第百五十五話【敵軍のリーダー】
一方瑠璃は、もうすでに湖を越えて森のなかを駆け抜けていた。
「リーダーがいるとすれば……どこだ?」
魔物は全方向から大木に向かっている。
そのため、親玉の居場所がどこなのか見当がつかない。
だが、彼はなんとなく正面を進んだ先が怪しいのでは? と踏んでいた。
「「「グォォォォォ!!」」」
「「ブヒィィィ!!」」
走りながらも、迫りくる大量の魔物たちを一方的に倒していく。
瑠璃の攻撃力と敵の防御力に差がありすぎるせいで、殴るたびにものすごい速度で吹っ飛んでいき、他の魔物も巻き込んでいく。
しかし、とにかく数が多い。
無限と思えるほどに四方八方から追加される。
横からのリザードマンによる斬撃をしゃがんで躱しつつ、目の前のゴリラに膝蹴り。
雄叫びを上げながら倒れる相手の肩を踏み台にしてジャンプし、更に前へと進む。
そんな彼の全身は血によって真っ赤に染まっていた。
もちろん自分のものではなく、魔物の返り血だ。
少しでも気を抜けば殺されてしまうような状況なのにもかかわらず、瑠璃は楽しそうな笑みを浮かべている。
「急がないと月たちが危ないってわかってるのにな……」
どうしても笑顔を止めることができない。
いくら倒しても減らない魔物たち。
大量に手に入る経験値。
死と隣合わせの環境。
彼にとってここはまさしく天国だった。
その後も魔物の波に逆らって前へと進み続ける。
実際には30分以上経っているのだが、瑠璃の体感で一瞬にも満たない時間が経過した頃。
明らかに他とは違うオーラを持った敵が現れた。
真っ白な肌。
頬が痩せこけており、黒い目には瞳が存在していない。
白と赤の二色で構成されたローブを纏っていて、紫色の宝石が先端に埋め込まれた長い杖を持っている。
身長は180センチほどで、背中越しに金色の輪っかが浮かんでいる。
わかりにくいが性別は男だろう。
そしてなぜか、半径一メートル範囲に他の魔物が存在していない。
まるで彼の邪魔をしないように、気を使っているかのよう。
そんな相手が、瞳のない不気味な目で瑠璃を見つめながら、
「なかなか妖精国を落とせないと思えば……原因はお前か」
「誰だお前?」
「我はカルネージ。妖精国を手に入れるために混沌軍を率いている者だ」
「なるほど。よくわからないけど、お前を殺せば今の状況が解決するということか」
「ふはは、残念ながらそれは不可能だろう。なぜなら我は最強だからな」
「じゃあ世界最強の俺よりも強いってことだよな? 試してやるよ」
「世界最強だと? ただの人間風情が何をほざいている」
「やってみればわかる。行くぞ──」




