第百六十二話【次代の妖精王】
魔物の死体が大量に浮いている湖の、比較的綺麗な部分で汗を流したあと、二人は大木のなかへと入る。
階段を上っていき、二階へと差し掛かったところで、リビングに妖精たちが集まっていることに気づいた。
それは向こうも同じで、誰かが瑠璃と月の名前を呼んだことによって徐々に存在が伝わっていき、一番遠くに立っていたちょこに届くまでさほど時間はかからなかった。
彼女はすぐにこちらへ駆け寄ってきて、
「二人とも、今までどこに行ってたの? 朝起こしに行っても部屋にいなかったし」
「ちょっと落ち着かなくて、夕方からずっとレベル上げをしていたんだ」
「そっか……。瑠璃くんらしいね」
「で、この騒ぎはなんだ? てっきりまだ疲れ果てて眠っていると思っていたんだが」
「大事なお話がしたくて、わたしがみんなを起こして回ったの。ちょうど今から始めるところだったから、瑠璃くんと月ちゃんもこっちにきてくれる?」
その言葉に、月が嫌そうな表情を浮かべた。
眠気はとうに限界を超えており、これからようやく愛する人と一緒に眠れると思っていたのに、それを妨害されるような形になったからだ。
「急ぎでないなら、私たちは眠りたいんですけど」
「あまり時間は取らせないから、お願い。……だめ?」
「月、もう少しの辛抱だ」と目を擦りながら言う瑠璃。
「……わかりました」
ちょこは「ありがとう」と返答し、机に座っているみんなを見渡せる位置へと戻っていった。
瑠璃と月は近くの席に着く。
「さて、じゃあさっそくお話を始めるね! ……わたし──ショコラは昨日亡くなった先代のあとを継いで、妖精王になろうと思います。異論のある人はいますか?」
そんなちょこの言葉に、反応する者はいない。
妖精王の死によって落ち込んでいるというものあるが、みんな彼女が次の王にふさわしいと認めているのだ。
「ありがとう。というわけでショコラ……ううん、これからは妖精王ちょことして、妖精国を導いていきます。だけど、わたしはまだ未熟でみんなに迷惑をかけるかもしれないから、助けてくれると助かるかな」
大多数の妖精たちが頷く。
「わたしが描いている今後のプランとしては、まず亡くなった人たちのお墓を作っていこうと思います。そして明日から毎朝全員での特訓を始めようかな、と」
「ん、どういうことだ?」と数人が首を傾げた。
「今のわたしでは到底先代の妖精王に及ばない。あの人は本当に強かったから」
「まあな」
「確かに、あの御方よりも強い妖精は今後出てこないかもしれないな」
「その通り。だからみんなで強くなるんだよ! 個の力に頼るんじゃなくて、全員で妖精国を発展させていく。わたしはそういう国を造っていきたい」
「なるほど……。いい考えだと思うぞ!」
瑠璃が大声で言った。
それを機に他の者も賛同の声を上げ始める。
「ようし、俺ももっと強くなってやる!」
「ショコラ……じゃなくてこれからはちょこだっけ? とにかく妖精王ちょこに負けないくらいの魔法を使えるようになってみせるぜ!」
「あたしもだ! まだまだ若い者には任せてられないよ」
ちょこは嬉しそうに微笑みつつ、
「さてと……お墓を作る前に腹ごしらえをしようと思うんだけど、それよりも先に、一番後ろにいる瑠璃くんと月ちゃんにお礼を言おう。あの二人がいなかったら、もっとたくさんの被害が出ていたはずだから。まずわたしから……ありがとね、瑠璃くん、月ちゃん!!」
「「「ありがとうございました」」」
「「「ありがとなっ!」」」
「「「ありがと~」」」
「お、おう」
「あ、はい。どうも」
二人は照れくさそうに頷いた。




