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第二十六話【エピローグ・ニ】

 先に沈黙を破ったのは瑠璃だった。


 月の肩を掴みながら身体を離して口を開く。

 

「おい、地球の神様。聞こえているか?」


「…………ん?」


『なんじゃ?』


 月が首を傾げるのと同時に、どこからともなくおじいさんの声が聞こえてきた。

 

「まだ願いがひとつ残っているだろ。叶えてくれ」


『嫌な予感しかしないが、まあいいじゃろう。で、お主は何を望む」


「とりあえず叶えることのできる願いを二つに増やしたい」


『嫌じゃ』


 地球の神様は即答した。

 まるで瑠璃のお願いごとを、あらかじめ予想していたかのようなスピードだ。


「…………はぁ。俺が頑張ったおかげでダンジョンとかレベルシステムがなくなって昔と同じ平和な地球に戻ったのになぁ……。絶対神に気に入られている俺がちょっとお願いすれば地球くらい一瞬で消滅しちゃいそうだなぁ……」


『ぬぅぅぅ……。とんでもないやつとかかわってしもうたのぉ』


「安心しろ、もう今後増やすことはない」


『それは本当か?』


「約束しよう」


『うむ。ならそれを条件として、今回だけ二つに増やそう』


「よし、さんきゅー! ならさっそく最初のお願いをするか」


『言っておくがわしにもできることとできないことがあるからの? 魔神を殺せだの、地球を崩壊させろだの、そういうのは言うまでもなく不可能じゃ』


「あのー。なんかプロポーズするみたいな流れじゃなかったですか? 私の気のせいですかね?」


 そんな月の言葉を無視して瑠璃は言う。


「専用の異空間がほしい」


『……ん? どういうことじゃ?』


「俺の両親が住んでいるマンションの近くから出入りできて、小さい庭と一軒家があるような感じかな。そんなに大きくなくてもいいから、水道とか電気は通しておいてくれ」


『ダンジョンくらいのサイズになったらさすがに無理じゃが、それくらいならまぁできなくはない。……だが、その程度なら自分で建てたらいいじゃろう?』


「いや、正直今無一文だし。……もちろん今後は働くつもりだけど、今すぐ家が欲しいんだよ。異空間だったら固定資産税とか浮きそうだから、いいと思わないか?」


『なるほどのぉ……。まあこれでひとつ消費してくれるならよいわ。創ってくるから少しの間待っていてくれ』


「あ、追加として、小さい庭のなかに露天風呂も頼む。温かいお湯が無限に沸き続ける感じで」


『それは最後のお願いも使うということかの?』


「いや違う。ひとつ目のお願いの付録(ふろく)みたいな感じだ」


『それは欲張りすぎじゃろ……』


「神のくせにそんなケチくさいこと言うなよ。ファミレスのお子様ランチにだって、小さいゼリーとかついてるぞ?」


『……はぁ、もう好きにせい』


 神様が呆れたようにつぶやいた。

 

「お前優しいな」


『で、最後の願いは何に使うんじゃ?』


「んー……。保留」


『……わしとしては早くお主とのかかわりを絶ちたいんじゃが』


「また決まったら呼ぶことにする」


『……了解じゃ』


「あ、話し終わりましたか?」


 月が尋ねてきた。

 

「おう、月。これからすぐに俺たちの家が手に入るぞ」


「それは嬉しいんですけど……さっきプロポーズするみたいな流れじゃなかったです?」


「……お、おーん」


「なんですか? その反応」


「まああれだ。とりあえず異空間ができるまで待とうぜ」


「あっ、まさか! 普段あれだけ私のことが好きだと言ってくれているのに、いざプロポーズするとなったらビビってる感じですか?」


「は? そんなことあるわけないだろ。俺は言いたい時に言いたいことを言う人間だ」


「つまり、私と結婚する気はないと?」


「そ、そうは言ってない」


「じゃあ怖気(おじけ)づいているということでいいですね?」


「俺が怖いのは、大切な人の死と父さんの顔だけだ」


「……じゃあちゃんと言葉にしてもらっていいですか?」


「おーん!」


「そのふざけた返答は禁止です」


「ま、とにかくちょっと待ってくれ。そういうのって雰囲気とかいろいろとあるじゃん。だからそんなに焦る必要はないと思うぞ?」


「逃げているような気がしなくもありませんが、確かに一理ありますね」


『ふぅ、久しぶりにいい仕事をしたわい。最高の異空間が出来上がったぞ~』


 いきなりおじいさんの声が響いた。

 

「おぉ、意外と早かったな」


『お主の気を損ねないために急いだんじゃ!』


「さすがは地球の神様。世の渡り方をわかっている」


『それで、出入り口じゃが……お主の両親が住んでいるマンションの部屋があるじゃろ?』


「ああ」


『そこの鍵穴にこの鍵を使用したあとで、ドアを開けるんじゃ。そうするとお前たち専用の異空間に行ける』


 その言葉と同時に瑠璃の頭上付近に銀色の鍵が二つ現れ、ゆっくりと落下し始めた。

 彼はそれを手に取り、

 

「なるほど。本当にいい仕事をしてくれたな。予想以上だ」


『そう言ってもらえたらありがたい。わしの最高傑作じゃ。……で、鍵は二つでよかったかの?』


「いや、子どもができたら必要になりそうだし。……月、どのくらい必要だと思う?」


「えーっとそうですね……。全部で三つくらいあれば大丈夫じゃないですか?」


「というわけで、あとひとつ欲しいんだが」


『ほれ』

 

 再び空中に鍵が現れた。


 それを受け取りつつ、瑠璃はお礼を言う。

 

「さんきゅー」


『ちなみに注意点じゃが、異空間のなかに入ったあとで鍵を閉め忘れたりしたら、うっかり別の人間が入ってきてもおかしくないから注意しとくんじゃぞ?』


「あー、なるほどな。確かに親とか家族以外に入られたらムカついて殺しそうだ。気をつけよう」


『……もう思考回路が魔神じゃ!』


「俺の思考回路は四次元だ!」


『さて、やり取りもこのくらいでいいじゃろう。……元気でのぉ』


「おう」


『最後の願いを叶えたくなったらまた呼んでくれ』


「わかった。……いろいろとわがままを聞いてくれてありがとな」


『ほいほい』


 その言葉を最後に、神様の言葉は聞こえなくなった。


 月が彼の服をつまみながら言う。


「瑠璃さん、早く行きましょう! 私たちの家がどんな感じなのか興味があります」


「そうだな。俺も気になって仕方がない。ここからあのマンションまでは……まあ30分くらいあったら到着するだろ」


「そうですね」


  ◆ ◇ ◆


 マンションの自室前にて。


 瑠璃は鍵を手に持ってつぶやく。


「ようし開けるぞ。準備はいいか?」


「はい」


「父さんと母さんにも見せたいけど、とりあえず俺たちが一通り確認したあとでいいだろ」


 彼は鍵穴に鍵を差し込み、右方向に回した。

 小さくガチャッという音が聞こえる。

 

 それからドアノブを捻り、扉を開けると……。

 

「おぉ!」


「うわぁ~!」


 瑠璃が驚いたように口を開け、月は一瞬にして笑顔を咲かせた。



 明るい薄緑色の芝。

 

 右側に湯気の立っている露天風呂。


 左側にはサービスで用意されたであろう木造りのカフェテラスがあった。

 なんだかんだ言いつつ、途中で創るのが楽しくなってきたに違いない。


 そして正面に、白と茶の二色で造られた一軒家が建っている。

 パッと見一階建ての平屋だが、その分面積が広い。


「あの地球の神様、やるな」


「これ……めちゃくちゃすごいですよ!」


「家のなかはどうなっているんだろう」


「見た感じかなり大きいので、部屋が多そうです」


「さっそく入ってみるか、とその前に……月」


「はい?」


「け、け……け」


「け?」


 彼女は首を傾げる。

 

「にわとりの鳴き声は、こけこっこーだったっけ?」


「はい?」


「けっこ……。俺たちって、ダンジョンのなかで魔物の血痕(けっこん)を何回も見たよな」


「そうですね? ……あ」


 そこで月は何かを理解したらしい。

 

結構(けっこう)すごいよな、この異空間」


「そうですね」


「……ふぅ」


「あのぉ、瑠璃さん」


「なんだ?」


「ゆっくりでいいですよ」


「お、おう。ってなんの話だよ」


「なんでもありません」


「まあとにかく、俺と……」


「私が瑠璃さんと?」


「その、えぇっと……あれだ」


「……」


 瑠璃は真っ赤な顔で彼女を見つめて、拳を握りしめた。

 

 それからゆっくりと口を開く。

 


「鳳蝶月さん。一生守ると誓うから、俺と結婚してください!」



 数秒の間が空いたあと、月は嬉しそうに微笑んで彼に抱きついた。


 

「こちらこそ、よろしくお願いします!」



「ま、まあ。結果はわかっていたけどな」


「いや、めちゃくちゃ緊張してませんでした?」


「そんなことはない。俺は昔から自分の思っていることは正直に言える人間だ」


「ふふっ……そうですね」


「…………それよりも、ひとつ心配事がある」


「なんです?」


「俺たちは今後どこかで結婚式を挙げるわけだよな?」


「まあ、そうしていただけたら嬉しいですね」


「問題はそのあとだ。ここって一応異空間だし、こんなところで暮らしていたらコウノトリが入ってこられないような気がするんだけど」


「…………」


「どうする? 赤ちゃんが届けられるまでは、俺の両親たちと一緒に暮らすか?」



「……今夜。……わ、私が教えるので、大丈夫ですよ」



「ん? 何をだ?」


「とりあえず家のなかを見にいきましょう!」


 月は真っ赤な顔を隠すようにして歩き出した。

 

「? そうだな」



 Chapter 5【FINAL STAGE】~ 終 ~





 これにて【ダンジョンでただひたすらレベルを上げ続ける少年】の本編は完結となります。



 ここまでたどり着くことができたのは、応援してくださった読者のみなさまのおかげです。

 たくさんの方からブックマークや評価、感想をいただけたおかげで、ジャンル別の日間一位だけに留まらず、総合日間ランキングで一位を取れたこともありました。


 本当に、感謝の気持ちでいっぱいです!

 (>ω<)



 今後は書籍化作業のほうに力を入れつつ、今後の瑠璃たちの様子や、未だ回収できていない絶対神に会いに行くという伏線を拾うために、アフターストーリーを投稿していこうと思っております。



 来年の2月に発売予定の全ページ大幅改稿&ヒロインの過去やその他細かいエピソード、ショートストーリーなどを追加した書籍版とアフターストーリー、合わせてよろしくお願いいたします。




では改めまして、最後まで読んでいただき本当にありがとうございました!


ぜひ下の【☆☆☆☆☆】から評価をしていただけると幸いです!!

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― 新着の感想 ―
ふーー!
[一言] 結構長いのにずっと同じ調子で駆け抜けて終わったのがすごい シンプルに読みやすかった。
[一言] あっ⤴︎ はぁー⤵︎ ︎楽しかったーHappyENDかな! ありがとうございましたヾ(⌒(ノ-ω-)ノ
感想一覧
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