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第二十一話【最終決戦・七】

「いやー、さすがにやばかったな」


「君……なんで動いてんの? 心臓は確かに止めたはずだけど」


 魔神が首を傾げて尋ねた。

 

「魔神のくせに三次元の思考回路してんじゃねぇよ。心臓を止めた程度で心臓が止まるはずないだろ」


「相変わらず何を言っているのかわかりませんよ!?」


 瑠璃は月に向かってサムズアップをしつつ、返答する。

 

「心臓が停止した感覚があったから、胸に力を入れて無理やり始動させてみた」


「もう生物とは思えません。……でも、死なないでいてくれて本当にありがとうございます。ものすごく安心しました」


「俺が死ぬわけないだろ」


「ふふっ、ですね」


「おい魔神。というわけだから、続きをしようぜ」


「あはは! 君本当にすごいね。もしかすると下等な神よりも強いんじゃない?」


 魔神が笑顔で言った。

 

「当たり前だ。俺は最強だからな」


「じゃあ始めよう。自称最強くん」


 瑠璃と魔神は再び殴り合いを始めた。

 

 月は遠くへと移動し、真剣な表情でそれを見つめる。

 自分の入る余地がないというのもあるが、純粋に瑠璃の邪魔をしたくなかった。


 もちろん大切な彼が危なくなれば助けに入るつもりだが、今はその時ではない。

 ゆえに距離を開けて彼らの戦いを見守ることにしたのだ。




 彼女の目に映るのは【壮絶(そうぜつ)】そのもの。



 

 瑠璃から放出されている水色のオーラのおかげで二人の姿はギリギリ追えるものの、拳の動きが全く見えない。


 すさまじい破裂音だけが聞こえてくる。

 

「瑠璃さん……頑張ってください」


 月は両手を合わせて心配そうにつぶやいた。

 

  ◆ ◇ ◆ 

  

「わお、すごいよ。君また強くなってる」


「お前が創ったスキルのおかげでな」


「あはは、じゃあ創っておいてよかったよ。てい!」


 魔神の放ったアッパーが顎に直撃し、瑠璃は空中に浮いた。

 すぐさま追撃してくる魔神の姿を捉えつつ、彼は口を開く。


「お前こそ、強さの底が見えねぇ」


「だって魔神だもん」


「そればっかりだ……な!!」


 瑠璃の右フックが相手の頬に命中した。

 

「痛いよ」


「ならもっと痛そうにしろ」


「ふふ、だって全然痛くないんだもん」


「……やっぱりか」


「君のほうは痛いんでしょ?」


「安心しろ。俺も全然痛くねぇ」


「さすがにそんなボロボロの身体で言うのは無理があるよ?」


「うるせぇ」


 ひたすら殴って、殴り返す。

 


 特別な技術など何も存在しない、あくまで純粋な【力】と【力】のぶつかり合い。



 人類最強の男と魔神は、子どもでもできるそんな単純なことを真剣に行っていた。

 

 瑠璃は決して特別じゃない。

 

 神のように最初から強者だったわけではなく、体格に恵まれていない代わりに戦闘センスが高かっただけの普通の男の子だった。


 

 しかし彼は誰よりも努力した。


 

 どれだけ満身創痍になろうとも、ひたすら魔物を倒して食らい、レベルを上げ続けた。

 

 だから今、こうして魔神と戦うことができている。

 

「まだまだぁ!!」


 瑠璃はだんだん、自分が殴っているのか、殴られているのかわからなくなってきていた。

 

 上下左右の平衡感覚も曖昧だ。

 

 身体はとっくの昔に限界を迎えている。

 

 それでも相手を攻撃し続ける。

 

「隙だらけだよ?」



 目元を殴られた瞬間、瑠璃の頭のなかに天神ノ峰団の村雨と赤松、夜霧の顔が浮かんできた。

 


「なんであいつらの顔が……」



 続けて金髪の空蝉が浮かんでくる。

 

『ファイナルステージに行くなら、気を引き締めていけよ?』



「お前に言われなくてもわかっているっつーの」



 更に巨大な鎧を着たおっさんのにやけ顔も。

 

『頑張ってください! 昔からずっと応援しています』



「おう、ありがとな」


「さっきから何を言っているの?」


 そう言って放たれた魔神の後ろ回し蹴りを受け、瑠璃は後ろに吹き飛ぶ。



 同時に家族の姿が浮かんできた。

 

『……瑠璃』


『お兄ちゃん』


『瑠璃。一応言っておくが、死んだら俺がお前を殺すからな?』

 


「うるせぇ」


 瑠璃は微笑みながらつぶやいた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 走馬灯? やばい?
[一言] 瑠璃は死ぬくらいで死ぬやつじゃ無いんだよ! アイツが死ぬのは月に振られる時くらいだろ。 ...あっ。熱くなってすいません。
[良い点] でた!アニメとかでよく見るやつ!w
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