奇妙な噂
大急ぎで走って行く真白ちゃんの背中が視界から消えるまで、私は呆然とその姿を眺めていた
「……」
その姿に、どうしても娘たちの姿を幻視する。娘達、私の産んだ子である紫もそうだけど、朱莉と碧も含めた三人は全員魔法少女と言う隠れた肩書きを持っている
どうしようもなく危険な肩書き、世間から秘匿されながら、世間のためにひいては世界のために人知れず戦う使命を背負うあの子達が、戦いの場に向かう時、私達親はただ帰って来る事を祈って待つことしか出来ない
だから、朱莉が大怪我をしたと聞いた時は魔法庁に猛抗議をしたし、朱莉にも人一倍怒った
大怪我をしたと言う連絡が来た時の朱里の取り乱しようを見ていたから尚のこと
何度となくそろそろ辞めたら良いんじゃない?と言って来た。何度も何度も危険な目に合っている。いつ死んでもおかしくない何てことは誰が見ても明らか
そんなところに我が子を置いておきたくなんてない。誰だって親なら思う
それでも、いつもあの子達は私達親の意見を跳ねのけてまで、魔法少女を続ける事を選ぶ
なんで、どうして。そう思う事も勿論ある。親の強権で無理矢理辞めさせることも出来ない訳ではないだろう
それでも、いつもこう返されてしまう
【この力で、お母さんも、お父さんも、友達も、沢山の人が助けられる。私達がやれば、その何倍もの人が助けられる。それなら、私達はやるよ】
一歩も引かない強い目で、大人たちにも負けない強い意志の籠った言葉でそんなことを言われると、私達は頷いて、背中を押してあげるのが一番なんだと思ってしまう
あの子達の魔法少女としての活動が、あの子達本人の評価につながることは表立ってはほぼ無いと言える。それでもあの子達はやると決めて、ついさっきも、その使命を果たすために紫と碧は私の下から離れて行った
「……きっと、私の思い違いよね」
それと同じタイミングで凛とした鋭い雰囲気に切り替わった真白ちゃんが、同じように私の下から離れて駆けて行った
彼はあくまで男性だ。見た目はともかく、実年齢は26歳を超えている。そうである事なんてことは、娘達から教わった魔法少女の基本的な知識の中には存在しない
ただ、どうしても、その後姿が魔法少女として戦いに赴く時の娘たちの姿と重なってしまうのは何故なんだろう
まさかとあり得ないを何度も繰り返しながら、私は娘たちの無事を祈って一人帰宅を始めた
辺りにある民家やアパートの屋根を蹴って、魔力がある方角を感覚で追いながら全力で疾走する
得ている感覚だけで言えばまだまだ先だが、この感じだと郊外に現れた魔獣だ。ただしぼんやりとしか感じ取れていないため方角は分かるが何とも曖昧に進むしかない
「パッシオを先に連れて来るべきだったかな……!!」
相棒の魔力探知はずば抜けて精度が良い。魔法庁の魔力探知レーダーよりもずっと高性能で、最近は先日の鳥型魔獣の察知が遅れた反省を活かして、空中にもパッシオの感覚を中継する小さな魔法を設置しただとか
【開発に苦労したけど、必要な物だからね。魔法技能を専攻して学んでいた甲斐があったと言う物だよ】
何て自慢げに息巻いていた
「呼んだかい」
「……?!パッシオ、貴方どうしてここに?!」
「誰かさんが僕の朝食をすっぽかして帰って来ないから、心配して近くまで来ていたんだよ。随分可愛らしい恰好をしていたじゃないか」
「なっ……!!」
見ていたのかあの恰好!!この野郎、ニヤニヤしながらこっち見やがって……
顔を真っ赤にして、のぞき見をしていた相棒を睨み付けるが、相棒は知らん顔して俺に飛び付くと、定位置の肩までやって来る
「君の可愛らしい恰好の話は置いておいて、まずは魔獣の対処だ。どうやら少し厄介な事になってるみたいだからね」
「厄介……?いや、とにかく急ぎましょう。方向を教えてちょうだい」
「30度左だよ。そしたらそのまま真っ直ぐ!!」
厄介だと言うパッシオの言葉に一瞬足が止まりかけるが、それよりもまずは現場に向かう方が先決
俺は正確な方向の指示を受けて、更に足を速めて行った
作者、GWの旅行のためちょっと更新滞るかも
出来るだけ書きだめはして行きます




