第六話【デスティニーランド】
デスティニーランドへと到着した瑠璃たちは、門をくぐってなかへと入っていく。
平日の午前中なのにもかかわらず、すごい人混みだ。
「これ、かわいいな」
手に持っている入場券を見つめながら、瑠璃がつぶやいた。
「ですよね。キャラクターがランダムで印刷されているみたいです」
「まあどのキャラよりも月の顔のほうがかわいいけど」
「……ふふっ。それはどうも」
「おい、瑠璃。どうするんだ? 各自バラバラで行動するか?」
父親がしかめっ面で問いかけた。
そのあまりの迫力に、近くにいた子どもが急いで親の元へと逃げていく。
「確かに大人数だと身動きがとれなさそうだな。また夕方くらいにスマホで連絡を取り合おう」
「了解! ……じゃあ、久しぶりに二人でデートでもするか」
「そうですね」
母親が微笑んで返答した。
「いつぶりだろうな」
「もう長いことなかった気がします」
瑠璃の両親は、そんなやり取りをしながら手を繋いで歩いていく。
「ウチらも行こっか?」
「ああ」
「お義母さんたちみたいに手繋ぐ?」
「……あ、あとからな」
「ふふっ、恥ずかしがり屋なんだから」
「うるさい。兄さんたちの前でやめてくれ」
吹雪と紫苑も仲よさそうに去っていく。
「さて……祈。どこか遊んでみたいアトラクションはあるか?」
瑠璃が尋ねた。
「う~ん。お化け屋敷みたいなところがあれば行きたい」
「あ、それなら【ホラー・オブ・テラー】が有名ですから、そこに向かいましょう」
「決まりだ」
瑠璃と月と祈は行動を開始した。
とにかくいろんなアトラクションを回っていく。
しかし、ひとつ乗る度に行列へ並ばないといけないため、あまりたくさん遊ぶことはできない。
途中で月が優先券を購入しようかと提案したのだが、会話もアトラクションだという瑠璃の意見により却下された。
この家族の会話が尽きることは基本的にないため、待ち時間が苦痛でもなんでもなかったのはさすがだろう。
もっとも、喋る割合は瑠璃と月がほとんどなのだが。
◆ ◇ ◆
お昼時。
瑠璃たちは南の島にありそうな雰囲気のお店へと入り、各自食べたいものを注文した。
今現在、机の上にはハンバーグだけが届いている。
「まだ俺のしかきてないけど、先に食べてもいいか?」
「えぇー、ずるいです」
「お父さんずるいよ。僕たちの料理がくるまで待って」
「おう、そうか。じゃあいただきます」
瑠璃はナイフでハンバーグを一口サイズに切り、フォークを使って口に運んだ。
「待つ気がないなら最初から聞かないでください」と呆れ顔の月。
彼は何度か咀嚼をし、満足したように頷く。
「すげぇ。南の島っぽいお店の料理だけあって、口に入れた瞬間、無人島の情景が頭に浮かんできたぞ」
「なんですか、その感想」
「今目の前にヤシの木が見えるもんな」
「ちょっと一口ください……。にわかには信じられないので」
「おう。マジで食べたらわかるから」
瑠璃は一口サイズのハンバーグを月の口元へと運んでいく。
だがその途中でUターンさせ、結局自分で食べた。
「……」
月はジト目で彼を見つめる。
「あぁー。ヤシの木だけじゃなくて、波の音まで聞こえてくる」
「……」
「どうやら俺は今、白い砂浜の上に立っているらしい」
「……」
「おい、そんな目で見るなって……。わかった、ちゃんとあげるから」
「今度いじわるしたら怒りますからね?」
「了解。ふぅ……ふぅ……。はい、あーん」
「あ~んっ」
月はハンバーグを口で受け取り、目を閉じて味わっていく。
「…………あぁー! 確かに南の島が見えますね」
「いや、嘘つけ」
「はい?」
「俺は普通にデミグラスソースの味がするだけだが?」
「いや、瑠璃さんが最初に無人島がどうのって言い出したんじゃないですか! 私はそれに乗っただけですぅ~」
「ふふっ」
祈が口元に手を当てて、女の子のように笑った。
「ん? どうした?」
「やっぱりお父さんとお母さんって、いつも仲いいよね」
「だろ?」
「でしょ?」




