第十一話【神界】
二人は神秘的な部屋のなかに転移した。
円形になっており、窓が一切ない。
壁は真っ白で、至るところに金色の柱が立っている。
目の前には、白い顎髭を生やした一人のおじいさんの姿。
真っ白のローブを着ていて、十数年前に瑠璃が見た時と全く変わっていない。
「よう神様」
瑠璃が手を挙げて話しかけた。
「久しぶりじゃの……。そっちの子は初めましてじゃな」
「あの……あなたが地球の神様なんですか?」
「そうじゃ」
「なんというか、予想通りの見た目でした」
「そうかの?」
「はい」
「…………さて、さっそくじゃが、絶対神様の元へと繋がっている入り口に案内しよう。わしの後ろをついてくるように」
「了解」
「わかりました」
神様が真っ白な扉を開けて外に出ると、そこにはすごい光景が広がっていた。
白くて細い道が続いており、先には芝の生えた円形の床がある。
どうやらいろんなところに白い道が張り巡らされていて、それぞれが建物や、広い円形の床などに繋がっているようだ。
神様の後ろを、月、瑠璃の順番で歩いていく。
「ひっ、瑠璃さん。下……下を見てください」
「ん? ……おぉ、すげぇ」
通路の下には、淡いピンクが混じったほぼ白色の膜が存在していた。
まるで距離感が掴めない。
よく見ると下だけでなく、神界全てがその膜に覆われているようだ。
「道が細いですし、めちゃくちゃ怖くないですか?」
「なぁ、神様。ここから落ちたらどうなるんだ?」と瑠璃。
「わからん……。なんせ落ちたことがないからのぉ」
「じゃあ、ちょっと試しに落ちてみてくれ。気になって仕方がない」
「無茶を言うでない! お主が落ちればよかろう!」
「昔の俺ならすぐに飛び降りていただろうけど……今はあの桁外れのステータスもないしな」
「一応言っておくが、滑って落ちてもわしは助けんからの?」
「おう」
「……瑠璃さん。絶対に押さないでくださいよ?」
月が振り向くことなく言った。
「……」
「あれっ、聞こえました?」
「それは押せというフリか?」
「違いますっ! 本当にやめてください」
「冗談だって。月を落とすくらいなら、俺が落ちるから」
「それもやめてください」
神様は芝の床へと足を踏み入れ、更に別の細い道を進んでいく。
「周囲に見える建物には、別の神様が住んでいるのか?」
「そうじゃ」
最後尾の瑠璃の質問に、神様が即答した。
「なら、遠くに見えるピンク色のハートの家にはどんな神様が?」
「あそこは、太陽系惑星内全ての愛を統轄している女神様の家じゃ」
「へぇ、愛の女神か」
「家に案内してやらんこともないぞ。愛の女神様は本当に美しいからのぉ。おそらく人間の男が見たら一瞬で心を奪われるじゃろう」
「だ、だめですぅ! 早く絶対神さんのダンジョンに案内してください!」
月が大声で否定した。
「なんじゃ、男を取られるのが怖いのか?」
「当たり前です。瑠璃さんは誰にも渡しませんからね!」
「安心しろ、俺がお前以外に惚れることはない。…………おいクソジジィ! 月を不安にさせるんじゃねぇ」
「ほいほい。すまんかったのぉ」
「……でも、愛を統轄しているということは、俺の月に対する好きっていう気持ちもその女神が管理しているのか?」
「まあ簡単に言えばそんなところじゃ」
「どうにも信じられないな……。仮に本当だったとしても、俺だけは例外だろ。この愛の強さが誰かに管理できるはずがない」
そう言って瑠璃は、前を歩いている月に抱きついた。
「きゃっ!? ちょっと……いきなりそんなことされたらびっくりするじゃないですか! お詫びとして、もっと強くぎゅーってしてください」
「言われなくても……」
「ふふっ……。抱きしめられると、すごく幸せな気分になれます」
「はぁ……。いちゃいちゃするなら、わしのおらんところでやってくれんかのぉ?」
とその時。
「あら地球の神様、ごきげんよう」
横の道から歩いてきた一人の女性が、微笑みながら話しかけてきた。
きらきらと光る金髪ロングヘアーで、整った目鼻立ち。
透き通るような白い肌で、ピンクのシャンパンドレスを着ている。
胸が爆発しそうなくらい大きい反面、ウエストは恐ろしく細い。
そう、彼女が愛の女神だった。
彼女の姿を見た地球の神様は、ぎこちない笑みを浮かべて口を開く。
「えっと、あのぉ……。お久しぶりでございます。女神様。今日もその、お美しいですね」
「ふふっ、ありがと」
そう言って女神が微笑むと、神様の目が漫画のようにハートの形になった。
「で、そちらのお二人はどなた? 見ない顔だけれど」
「地球に住んでいる人間です。いろいろと事情があって、絶対神様の住処へと案内しているのです」
「へぇ。なら私は邪魔しないほうがよさそうね。……じゃあ、また」
女神は軽く手を振って、瑠璃たちが歩いてきたほうの道を下りていく。
「そ、そんなぁ……」
地球の神様は名残惜しそうにその後ろ姿を見つめる。
「なぁ、さっきのが愛の女神か?」
「そうじゃが……」
「あまり失礼なことは言いたくないんだが……どう見ても月のほうがかわいいぞ? 差が明白すぎるだろ」
「お主、何を言っておる。差が明白なのは反対じゃろう?」
「ま、感性は人それぞれってことか。お前にとっては女神のほうが上なんだろうけど、俺からすると月が圧勝だ。さぁ、結論は出たしさっさと進むぞ」
「…………そうじゃの」
あまり納得していないような表情のまま、神様は上に向かって歩き出した。
「瑠璃さん。ありがとうございます」と頬を赤く染めて月。
「礼を言われるほどのことはしていない。本音を言っただけだからな」
「私も地球の神様より瑠璃さんのほうがかっこよくて大好きです!」
「こんな老人と比べられても全く嬉しくねぇ!」
「ふふっ……」
「お主ら聞こえておるぞ?」
それからかなりの距離を進み、瑠璃たちは神界の頂上へとたどり着いた。
円形の床の中心にクリスタルが浮いている。
隣には木の看板が立っており、大きな文字で【ぜったいしんへのみち!】と書かれている。
「なんだこれ。馬鹿にしてんだろ」
瑠璃がつぶやいた。
「あの御方はいろいろときまぐれじゃからのぉ」
「へぇ」
「で、このクリスタルに触れれば絶対神様が創ったダンジョンにワープできるという噂じゃ……。だが、その先の安全は保障せんぞ? わしはクリスタルの転移先がどうなっているのか一切知らないし、絶対神様に会ったこともないんじゃ」
「大丈夫だ。俺は月と一緒ならどんな困難だろうと乗り越えていける。……ここまで案内してくれてありがとう」
「構わん。お主は地球を元に戻してくれた恩人じゃからの」
「そうか」
「……ふぅ、これでやっと面倒くさいやつとの関係を断ち切れそうじゃ」
「本音が漏れているぞ?」
「わざと漏らしたんじゃ……。怒るか?」
「ははっ、俺はお前にいろいろと感謝しているからな。礼を言うことはあっても、不快に思うことはない」
「そうか。……なら、わしはそろそろ家に戻るぞ?」
「おう」
地球の神様はそのまま踵を返して歩き出した。
その後ろ姿を十秒ほど見つめたあとで、瑠璃が口を開く。
「……行こう、月」
「はい」
「神様ですら見たことがないという絶対神に会いに行って、適当に雑談したあと、再びこの神界に戻ってこようぜ」
「そして、ここに住むのもいいかもしれませんね。途中でいろんなお店とか、施設がありましたし。結構楽しそうです」
「実は俺もそれを考えていたんだ。住む家は地球の神様に創ってもらえばいいだろ」
「ふふっ、瑠璃さんらしいです」
「……さぁ、出発だ」
「はい」
クリスタルに触れた瞬間、二人の姿がその場から消えた。
Chapter 6【AFTER STORY】~ 終 ~
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