第四十八話【家族計画】
瑠璃は机に伏している月を抱きかかえ、部屋へと移動した。
まず彼女の装備品を外し、下着姿でベッドに寝かせる。
それから布の服に着替えて月の隣に寝転がった。
そのタイミングで彼女が目を覚ます。
「ふあぁぁぁ……。あれ? 瑠璃さん?」
「おう、起きたのか」
「? ここは?」
まだアルコールが抜けきっていないらしく、微妙に目の焦点が合っていない。
身体もフラフラしている。
よほどお酒に弱いのだろう。
「ついさっき部屋に運んできたんだよ」
「あ、そうでしたか。ありがとうございます」
「さて、俺はもう寝る。朝までおっさんと飲み比べをしていたせいで、結局一睡もしてないんだ」
「いや、元気ですね!?」
「まあな、じゃあおやすみ~。一階の店員に言えば水を買えるから、それで身体を洗ってすっきりしたらどうだ?」
そう言って瑠璃は目を閉じる。
「あ、おやすみなさい」
月はベッドから立ち上がり、ローブを着たあとでドアに向かってゆっくりと歩いていく。
しかしその途中でふいに立ち止まり、なぜかローブを脱いでベッドに引き返し始めた。
そのまま布団に入って、彼の隣に寝転がる。
「……ん?」と視線を向ける瑠璃。
「うにゃ~ん」
「……うにゃ~ん?」
「ふふっ」
「……」
「……ちゅっ」
一瞬だけ唇を重ねる月。
「おい、何がしたいんだ?」
「瑠璃さんお酒臭いですぅ」
「まあ、一日中飲んでいたからな……。ほら、酒臭い俺からは離れたほうがいいぞ」
「構いません」
「俺が構うんだよ」
「……」
突然月が無言になった。
荒い吐息だけが聞こえてくる。
瑠璃は彼女の行動を不思議に思いつつも目を閉じた。
それから数秒後。
急に月が瑠璃の上に乗り、四つん這いで彼の顔をじっと見つめる。
「お前、やっぱり昨日からおかしいぞ?」
「……ぺろっ」
と瑠璃の唇を舐めた。
「何かあったのか?」
「ふふっ」
「悩みがあるなら言えよ」
「……じゃあ、ご相談があるんですけど、いいですか?」
「ん? ああ。どうした?」
「えっと……私……」
月は微妙に腰を動かしながら、
「子どもがもう一人欲しいです」
そう言われて顔を赤くする瑠璃。
返す言葉が見つからないようで、じっと真上の彼女を見つめている。
「実はかなり前から思ってて……」
「えっと、ちょっと待ってくれ。ここ、ダンジョンのなかだぞ?」
「はい。わかってます」
「子どもを産んだら攻略どころじゃなくなる……と思うけど」
」
「それもわかってます」
「なら──」
「──けど、それを承知の上でもう一人欲しいんです~」
「……とにかく今は女の子の日とかでいろいろ大変だろ? だからまた今度話し合おう。な?」
「むぅぅぅ!」と納得していない様子の月。
腰を上下に動かして不満を表している。
「ちょ、それやめてくれ。あれが元気になる」
「なってください!」
「だめだって」
「いいんです。私たちは夫婦なんですから」
「それは、そうだけどさ……」
「瑠璃さんは寂しくないんですか?」
彼はたっぷり30秒ほど悩んだあと、
「俺は月がいれば大丈夫だけど……子どもが欲しくないことはない」
「やっぱり、そうですよね」
「でも、ダンジョンで妊娠はいろいろと厳しいって……。出産自体はこの町にいればなんとかなるだろうけど、子育てに何年かかるかわからないぞ。そうしたら長いこと先に進めなくなる」
「それはまあ……わかります」
「というわけで、もう少し考えよう」
「…………はーい」
「とりあえず俺は眠たいから寝る」
「じゃあ私は朝ごはんを食べたり身体を洗ったりして待っていますね」
「おう」
瑠璃は目を閉じてようやく眠りにつくのだった。




