第十話【第49階層】
第49階層。
「えっ……」
つい先ほど48階層の地面を掘ってここに下りてきた瑠璃は、床の色を見て眉間にしわを寄せた。
「床だけがクリスタル?」
周りを見てみると、視界に入る限り全ての床がクリスタルのような色をしていた。
どうやら天井や壁は普通の石造りらしい。
「今は多分40階層を少し過ぎたくらいだと思うけど、ここが中ボスのいる階層って可能性はあるな」
実はこの床、ファーストステージ最下層のラスボスがいた部屋の素材と同じ物である。
「さて、まずは床が壊せるかどうかの確認だ。ダンジョンのなかを迷うことなく次の階層へ進めるなら、それに越したことはないからな」
そう言って全力で床を殴った瞬間、瑠璃は拳にものすごい衝撃と痛みを感じた。
「いってぇ!? なんだこの床。硬すぎだろ」
破壊どころか傷ひとつ入っていない。
人外の瑠璃ですら壊すことができなかった床。
この床の素材は、いわゆるオリハルコンと呼ばれている希少な鉱物で、滅多にお目にかかることができない代物である。
「ふぅーふぅー」
息で拳を冷やしていく瑠璃。
自身の力が強かっただけに、返ってくる反動は相当なものだった。
瑠璃の拳から血が垂れていく。
「これは……さすがに無理だな。普通に攻略することにしよう」
そう言って歩き出した瑠璃は、十秒と経たずに短い通路の行き止まりまでたどり着き、左右の分かれ道に遭遇する。
この時、もうすでに彼の拳の血は止まっていた。
「まだ傷口は癒えていないけど、そんなの関係ない。むしろ痛みに慣れるための訓練になるだろ」
瑠璃は笑いながら、血の付いた拳で正面の壁を殴る。
壁は石造りのため彼にしてみれば脆い。
凄まじい音とともに穴が空いた。
壁の向こうにも通路があり、やはり床はオリハルコンでできているようだ。
「よし、テンポよく行こう」
瑠璃はひたすら壁を壊して真っすぐ進んでいく。
その様子はまるで戦車のようだった。
しばらくして。
瑠璃は階段のある部屋にたどり着いていた。
真っすぐ進み続けても何もなかったため、結局いろいろと迷路を探索することになったのだが、ようやく見つけることができていた。
「正直自分がどの辺にいるのか全くわからないけど、階段を発見できたし結果オーライだ」
とそこで彼の背後から、紫色のスケルトンが現れた。
持っている大きな剣で容赦なく瑠璃に斬りかかる。
「こんにちは、骸骨くん。そしてさようなら」
振り返りざまに相手の首にハイキックをくらわす瑠璃。
あまりの威力と速度により、首元の骨だけが粉々になって飛んでいった。
時間差で、綺麗なままの頭と胴体が床へと転げ落ちる。
「じゃあ次の階層に進むか。……俺の勘では、次が最後のような気がする」
そうつぶやきつつ、瑠璃が灰色の階段に足を踏み入れた瞬間。
突然、瑠璃の姿がその場から消えた。




