第四話【ステータス】
瑠璃はステータスポイントを割り振っていく。
HPに3。
攻撃に3。
防御力に2。
素早さに2。
宣言通り、バランスのいい振り方だ。
「俺は振り終わったぞ」
「私ももう終わってません」
そう言って月は作業を続ける。
「俺の嫁の文章がおかしい件! …………こんなタイトルの小説をWEBに投稿したら一日でランキング上位までたどり着けそうだよな」
「絶対ブックマークも評価も0で、そのまま埋もれていくと思います」
「う~ん……。じゃあ、Re:無職のありふれた夫婦が、この素晴らしいダンジョンで絶対神との出会いを求めるのは間違っているだろうか~瑠璃ですが、なにか?~」
「人気作品のタイトルを混ぜすぎて、何が伝えたいのかがわからなくなっていますよ。ああいうWEB小説は、いかに短い文章で人の目を引くような要素を入れられるかが、ランキングを駆け上がるために必要なんですから。……けど、面白そうなのは事実です」
「だろ?」
「読みたいとは思わないですけど」
「俺も」
「なら最初から提案しないでください! あ、もうステータスの割り振りが終わりました」
「おぉ。で、どんな感じに振ったんだ?」
「HPが5。防御力が2。素早さが3です」
「…………」
「……? どうしたんです?」
「お前さては自分で魔物を倒す気ないだろ」
「……あ、あはは。次はスキルポイントを使って、何かスキルをおぼえましょう」
「笑って誤魔化しやがった。まあ言質を取らなくても、攻撃と賢さをどっちも上げていないことから、攻撃する気がないのは丸わかりなんだけどな」
「……で、瑠璃さんはなんのスキルをおぼえるんですか?」
「まあいいや、俺が月の分まで倒せばいいだけの話だし。ちなみに月はもう決めたのか?」
「もうちょっと考えたいです……」
二人は周囲を警戒しつつも、無言でスキル一覧を眺めていく。
およそ一分後。
「私は決まりました」
「俺はまだだ」
「前回にはなかったようなスキルも増えていたのでいろいろと悩みましたけど、いったん【HPアップ】を上げました」
「あー、なるほど。昔の俺の真似か」
「違う……とは言えませんが、一応私自身の考えです。まずは安全を確保することにしたんですよ」
「まあ、HPってあったら安心だもんな。俺は安全を確保しようにも、魔物を倒さないといけないからできないんだよ。……よし、決めた!」
「どれですか?」
「攻撃力アップ」
「……いや、前回と全く一緒ですね!?」
「とはいっても、とりあえずだけど」
「?」
「せっかくだし、今回はステータスが安定してきたら技をおぼえてみるつもりだ」
「なるほど……いいですね。じゃあ私も、今後何かを習得していきたいと思います」
「俺としては回復魔法をおぼえてもらいたいんだがな……」
「それだとMPも上げないといけないんですよね……。けど、考えておきます」
「おう」
「……さて、ステータスとスキルの割り振りも終わりましたし、道なりに進んでいきましょう」
「えぇ…………。せめてもうちょっと戦わないか? 今ならさっきよりも楽に猫を倒せそうだし、せめてレベルが5くらいになるまで……な?」
「いい加減にしてください。水場の確保が先です」
「俺もそのつもりだったんだけど。戦いたい、レベル上げをしたい、っていう欲が戻ってきた」
「それでも、とりあえずは道を進んだほうがいいに決まってます。もしかすると、猫よりも戦いがいのある敵がいるかもしれませんし」
「なるほど。よし、進むか」
「簡単ですね」
「うるせぇ」
瑠璃と月は先ほど進んでいた方向に進み始めた。
地面の至るところが盛り上がっていて先が見通せないため、道がどこまで続いているのかはわからない。
どうやら魔物は道の近くにはいないらしく、また、この辺りの魔物は基本的に穏やかな性格のため、道の上を歩いている間は無駄な戦闘をしなくてもいいようだ。
瑠璃にとっては、退屈でしかないのだが。
「月」
「なんですか?」
「呼んだだけ」
「ふ~ん」
「なんだよ、そのふ~んって」
「いえ、なんでもありません。…………あ、瑠璃さん!」
「なんだ?」
「呼んだだけです」
「ふ~ん」
「なんですか、ふ~んって」
「月の真似をしてみた」
「私も瑠璃さんの真似をしてみました」
「やっぱりそうかぁ。あははー……って、なんの時間だよ!」
「瑠璃さんが始めたんじゃないですか」
「おーん」




