第七十八話【無人島の森】
果物の実っている木々。
左右に揺れ続けている蕾。
凶悪な牙を生やした花など。
森のなかにはいろんな種類の植物が存在している。
また、筋肉質な猿や青色のゴブリンが木の上や地面を徘徊していたりもする。
そんな森のなかを進むこと十分。
突然瑠璃が難しい顔で立ち止まった。
「瑠璃さん、どうしたんですか?」
「おならをしようとした瞬間危なかったから、尻に力を入れて堪えた」
「…………そうですか」
「ギリギリセーフ」
「原因である私がいうのもあれですけど、お腹が下っている時におならをするのはやめたほうがいいですよ。大丈夫だと思っても予想以上に近くに待機していたりするので」
「わかってはいるんだけどついやってしまうんだよ……。というか、妙に詳しいな」
「そ、そんなことありませんよ……」
「さてはお前、失敗したことあるだろ」
「ありませんっ!!」
「でもそれにしては妙にリアル──」
「──ありませんっ!!」
「いつ頃──」
「──ありませんっ!!」
瑠璃はいったん歩き出し、少し進んだ辺りで振り返り、
「──」
「──ありませんっ!!」
「いや、まだ何も言ってないだろ。そんな必死に否定していたら逆に──」
「──ありませんっ!!」
「…………だけど──」
「──ありませんっ!!」
「はぁ……。もうわかったって。疑って悪かったよ」
「わかってくれたならいいんです」
「そういえばちょこ──」
「──ありませんっ!!」
「……いや、仲間の名前で反応するなよ」
「えっ? あっ、すみません。ちょこが勝手に汚いものに変換されてしまって……」
やっぱり失敗したことあるだろ! と内心で思いつつ、面倒くさそうなのでこれ以上口には出さない瑠璃。
「で話を戻すけど、ちょこは歩き疲れていたりしないか? でこぼこした地面だから小さいお前には大変だろ?」
「にゃ~ん!」
ちょこは力強い鳴き声で返答した。
「うん、大丈夫そうだな。辛くなったら俺が抱っこしてやるからすぐに言えよ?」
瑠璃がそう言った瞬間、ちょこがその場に立ち止まった。
「ちょこちゃん?」と月。
「いやお前……楽をしたいだけだろ?」
「にゃ~ん」
ちょこは首を左右に振った。
「嘘つけ。さっきまで元気だったくせに」
「にゃ~ん」と再び首を横に振るちょこ。
「はぁ、仕方ない……。かわいいから騙されてやる」
瑠璃は呆れたような表情をしつつも、ちょこを抱きかかえた。
「これでいいか?」
「にゃ~ん」
「そうか、じゃあ行くぞ」
瑠璃が歩き出して数秒後、
「にゃ~ん」
後ろからかわいらしい声が聞こえてきた。
振り向くと、月がしゃがんでいる。
「おい、何やってんだ? ちなみに言っておくけどこの状態で月を抱っこするのは無理だからな? ちゃんと自分の足で歩いてくれ。そもそも大して疲れてないだろ」
月は首を左右に振り、
「にゃ~ん」
「かわいいけども、今回はだめ」
「むぅぅ……ちょこちゃんだけずるいです! 私もたまには瑠璃さんにお姫様抱っこされたいんですよぉ」
「そうしたらちょこを下ろすことになるけど、お前はそれでいいのか?」
「にゃ~ん!」
「だそうだ。残念ながら今はちょこの時間ということで」
「じゃあ私がちょこちゃんを抱っこして、その私を瑠璃さんが抱っこするというのはどうです?」
「いや、そもそも初めての場所を攻略しているわけなんだから、もう少し真面目にやらないか? いつ何が起こるのかわからないんだし」
「その言葉を普段の瑠璃さんに聞かせてあげたいですね」
「俺はいつも真面目だろ。ほら、早く行くぞ」
「はーい……」




