表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
191/428

第六十八話【睡眠】

 最初の島を出発して三日が経過した。


 今は夕暮れ時で、太陽が半分ほど沈んでいる。


 瑠璃たちを乗せた船は、未だ海の上を彷徨っていた。

 どの方角を見ても海しか見えない。


 そんな船の甲板にて。


「ふぁぁぁ……」


 魔物の死体を海に捨てながら瑠璃が大きなあくびをした。


「大丈夫ですか?」


「ふぁぁぁ!」


「もう三日も寝てないんですから、あまり無理しないでください。今の私ならある程度魔物と戦えるので、キャビンのなかで寝ててもいいですよ?」


 航海を始めてから二人のレベルは三つ上がっていた。

 その時に得たスキルポイントで月は新しく【雷弾】を習得し、レベル3まで成長させている。


 雷弾とは雷属性の魔力の弾を飛ばす技で、スキルレベルと賢さに応じて威力や射程が増えていく。


 たとえレベル3であれ月は賢さの数値がかなり高いため、水に生息している魔物に効果抜群の雷弾を使用することによって相当なダメージを与えることができるのだ。


「ふぁぁぁ?」と瑠璃。


「はい、大丈夫です」


「ふぁぁぁ!」


「はい。危ないと思ったらすぐに助けを求めますので、安心してください!」


「いや、なんで伝わるんだよ」


「そんなの当たり前ですよ。私は瑠璃さんのパートナーですから」


「ふぁぁぁ、さすがは嫁の俺。これなら就寝して安心できそうだ。多分起きてくるほどで一時間から、任せまでそれた」


「文法がめちゃくちゃじゃないですか! 相当眠いんですね」


「ふぁぁぁ!」


 瑠璃はそう返答し、キャビンのなかに移動。


 一目散にベッドへ寝転がり、布団をかけた。


「……マジで眠い。こんなに起きていたのはいつ以来だろう」


 目を閉じて強烈な睡魔に身を委ねる。


 ほんのりと感じる月の匂い。


 瑠璃とは違って何度も睡眠を取っていたため、彼女の匂いが染み込んでいるようだ。

 月のことが大好きで仕方がない彼にとっては、とても心地よい香りだった。


 そんな幸せな空間に包まれて、瑠璃は眠りに落ちていく。


  ◆ ◇ ◆


 目を開けると、暗い部屋のなかだった。


 唯一存在する窓からは、星空が見える。


 船のなかにいるため不規則に揺れている。

 三半規管が弱い者であれば、すぐに酔って吐いてしまうほどの揺れの強さ。


「……月?」


 なぜかはわからないが妙な不安をおぼえ、すぐさまベッドから立ち上がった。


 そのままドアを開けてキャビンの外に出ると、


「なっ!?」


 甲板には紫色の魔物が立っていた。


 頭が魚で身体が人間。

 いわゆる魚人というやつだ。


 手に持たれている鉄の槍を下にたどっていくと、そこには月の姿。


 矛がちょうど心臓部分に刺さっている。


 彼女の口や胸元からは大量の血が流れており、今もなお床に広がり続けている。


「なん……で?」


「ギョッギョッギョォォォ」


 魚人は気持ちの悪い声を発しつつ、月の死体を抱き抱えて海のなかへと飛び込んでいった。


「嘘だろ!? ……ま、待てよっ!!」


 彼はすぐさま海へ飛び込み、そのあとを追う。


 直後、一瞬にして何も見えなくなった。



 夜の海は、人間にとってあまりにも過酷すぎた。



 暗くて何も見えない。


 目を開けるのも困難で、呼吸に至っては全くできない。


 それでも彼は下へと潜っていく。


 まるで自分の命なんていらないと言わんばかりに。




 海に潜って五分が経過した頃。


 とうとう彼の身体は限界を迎えた。


 身体が思うように動かず、徐々に意識がなくなっていく。


 今から地上へ戻るのは不可能だろう。


 間違いなく今までで一番の危機的状況だった。


 最後に声にならない声で「……る、な」とだけつぶやき、彼は意識を手放した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] なんだ、夢か…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ