第百三十話【お菓子の国の女王】
王座の前に到着すると、プリンがこちらを振り向き、
「女王様。こちらが世界一のパティシエールを名乗る者です」
「ふむ。こやつたちが、か……」
女王と呼ばれた少女は、瑠璃たちに視線を向けながらそうつぶやいた。
彼女は十歳ほどの見た目で、ピンク髪のロングヘアーにホイップクリームのような帽子を被っている。
愛らしい面持ちに、真っ白な肌。
「この御方が我らの女王様だ。世界一のお菓子を求めて毎日努力しておられる」とプリン。
女王は白いドレスをはためかせながら足を組み、手に持っていたカップケーキを口に含んだ。
「……う~む、やはり違うのぉ。甘さが足りん」
続けて横の机からチョコタルトを取り、少しだけ齧る。
「これも甘さが足りぬ……。そして、クッキーに苦みがあるせいでチョコとの相性が悪い」
「女王様、どういたしましょう。さっそく彼らにお菓子を作らせますか?」
「そうじゃな、厨房へ案内してやってくれ」
「はっ! 了解いたしました」
「もし余が納得するお菓子を作ることができたなら、国宝を渡してやってもよい。まあ、お菓子作りの天才である余が不可能なのだから、どうせ無理だろうがな」
「……お前ら、ついてこい。厨房へ案内しよう」
そう言ってプリンは扉へと引き返していく。
瑠璃たちはそのあとを追いながら、
「あいつ、子どものくせにやけに偉そうな態度だったな」
「ちょっと違和感がありますよね」
「さっきの感じからして甘さに不満があるみたいだし、砂糖をそのまま出してみるか?」
「絶対やめたほうがいいと思います。不敬罪で牢屋に閉じ込められますよ?」
「父や兄のことを……父兄!」
「あっ、もうそのノリは面白くないです」
「おーん」
王座の間をあとにし、厨房へと移動した。
そこには巨大な冷蔵庫とキッチンが設置されており、きちんと掃除が行き届いている。
「さて、存分にお菓子を作ってくれ。俺は一応お前たちが不審な動きをしないかどうか、ここで監視しておくことにしよう」
プリンがドアの前で言った。
「ちなみに尋ねたいんだけど、女王様ってどんなお菓子が一番好きなんだ?」
「そうだな…………。基本的にはなんでも好きだと思うが、俺の作るプリンが一番好きだとよくおっしゃっている」
「それは、自分の体を食べさせているということか?」
「バカを言え。ちゃんと一から作ってるに決まっているだろう」
「なるほど……。ということで月、最初はプリンで攻めてみよう」
「何度か作ったことがあるのでレシピはわかりますけど……私、普通のプリンしか作れませんよ?」と小声で月。
「大丈夫だ。料理の最中に俺の天才的な発想力を追加してやる」
「……嫌な予感がするので、私がだめだと判断したら却下しますからね?」
「おう」
「じゃあまずは材料を……」
そう言いつつ月が冷蔵庫を開けると、なかにはびっくりするほど大量の材料が入っていた。
お菓子作りに使えそうな物ばかりだ。
「これは……必要な物を探すのが大変ですね」
「何がいるんだ?」
「卵と砂糖と牛乳と、もしあればバニラエッセンスを。水は水道水があるので探さなくても大丈夫です」
「了解」
その後、瑠璃と月はプリンを作っていく。




