第三話【猫】
「月! その猫を止めろー!」と瑠璃。
すると、彼女は一目散に道から外れて草原の上を逃げ始めた。
猫はそんな月を追っていく。
「ちょっと!! こないでください」
「にゃぁぁぁ」
「おい、逃げたら倒せないだろ」
「レベルが低いんですから逃げるに決まってるでしょ! 怖いんですよ!」
「にゃぁー!」
「ひゃぁぁぁ。近づいてきますぅ」
猫のほうが速いらしく、だんだん月との距離が縮まっていく。
このなかで一番足が速い瑠璃もそれは同じで、少しずつ猫に近づいていく。
「そんなに走ったら体力の無駄だぞ?」
「瑠璃さん! 早くきてくださいよ」
「今、全力で走ってる!」
「にゃー!」
「この猫、猫なのに全然かわいくないですぅ!」
「にゃぁぁぁ」
「にゃぁぁぁ」
「はぁ……はぁ……。猫の真似をしないでください!」
「吾輩は猫である!」
「うるさいですよっ!?」
ギリギリ猫が月へと追いつく前に相手の真後ろへとたどり着いた瑠璃は、容赦なく猫を蹴り飛ばした。
「にゃっ!?」
相手は斜め横へと飛んでいき、近くにあった岩に衝突。
「月、もう逃げなくていいぞ」
そう言いながらも顔面に追撃を加えていく。
少しして。
地道ではあったが、猫を絶命させることに成功した。
大量の血を流して倒れている姿はグロいが、瑠璃も月もその光景は見慣れていた。
なんせ魔神が創ったダンジョンで数えきれないほどの魔物を殺しているのだから。
もはや血が飲み水だと思えるほど慣れ親しんでいる。
そんな二人が今更猫の死体を見たところで、罪悪感を感じるはずがなかった。
「レベルが上がりましたね」
「そうだな」
「全く……。こんなに苦労するなら、素直にスライムを倒せばよかったのに」
「さすがの俺でも手足が痛くなってきた」
「そう言いながら、新しい魔物を探すのはやめてください」
「あ、気づいた?」
「わかりますよ。何年一緒にいると思っているんですか」
瑠璃はメニュー画面を開いていく。
「とりあえずお互いステータスとスキルのポイントを割り振ろう」
「ですね。このままじゃ魔物を倒すのにも一苦労ですから」
どうやらシステムは、前回と全く同じようだ。
レベルがひとつ上がるたびに、ステータスポイントが10。
そしてスキルポイントが1つもらえるらしい。
「う~ん。今回はどんな鍛え方にしようかな……」
「すごく悩みます……」
「とりあえず月は幸運に極振りだろ?」
「なんでですかっ!? 幸運なんて一番必要ありませんよ!」
「だが今回のダンジョンにおいては、案外重要になってくるかもしれないぞ?」
「そう思うなら瑠璃さんがやったらいいじゃないですか」
「絶対嫌だ」
「……やっぱり」
「俺はそうだな……しばらくはHP、攻撃、防御力、素早さの四つをバランスよく上げていくか」
「じゃあ、私もそうします」
「…………いや、ちょっと待ってくれ。月は魔法少女を目指してみないか?」
「唐突に何を言っているんです?」
「要するにMPと賢さを重点的に鍛えて、魔法少女になって欲しい」
「別に魔法使いになるのは構わないんですけど、少女は無理だと思います」
「いや、まだギリいけるだろ。月かわいいし」
「……ありがとうございます! でも、年齢的に厳しいですって」
「はぁ……。残念だけど仕方ない。なら代わりに俺が魔法少女になってみるか!」
「うん、無理ですね」
「なんでだよ!」
「性別的に不可能なので諦めてください。年齢も私より上ですし」
「…………現実は厳しいなぁ。さすがに今回ばかりは、四次元の思考回路を駆使してもどうにもならなそうだ」
「というか、どうしてそこまで魔法少女にこだわるんですか?」
「ノリ」
「海苔?」
「白米に合うやつではない。ただふざけて言ってるだけ」
「はい?」
「だから別に魔法少女にこだわっているわけではない」
「なんですか、それ」
「まあとにかく、月は自分の好きなように上げてくれ」
「…………はい」




