第六十九話【瑠璃の涙】
「──月っ!?」
大声を上げながら目を開けると、見慣れない天井。
瑠璃はすぐさま身体を起こして周囲を確認。
キャビンのなかだ。
「…………夢か」
身体に大量の汗をかいている。
彼はベッドから立ち上がり、ドアを開けて外に出た。
すると甲板には月の姿。
横にはちょこもいる。
「月……」
彼女は手すりを持って、じっと星空を眺めていた。
綺麗な白髪ロングヘアーが潮風に揺れている。
その様子はとても様になっていて、まるで絵画のような美しさを感じた。
そんなことを思うのと同時に、一気に安堵の気持ちが込み上げてくる。
月が生きていて本当によかった。
夢でよかった。
けど、ああなる可能性はゼロじゃない。
さっき自分が寝ている間に起こっていても、決しておかしくはなかった。
ここは未知のダンジョンなのだから。
瑠璃は思わず、あれが現実だったらと想像してしまう。
真っ先に出てくる感情は、悲しみ。
言葉では表せないほど辛い。
きっと死よりも苦しいだろう。
いろんな感情がごちゃ混ぜになり、自然と涙が溢れてきた。
とそこで、
「あれっ、瑠璃さん?」
月がこちらの存在に気づいたらしく、視線を向けてきた。
「もう起きたんで……って、どうしたんですか!?」
「な、なんでも……ねぇよ」と腕で涙を拭う瑠璃。
「なんでもないのに涙なんて出ませんよ!?」
彼女はすぐに駆け寄ってきて、
「まさか、怖い夢でも見たんです?」
数秒の間を空けたあと、瑠璃は「……うん」と小さく頷いた。
きっといつものように馬鹿にされるんだろうなと思っていると、無言で彼女に抱きしめられた。
自分よりも小さくてか弱いはずなのに、まるで母親のような安心感がある。
「よしよし」と彼の頭を優しく撫でる月。
「…………っ」
瑠璃は再び涙を流し始めた。
意地で声を出さないようにしているものの、嗚咽が漏れている。
その様子はまるで幼い子ども。
よほどあの夢が怖くて、辛かったのだろう。
少しして。
かなり落ち着いてきたらしく、瑠璃は泣くのをやめていた。
「瑠璃さん、私はいなくなったりしません……。ずっとそばにいますよ」
彼を抱きしめたまま月がつぶやいた。
「……なんで俺の夢の内容を?」
「そのくらいわかります。瑠璃さんが泣くほど辛い夢なんて、私との別れ以外にありますか?」
「……なるほど」
「ちなみにどんな夢だったんですか?」
瑠璃は先ほど見た夢について、丁寧に語り始めた。




