第七話【小屋】
森のなかを進むこと数分。
木造りの小さな小屋に到着した。
周りには木が生えておらず、すぐ裏に浅い川が流れている。
透明感があり、底の小石が鮮明に見えるほど綺麗だ。
川の先には再び森が広がっており、道が一切見当たらない。
ゆえに入り込めば迷うことは間違いないだろう。
「誰か住んでいるんですかね?」
小屋に近づきつつ月がつぶやいた。
「いや、さすがにいないだろ……とは言い切れないな。あの絶対神が創ったダンジョンだし、何が起こるかわからない」
「ちょっと開けてみてください」
「おう」
瑠璃はドアを少しだけ開き、隙間からなかを確認。
「うん、いないな」
頷いてドアを開けた。
小屋の内部は木造りで、小さなベッド、机、タンスがある。
「結構綺麗ですね」
「しばらくここに住むか。小屋の裏に川があるおかげで水に困ることもないし、レベル上げをする拠点にピッタリだ」
「あー、確かにいいですね。けど、一週間程度にしましょう。私たちは昔みたいに若くないので、あまり同じ場所で瑠璃さんの気が済むまでレベル上げをしていたら、時間がいくらあっても足りません」
「えぇー……」
「なんでそんな嫌そうな顔をするんですか」
「最低でも一ヶ月は過ごそうと思っていたのに」
「だめです。先に進みながらレベルを上げたほうが絶対に効率がいいですから」
「四次元の──」
「──思考回路を使うのは禁止です。ややこしいので」
「おい、当たり前のように封じてくるんじゃねぇ」
「さて、これからどうしますか? 川で魚をとります? それとも森のなかで食材になりそうなものを探します?」
「まあ四次元のことは置いといて、さすがは食いしん坊! 食べ物のことばかりだな」
「うるさいですよ! お腹が空いたらだめなんですか?」
「別に構わない。元気な証拠だ」
瑠璃は嬉しそうにサムズアップ。
「で、結局どうします?」
「そうだな……。魚をとっている最中に魔物に襲われたら面倒だから、まずは森で食べられそうな植物を探してみよう。そうしたらレベル上げも同時にできるし」
「あ、それいいですね」
「だろ? で、疲れてきたらこの家で休めばいい」
「そうしましょう!」
瑠璃と月は小屋をあとにし、森のなかでレベル上げ兼採取を始めた。
◆ ◇ ◆
数時間後。
「瑠璃さん」
「なんだ? 足の水虫が気になるのか?」
「そうなんですよ。実は一時間ほど前から痒くて痒くて……って、違いますよ! そもそもそんなものはありません! 失礼なことを言わないでください!」
「じゃあ前半乗るなよ。一瞬本当にあるのかと思っただろ……。まあ、でも安心しろ。たとえ月の足に大量の水虫があったとしても、俺が月のことを好きだという気持ちが揺らぐことはないから。だから、隠さなくてもいいんだぞ?」
「あるのが前提みたいな感じ、やめてもらえます? さっきも言った通り、全くないので……。逆に瑠璃さんの足はどうなんですか?」
「ひとつもないな」
「そうですか。それはよかったです…………じゃなくて! そもそも水虫の話をしようとしたわけではないんですよ。なんか周りがオレンジ色になってきてないですか?」
「ん? ……そう言われてみれば、そんな気がすることもないことはない可能性はあるかもしれない」
「どっちなんです!?」
「勢いで言ったから俺も知らん」
「自分でもわからないような発言をしないでくださいよ」
「冗談はこの辺にしといて、確かに日が暮れてきているような気がする」
「やっぱりですか……」
「まさかこのダンジョンって夜になるのか?」
「魔神さんが創ったダンジョンではそんなことありませんでしたよね?」
「ああ、あっちは常に昼間だった。……さすがは絶対神が創ったダンジョンだけあって凝っているな」
「私としては日が暮れないほうがいいんですけど」
「俺もどちらかといえばそうだな」
「もう帰ります?」
「なんでだ? レベル上げは夜からが本番だろ」
「だって視界が悪かったら危ないかもしれないですし」
「そんなことはない」
「ありますよ!!」
「まあ、仕方ない。昔に比べてまだ魔物との戦闘が余裕なわけじゃないし。俺はそのほうが楽しいんだけど……月を危険に晒すのは不本意だ」
「というわけで帰りましょう」
「おう」




