第百七十一話【転職】
「ちょっと私も見てみます」
そう言って月が転職画面を開くと、一番下の列には【賢者 LV1】と表示されていた。
「賢者?」
「なるほど、つまり──」
「──一番可能性が高いのは性別の違いによるものだろうな。男が勇者で、女が賢者」
「もうっ! 私が言おうと思っていたのにー!」
「とりあえず転職してみようぜ!」
「…………はい、やってみるお」
「なんだその語尾」
「瑠璃さんが私のセリフを奪ったせいで、こうなったんだお」
「そうだったのかお」
「謝ってくれるまで続けるお」
「じゃあ月がやめるまで俺も続けるお」
「……そうですか、お!」
「おーん、お!」
二人は同時に転職し、それぞれステータスを確認していく。
「えっ!?」
最初に月がそんな声を上げた。
「こいつ、もう語尾を元に戻しやがった」
「あ、忘れてました。ステータスの数値がおかしいのは私だけですかお?」
「いや、俺もだお」
【琥珀川 瑠璃 男
勇者 LV1
HP 460
MP 370
攻撃力 600
防御力 452
素早さ 450
賢さ 460
幸運 500
『所持スキル一覧』】
レベル1の冒険者だった頃に比べて、全ての数値がちょうど百倍になっている。
攻撃力と防御力に関しては鬼の指輪や武道着などを装備しているため、それ以上だ。
「他の職業のレベル100よりもはるかに強いんですけど…………お」
「今絶対言い忘れてただろ。面倒だからもうお互いやめにしないか?」
「そうですね。私もそう思っていたところです」
「で……習得できるスキルはどうなっているんだろう」
「そう言われたら気になりますね。賢者というくらいなので魔法系は全部使えそうな気がしますけど……」
というわけで二人がスキル一覧を確認した結果、他の職業でそれぞれ習得可能だったスキルが全て詰め込まれていた。
初期ステータスのバランスもいいため、どんな育て方もできるというわけだ。
「にしてもマジで嬉しいな。ここから更に強くなれるってことだろ」
「はい! この職業であれば第一階層の塔でも余裕でクリアできそうです」
「じゃあさっそく行ってみるか」
「…………塔ですか?」
「いや、八階層の氷の世界」
「はい?」
「そのくらい話を聞いてたらわかるだろ」
「さっきのやり取りからして絶対塔でしたよ!?」
「何はともあれまずはレベル上げだ! 勇者と賢者のレベルに上限があるのかどうかはわからないけど、100になるまでは先に進まないぞ」
「やっぱりそうなるんですね……。はぁ、頑張ります」
そんなやり取りをし、二人と一匹は転職部屋をあとにした。




