JK真白ちゃん
貰えないクッキーにぶーぶーと文句を言いながら雑談で適当に暇を潰していく。大人だろうと子供だろうと、大体暇を潰す時の雑談なんてしょうもないものだ。
「しっかしホントにちっさいなお前。ホントに16かぁ?歳もサバ読んでないだろうな」
「よ、読んでないです!!」
「必死になり過ぎてどもるなよ」
そのしょうもない話の内容の中で時折ドキリとするような質問を投げかけられるのが一番心臓に悪い。すみません、サバ読んでます。恐らくは二人が予想しているのとは、逆の方に読んでます……。
「でも、ホント髪の色も瞳も綺麗で羨ましいですね。赤毛の人はとっても珍しいって聞きますし」
「世界で最も美しい髪色の一つなんて言われてるなんてのは、聞いたことあるな」
「えへへ」
世界で最も美しい髪色なんて褒められて、思わず照れる。長くなったのもあるし、美弥子さんの渾身のお手入れのお陰で、癖の強い俺の髪の毛でもするりと指通りの良い最高の髪質に仕上がっている。亡き母からの唯一とも言える贈り物を褒められて、嬉しくない訳もない。
にへらっと笑う俺に、村上教諭と三枝木教諭も釣られて笑う和やかな雰囲気のまま談笑は進んで行くと、やがて授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
「さて、授業も終わったところでお開きだな。諸星はなんかあったらすぐに此処に来い。話を聞くでも、休むでも何の問題もないからな」
「分かりました。その時はよろしくお願いします」
同時に、このプチお茶会も終了となり、三枝木教諭がいそいそと空になったグラスを回収して、保健室の流し台で洗い物を始める。村上教諭もお茶菓子のクッキーをささっと手早く片付けている。
話を聞いてても、二人は旧知の仲っぽかったので、恐らく隙を見てはここでこそこそとお茶会を催してると見た。発見したら乱入するとしよう。
「失礼します」
「おっ、ようやく来たな緑川。このお転婆娘を早く回収していけ、病人だとは思えないくらいには元気が有り余ってて大変だったからな」
「……何をしたんだ?真白」
「何もしてないってば!!村上先生も、変な言い方しないで下さい!!」
「身長で散々騒ぎ散らかしただろうが。ほら、さっさと教室に戻った戻った。着替えも忘れるなよ」
まだ道を覚えていない的な意味でも、ASDの症状で一人で廊下を歩けないという点でも必要な迎えに来てくれた千草に、白い目で見られたのを抗議しながら俺は保健室を後にする。
全く、人聞きの悪いことを言う。あるはずの身長が無くなってるのをおかしいと主張しただけだぞ、俺は。
「で?何を騒いだんだ?」
「騒いでないって。ただ、前に測った身長と全然違ったからおかしいって言っただけ」
「何センチだ」
「158㎝」
「……墨亜と視線がほぼ一緒でそれは無いだろう」
「……確かに」
物凄く冷静に返されて、確かにその通りだと納得させられることになった。墨亜ちゃんは小学5年生。あの年頃の子の身長は大きくて150㎝を超えるくらいだろう。
それを考慮して改めて考えると、普段から視線が少々同じくらいな俺が、160㎝に近い身長であるはずもない。
いや、本来はある筈なんだけど、恐らく髪の毛と同じパターンだ。俺の知らぬ間に俺の身体が変化しているのだ。
元より、魔法少女になるためには性別が変化しているので、身長の変化程度ならまだ優しい方にも思える。12㎝も縮んだことだけは許さないが。
「言われてみると、アリウムの時は割と身長が高い方だったな。身長まで変化する変身は珍しいな」
「変身後の身長が高くても意味ないから。美弥子さんに身長を伸ばす食べ物出してもらうように言わないと」
「アーモンドなんかが沢山含んでるらしいぞ。ミックスナッツでも食べたらどうだ?」
「ナッツかー。ニキビ増えそうでヤダなー」
千草の影に相変わらず隠れながら、お喋りと教室までのルートを頭に入れるべく辺りをキョロキョロ見回しながら俺達は廊下を進んで行く。
相変わらず、周囲の生徒たちに物珍し気な視線を浴びながら、何気なく保健室の方を振り返ると、管理教諭の村上教諭のフルネームが偶然目に入った。
村上 雫。はて、最近何処かで聞いたような……?気のせいかな。
「あんまり美弥子をわがままで困らせるなよ。ただでさえ言う事を聞かないと嘆いているぞ」
「あんなフリフリのパジャマ。恥ずかしくて着れないもん」
いう事を聞かないんじゃなくて。俺の尊厳の問題なのよ。いやホントに。




