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第七十一話【未来予知】

「お……お疲れ様です」と顔を少し強張らせながら月。


「ふぅ、すっきりした」


「次は私に代わってもらってもいいですか?」


「ん? 別にいいけど、更に船が汚れるぞ」


「大丈夫です。攻撃したりはしないので」


「そうか」


 月は魚人の死体に近づき、同じように足首を掴む。

 それから力が弱いなりに何度か身体を回転させて、


「もう二度と瑠璃さんの夢に出てこないでくださいぃぃぃー!!」


 勢いよく船の外へと放り投げた。


 魚人は水しぶきを上げて暗い海のなかに沈んでいき、あっという間に見えなくなった。


「あれだけ血まみれの魔物を海水に放り込むって、残酷なことをするやつだな……。あれは染みるぞ」


「いや、瑠璃さんには言われたくないですよ!? 私は死体を片付けただけですから」


「…………」


「今度は急に黙りましたね」


「なぁ月、ちょっとひとつ尋ねたいんだけど」


「はい、なんでしょう?」


「もし一人であいつと戦っていたら、勝てたと思うか?」


「う~ん……。瑠璃さんがボコボコにしたせいで相手の強さがよくわからなかったですけど、HPが高いような気がしたので、危なかったかもしれません」


「つまり俺が今寝ていたら、あれが正夢になっていたかもしれない、と?」


「はい……。ん? ということは、未来を予知したということですか?」


「おそらく」


「勘がほぼ全部当たったり、夢で未来が見えたり、瑠璃さん……本当に何者なんですか?」


「何者って言われても、琥珀川瑠璃だとしか答えられないな。俺は俺だから」


「実はどこかの神様だったりしません?」


「俺を神様ごときと一緒にするな。魔神を倒した実績もあるし、もっと上の存在だろ」


「実は宇宙人だったりしません?」


「格を下げるんじゃねぇ」


「実は私を守るためだけに生まれたナイトだったり?」


「更に格を下げ……られているんだけど、それなら納得!」


「とにかく、私が危なくなる前に起きてくれてありがとうございました」


「おう! 今後も守ってやるから安心しろ」


 そんな瑠璃の言葉を聞いた月は、少しだけ困ったような表情を浮かべ、


「でも……もし今後私が危ないタイミングで毎回夢を見るのであれば、瑠璃さんの泣く姿を何度も見ることになるので、正直辛いです」


「いや俺、泣いてないぞ?」


「…………ん?」


「生まれてから一回も泣いたことないから」


「何をおっしゃっているんです?」


「世界最強の俺が辛い夢を見た程度で泣くはずないだろ」


「……あっ、そうですか。了解です」


「おい、なんだその反応?」


「泣かないんであれば、今後一生慰めなくても大丈夫そうですね。次からは一人で頑張ってください」


「……おーん」


 真っ暗な海の上。

 瑠璃と月を乗せた船は、風に吹かれて順調に進んでいく。

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