第三十一話【おしり】
瑠璃と月は魔物を倒しつつ、中心のカエルを避けるように遠回りをして沼を進んでいく。
しかし真っ赤な巨大カエルはずっと向きを変えて視点を合わせてくるため、なんとも言えない恐怖感と不気味さがある。
結局沼のエリアを抜けてもあのカエルが襲ってくることはなかった。
続いて足を踏み入れたのは赤茶けた荒野。
乾燥しており、植物が一切生えていない。
しかしそこまで広いわけではなく、少し向こうに崖が見える。
月は濡れた靴のまま荒野の上を歩き出し、ふと後ろを振り返った。
そしてうんざりとした顔で、
「むぅぅ……。あのカエルまだ見てますぅー」
「俺、久しぶりに恐怖心を感じているかもしれない。正直落ちたら死ぬであろう吊り橋よりもずっと怖い」
「わかる気がします。あのカエル絶対にやばいですよ」
「あくまで勘だけど、今の俺たちじゃ絶対に勝てない」
「カエルが襲ってこなかったのと同じくらい、瑠璃さんが途中で突っ込んでいかなかったことに安心している自分がいます」
「さすがの俺でもあんなのを相手にはしないって」
「ですよねぇ……」
一分ほど歩き、二人は崖の目の前に到着した。
月は「はぁぁぁ……」と大きなため息をつき、
「私、嫌ですよ?」
「ん? このアトラクションのことを言っているのか?」
「どこがアトラクションなんですか」
二人は崖を見上げる。
高すぎて上がどうなっているのかよく見えない。
複数のロープが垂れており、これを使って登れということだろう。
荒野一面が壁で囲まれているため、他の道はなさそうだ。
「とりあえず月が最初に行くか?」
「えっ、どうしてですか?」
「もし滑っても、力のある俺なら下から支えられるだろ」
「あぁ、なるほど! じゃあお願いします」
そう言って月は真ん中に位置するロープを握り、岩の凹凸に足を乗せてゆっくりと登り始めた。
瑠璃は真下に移動し、ふと上を見上げる。
「……」
登っている姿勢のせいで布の半ズボンが張り、控えめなお尻の形が鮮明に見える。
彼は真顔で手を伸ばし、月のお尻をむにっと揉んだ。
「ひゃんっ!?」
思わずロープを手放して落下する月。
瑠璃は彼女が落ちないようにお尻を両腕で支えた。
「…………お、重たい」
「何するんですか!? 普通一生懸命登っている女の子のお尻を揉んだりします?」
「わるいわるい。フリフリしてかわいかったから、つい触りたくなった」
「触るならせめて一言言ってから……いえ、登っている最中はやめてください。鳥肌が立って身体に力が入らなくなります!」
「もうしないと約束するから、早く登ってくれないか? 腕が疲れてきた」
「嫌です。また触られそうな気がするので瑠璃さんが先に登ってください」
「…………わかった」
瑠璃は彼女を地面に降ろしてロープを握り、ゆっくりと登り始めた。
数秒後。
月が彼の横腹をくすぐる。
「あははっ!」
変な笑い声を上げつつ瑠璃が地面へと落下。
ドサッという音を立てて尻もちをついた。
「ぷっ……。ふふっ、ダサいですねぇ」
「絶対やると思ったよ!!」
「仕返しですよぉ~」
「よし、今度は月の番だ。早く登れ」
「いや絶対触る気じゃないですか! もうおあいこですし、大人しく先に進みましょうよ」
「もちろんその予定だぞ」
「瑠璃さんはいまいち信用にかけるので、そういうことなら先に登ってもらえます?」
「別にいいけど、もしそっちが触ってきたりしたら、倍返しにするからな?」
「わ……わかってますよぉ」
そんなやり取りをしつつ、ようやく崖を登り始めた二人だった。




