……やっぱりぃー。私も気にならないことはないですけど、面倒くさいですよぉ……」
「というわけで行くぞ」
「一度【というわけ】の意味を調べたらどうです?」
文句を言いつつも瑠璃のあとを追う月だった。
約一時間後。
二人は右側の通路の一番奥までたどり着いていた。
目の前には全く同じ階段が待ち構えている。
「……これは、どういうことでしょうか?」
「階段の角度的に大体予想がつくけど、さっきの苦労が無駄になりそうだからあまり言いたくない」
月は同意と言わんばかりに頷き、
「……上りましょうか」
「そうだな」
そんなやり取りをし、一列になって上っていく。
一分後、分かれ道に遭遇した。
一方は上に続いており、もう一方は下へと続いている。
「これを下っていくと、絶対左側の通路にたどり着きますよね?」
「言うんじゃねぇ」
「す、すみません」
「……進もう」
「はい」
事実、瑠璃と月の推測は当たっていた。
どちらの階段を上っても結局同じところで合流するようになっており、二人はただ魔物のいない通路を一時間も無駄に歩いただけだった。
会話をしつつも階段を上り続けること数分。
突然瑠璃が立ち止まった。
「瑠璃さん、おならですか?」
「あぁ、歩きながら無音で出すのは難しいから立ち止まった……って、ちげぇよ! 上から何か聞こえないか?」
「えっ…………あ、確かに」
「敵かもしれないから、一応警戒しておけ」
「了解です」
月はベルトから杖を取り出す。
やがて視界に入ってきたのは、見覚えのある姿だった。
赤髪でいかつい顔のノヴァ。
その後ろにユイ、ルア、ルルの順番で並んでいる。
「おっ、マジか。ようやく発見できたぜ」
そんなノヴァの言葉に、瑠璃は拳の構えを解除して、
「お前ら、どうしてここに?」
「そりゃーもちろん、あんたら二人を探しにきたに決まってるだろ」
「全く……心配かけさせないでよね」
そう言ってため息をつくユイ。
「ほう、心配してくれたのか?」
「あんたのことじゃなくて、る、月さんを心配してたのよ。別にあんたが死んだってアタシにはなんの影響もないわ」
「ユイさん……あの時は本当にありがとうございました。ユイさんの魔法のおかげで無事に最下層まで下りられましたから。……でも、瑠璃さんにひどいことを言うのは許しませんよ?」
微笑んだまま首を傾げる月。
「ご、ごめんなさい。さっきのは勢いで言っただけよ」
「とにかく二人とも無事で本当によかったぜ。……さてと、輪廻たちの動向や、あんたらがどうやってあの蜘蛛から逃げ延びたのか、他にもいろいろと話したいことが盛りだくさんだから、階段を上りながら話そうぜ」
「ああ、そうだな」
というわけで六人はお互いの状況の報告をしつつ、一列で階段を上っていく。
とはいっても、双子のルアとルルはいつも通り無言だったが。
で話を聞く限り、ノヴァたちは輪廻たちと別れて行動していたらしい。
どうやら輪廻からスマホを預かっているようで、連絡手段は存在しているようだ。




