第七十六話【料理対決】
しばらくして。
森のなかで食べられそうな物をアイテムボックスに収納した瑠璃と月は、砂浜へと戻ってきていた。
すでに目の前にはたき火がパチパチと燃えている。
「まずは俺の番だ」
「えっ? 一人ずつ作るんですか?」
「ああ。料理というのは過程が重要だったりするからな」
「家庭には欠かせないものですからね」とウインクする月。
「……」
「……」
「琥珀川瑠璃による、るりるりクッキングー!! テレビをご覧の皆様はぜひ同じ食材を用意して作ってみてくれ!」
「せっかくダジャレを言ったんですから、せめて何か反応してくださいよぉ……。そしてるりるりクッキングって、めちゃくちゃセンスありますね」
「だろ? ……さて、最初に使うのはこの巨大な貝殻! もし持っていないという人がいれば、フライパンで代用しても構わない」
「どっちかというと貝殻がフライパンの代用なんじゃないです?」
「貝殻をたき火のなかに放り込む! それからこの魔物を適当に切って入れていく」
瑠璃はそう説明しながら、紫色のタコの足を素手で千切り、放り込んでいく。
「その魔物……食べても大丈夫なやつですか?」
「多分大丈夫だろ。で、足を全部入れ終えたら、残った頭はそこら辺に放り捨てて、貝殻のなかに海水を入れましょう。もし万が一キッチンに常備されていないという家庭があるなら、その場合は塩でも大丈夫!」
瑠璃は波打ち際まで移動し、両手で海水をすくう。
それを貝殻のなかに入れると、ジューッという音が響いた。
「むしろ塩がないから海水を使っているんですよね」
「そうとも言う。で、海水がある程度蒸発してきたところで、このよくわからない果物と、なんか香ばしい風味を含んでいそうな木の実と、渦巻きみたいな形のきのこを投入」
「またそんな適当なことを……」
「最後に、そこら辺に落ちている木の枝でかき混ぜながら、具材がほんの少し焦げるまで焼き続けます」
それから三分後。
「これで完成! あとはフライパンをたき火のなかから……熱っ!?」
貝殻から手を放す瑠璃。
「そりゃー素手で触ったら熱いのは当たり前ですよっ!」
瑠璃はアイテムボックスから聖なるナイフと普通のナイフを一本ずつ取り出し、器用に挟んで貝殻を救出。
「よし、熱いうちに食べてみてくれ」
「なんか作り方が適当すぎてあんまり食べる気にならないんですけど……。これって本当においしいんです?」
「調理の過程なんてどうでもいいだろ。大切なのは味だ」
「過程が大事だと言っていたのは瑠璃さんじゃないですか!」
「食べないのか? なら俺とちょこで食べるけど」
瑠璃が尋ねた直後、月のお腹がぐぅぅぅと鳴った。
「た、食べます! 見た目はともかく味はおいしいかもしれませんし」
月はタコの切り身を摘まんで口に運び、咀嚼していく。
瞬間、目を大きく見開き、
「うまっ!?」
「ははっ、だろ?」
「歯ごたえがあって、塩加減も抜群です。果物と木の実の風味が絶妙な味を出してますね! これ、全部もらっていいですか?」
「ちょこと二人で仲良く分けるんだぞ」
「は~い」
「にゃ~ん」
やがて食べ終わると、月が自信満々の表情を浮かべて立ち上がる。
「次は私ですね! 絶対に瑠璃さんの料理を超えて見せますので、見ていてください」
「うん、というわけで月の料理シーンはカットで頼む」
「何を言っているんですか!? そして、誰に言っているんです?」
「俺が主人公の物語を創っている可能性がある作者と、その物語をアニメ化した時の監督に向けて」
「わけのわからないことを言っていないで、ちゃんと最後まで見届けてくださいよっ! 私の料理スキルは神レベルにまで達している自信がありますから」
「ははっ。ここまで宣言しておいてカットされてたら面白いよな」
「作者さんだってきっと私の意向を──」
十分後。
「ふぅ、ようやく完成しましたよ! 熱いうちに食べてみてください」
そう言って月は貝殻のお皿を砂浜の上に置く。
なかには、いろんな果実や木の実を潰して作られた茶色のスープが入っていた。
「これ、大丈夫なのか?」
「それは作っている過程を見ていてわかりましたよね? あれで不味くなるはずがありませんよ」
「いや、カットされてるから」
「えっ?」
「俺の予想だと、【十分後】っていう三文字で月の料理シーンが飛ばされている」
「仮にそうだとしても瑠璃さんは私の料理を見ていたわけですから、なんとなくわかるはずです」
「まあ、確かに不味くはないと思う。栄養もたくさんありそうだし」
「おそらくバナナの味が一番強いと思うので、この料理に名前を付けるならホットバナナですね」
「じゃあ、いただきます」




