第百六十五話【イチャイチャ・二】
「はぁ……はぁ……」
月の激しい呼吸音。
彼女は裸のまま、汗だくでベッドに寝転がっている。
「ふぅ、無事に貞操を守ることに成功したぜ」
一方、瑠璃はベッドから下りて着替えをしている最中だった。
「むぅ、一度でいいから触りたかったのにぃ……」
「そんな月の願望はいったん永遠に放置するとして、結局俺たちはどのくらい眠っていたんだろう?」
「えっと、昨日の昼に寝ましたよね?」
「ああ」
月は窓のほうを見つめながら、
「今は朝方っぽいので……少なくとも18時間くらいぶっ通しで眠り続けていたことになります」
「マジか……。裸の月ちゃん抱き枕が気持ちよすぎたからかな」
「なんですかその名称? あ、ちなみに、裸の瑠璃ちゃん抱き枕も温かくて最高でした」
「なんだその名前? お前、俺を馬鹿にしてんのか?」
「元々瑠璃さんが言い始めませんでした!?」
と、そこで月のお腹からぐぅぅぅーという音が鳴り響いた。
彼女は頬を紅色に染めつつ、
「ぐーって親指を立てるこの仕草、確かサムズアップって言うんですよね?」
「誤魔化したな」
「答えてくださいよ」
「合っているんじゃないか?」
「…………瑠璃さん──」
「──悪いけどあと十秒だけ静かにしてくれ」
「はい? ……まあ、別にいいですけど」
瑠璃は両手を上げて、指を折り始めた。
十、九、八、七、六、五……四……三……二──。
──ぐぅぅぅ。
再び月のお腹が鳴った。
「…………」
「…………」
「ぐーパンチしてもいいですか?」
「誤魔化し方がまあまあ上手い件」
「……どうしてこんな意地悪をするんです?」
「すまんすまん。お腹を鳴らす月がかわいすぎてつい、な」
「本当にかわいいと思うなら、一度目の時点でさりげなく朝ごはんを食べに行こうと誘ってくれたり、聞こえないふりをするなりしてくださいよ」
そんな月の言葉を聞いた瑠璃は少し悩んだ末、ベッドの側に移動した。
それから彼女をお姫様抱っこし、ドアに向かって歩き出す。
「寝すぎて逆に身体がだるいだろ? 二階まで俺が運んでやる」
「ありがとうございます~……って言うとでも思いました?」
「ん?」
「ん? じゃありませんよ。よくそんな反応ができますね」
「なんの話をしているんだ?」
「私の服装を見てみてください」
瑠璃は彼女の顔から身体へと視線を移す。
「…………めちゃくちゃかわいい」
「それはどうも」
「けどなんというか、他の誰にも見せたくない格好だな」
「まあ、裸ですからね」
「……早く着ろよ!」
「瑠璃さんが勝手にベッドから連れ出したんじゃないですかっ!」
その後、瑠璃と月は二階のリビングへと移動し、妖精たちと一緒に朝食を食べるのだった。




