第百七十四話【出身地】
そのまま地面へと倒れ込む男性。
瑠璃は無表情で踵落としを加えようとする。しかし、
「やめて!」
金髪ロングヘアーの女性が庇うように彼の頭へ覆い被さったことにより、中断された。
18歳ほどの見た目で、胸が大きくてウエストが細いという、まさに男性が好みそうなスタイルだ。
「どけ」
「この人も悪気はなかったの! 元々こういう性格だから」
「謝罪させるまでは気が済まない……。おい、さっさと起きろ」
軽めの蹴りが男性の横腹に直撃した。
気絶しているため反応はない。
同じように、後ろに控えている他二人も無反応だ。
金髪の女性は顔を上げて瑠璃を睨み、
「ちょっと、やめてよ! もう気絶してるじゃない!」
「キンキン声が耳障りだから黙っていてくれ」
「魔法を撃ち込むわよっ!」
「別に構わない。その瞬間にこいつの息の根が止まるかもしれないけどな」
「…………やめてよ」
「だから避けろって。とりあえず起こすから」
「乱暴しない?」
「しない」
「…………」
女性はあまり納得していないような表情のまま、立ち上がって仲間の元へと下がった。
瑠璃はその場にしゃがみ、男性の頬を往復ビンタし始める。
まあまあの威力が込められているのは、イラついているからだろう。
「ちょっと!? 乱暴にしないって言ったじゃん!」
そんな言葉を無視し、ビンタを続けること30秒ほど。
ようやく男性が目を開けた。
「おう、起きたか」
「……はっ、てめぇ!」
「ムカつくからとりあえず俺たちに謝れ」
「あぁ!? なんでオレが──」
「──早くしろ」
瑠璃が髪を掴んで持ち上げ始めると、彼は顔を歪めて、
「いっ……わ、わかった!」
瑠璃はその場に立って顎で促す。
男性はきちんと正座し、
「……申しわけねぇ」
「ちゃんと謝れよ。お前、月に言ったことを忘れたんじゃないだろうな?」
「失礼な口調で話したり、お連れの方にひどいことを言って申しわけありませんでした」
「……だってさ、月。これでいいか?」
「はい。瑠璃さんさえよければ許してあげましょう」
「正直まだムカついているけど、俺は心が広いしこの辺にしておいてやるか」
「それで、てめぇら……いや、あんたらは何者なんだ?」
「俺は琥珀川瑠璃。地球上で一番強い男だ」
そんな瑠璃の言葉に、男性は首を傾げる。
「ちきゅう?」
「俺たちの住んでいた星の名前だが、わからないか?」
「ちきゅうなんて聞いたこともないな。オレたちはアロンって星からやってきたんだ」
「なるほど、どうやら別の惑星っぽいな……。で、どうやってこのダンジョンへきたんだ?」
「オレたちの世界には魔の大陸ってところがあってな。そこに底なしと噂されている迷宮があって、この四人で三年くらいかけてクリアしたら……最下層の祭壇で、どこからともなく声が聞こえてきたんだよ」
「声?」
「もっと面白いダンジョンを攻略してみないか? って」
「あれ? 瑠璃さん。それって」
「ああ。多分絶対神だろうな……。それでこのダンジョンに転移させられたってことか」
「その通りだ。……けど、正直言ってこのダンジョン……めちゃくちゃ温くないか?」
「俺に失神させられたやつが何言ってんだ」
「う、うるせぇ」
「でもその意見には賛成だ。俺と月も昔、別のダンジョンを攻略したことがあるけど、明らかにあっちのほうが難しかったし」
「まあ、まだ序盤だからって可能性もあるが」
「にしても簡単なのに変わりはない。まるで冒険者を楽しませるためのダンジョンみたいな」




