JK真白ちゃん
結局、俺が頼んだのは本日のランチセットという、かなーり下の方にあったセットメニューを注文した。いや、流石に昼食で世界三大料理とか、本格懐石とかは敷居が高すぎる。無理です。
一般人は一般人の食生活で充分なんです……。
「へー、セットメニューってそうなってるんですね」
「下の方にあるから頼んだこと無かったな」
「オムライスかぁ、美味しいよねぇ~」
ランチセットで出て来た、オムライス、オニオンスープ、サラダを食べ進めるが、こちらのメニューを物珍しそうに眺めている三人はそれぞれフランス料理やら、高級牛肉のステーキやらを頂いている。
見た目は普通の女子高生なんだけど、やっぱりこの三人もお嬢様なんだな……。何の違和感もなく、平然とナイフやフォークを使って、優雅に食べ進めている。少々ガサツさが目立つ優妃さんでさえ、テーブルマナーは完璧だ。
「無理して慣れろ、とは言わないさ。私も、この学院に入った時は価値観の違いに悩んだからな」
「ううぅ、一般庶民にはあまりにも敷居が高い……」
元庶民である千草も、最初はこの学校と一般庶民の価値観の違いには悩まされたらしい。格差社会、とはよく聞くけど本物の上流階級の人達はこれが当たり前なのか。
「こういう高級な食材を見ても、何とも思わなくなった辺りは私も大分染まっているのを実感するけどな。まぁ、気負わず好きなものを食べろ。ただでさえ真白は細すぎて心配になる」
「そうそう、細いのは良いかもだけど、ガリガリ一歩手前くらいの腕と足の細さは心配になるわよね」
「肉食うか?美味いぜ」
「私パフェ頼んだんだー、後で一緒に食べよ?」
諸星家の養子でありながら、諸星姓を名乗っていない千草が感慨深げに呟いた後に俺にもっと食べるように物申して来た。
すると、他の皆も細すぎだのなんだのと口々に言って、俺に一口ずつ料理を食べさせたりして来る始末。
断るのもなんだから、黙って食べているけど餌付けをされている気分になる。
「私はひよこじゃないんだけど」
一応漏らした苦言は、聞いてもらえなかった。
「はい、あーん」
「あむっ」
それぞれ概ね食べ終えると、美海ちゃんが頼んでいたと言うパフェが届いた。これがまた普通に大きいビッグパフェと言うやつだ。
主に季節のフルーツを使っているのだが、これがまた美味しい。散々食べさせられたというのに、差し出されるとついつい食べてしまう美味しさ。病みつきになる。
「ひよこじゃないんじゃなかったのか?」
「今はひよこで良い」
溜め息を吐いて、美海ちゃんに餌付けされている俺を見ている千草だがこの際無視をする。その位このパフェは美味しい。元々甘党でフルーツが好きな傾向があったのもあって、無限に食べられる気がする。あーん。
「現金な奴だなぁ。ま、このパフェが美味いのは間違いないけどな。あむっ」
「サイズが大きいのがネックだけど、この人数でならちょうどいいくらいよね。はむっ」
「真白ちゃんは可愛いし、パフェは美味しいし、今日は良いことづくめだわ~」
それぞれがスプーン片手にパフェをひょいひょいとつまんで行く様子は、やはり学内の学食とは思えない。
美弥子さんにもあれやこれやと色々食べさせられているが、甘味ではこれがナンバーワンだと思う。
「……太ってくれるなら良いか。お義母様と美弥子も痩せ過ぎだと心配してたからな」
「ひぐははあえないお?」
「ちゃんと飲み込んでから喋れ。全く、気が抜けるとホントに性格が変わるな、真白は」
「んぐっ、そう?」
小首を傾げながら、パフェに手を付けない千草はただただ目尻を下げて笑うだけで何も答えない。パフェ無くなるぞ?美味しいのに。
「甘いのがあんまり得意じゃないんだよ」
勿体ないなーと思いながら、俺は美海ちゃんから供給されるパフェをパクパクと口にして行く。うーん、美味しい。語彙が溶けている気がするぜ。




