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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
魔法少女を捕獲せよ

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奇妙な噂

後ろで俺の評価が非常に揺らいでいる事を察知しながら聞き耳を立てていると、由香さんがクスリと笑い声をあげる


「ごめんごめん。年が一回りずつ違うはずなのに、真白さんがどっちにも順応してるのがおかしくてね」


40前の私と分け隔たり無くお喋りしてるのに、後ろの子供達の会話に同じくらいの感性で反応してるんだもの、と笑顔で話す由香さん


確かに言われてみれば40歳手前だと言う由香さんの約12歳違いの俺、更にその約12歳違いの碧ちゃんや紫ちゃん

間に挟まれた俺は、現状両方共と対等な関係を築いているとも言える


「それは前職のせいかもしれませんね」


「前職って言うと看護師?でもああいうところって年功序列がスゴイキツいイメージあるけど」


「私がいたのは普通の医療現場じゃないですから。私が所属していたのは『果ての無い医師団』です。そこで看護師をしていたんですよ」


『果ての無い医師団』は当然ながら常に特殊な環境下で最善の医療行為が求められる

特に紛争地域での医療の現場は常に気を張ってないといけない現場だ


数秒の連係ミスが、ちょっとの伝達ミスが、たったそれだけで起こってしまった齟齬で人がどんどん死んでいく。取り返しのつかない後遺症が残る

そう言った現場で、年功序列なんて物はハッキリ言ってゴミ以外の何物でもない


その場で、その人が対応できる全ての事をやる。対応しきれない時は応援を呼ぶ。その間は常に怒号のような大声が飛び交っていて、口調や態度を丁寧にしている暇なんてない


「そんな感じの職場だったんで、どんな歳の人とも仲良くするのが当たり前と言うか、そう言った壁が凄い邪魔なんですよ。目上の人だからって意見出来なかったりしたら、普通に人が死にますから」


その特殊な環境が、今の俺の人間関係の構築に影響されているんだと思う。相手が大人だろうが子供だろうが、一個人として対等の目線に立つ

看護の現場に立つ人間として、非常に役立つ価値観だと俺は思っている


「真白さんって、凄い人なんですね……」


「『果ての無い医師団』ってあれだろ。世界中を飛び回って色んな所で怪我とか病気の治療してる人らだろ?スゲー」


後ろにいた子供組は今の話を聞いて目をキラキラさせている。『果ての無い医師団』に所属していた、と言うのでこういった素直な憧れの感情を抱いてもらうのはすごく嬉しいことだ


カッコいい、凄いと言われる職に携わっていたことは素直に誇りに思う


「でもよ、なんでそんな凄いとこ止めちまったんだ?」


「それ、は……」


ただ、子供ながらの純粋に悪意の無い質問は同時に殊更堪えるものがある


俺があそこを辞めた理由はとてもシンプルだ。逃げ出したんだ、俺は


燻る黒煙、辺りに響く銃声と怒号、助けてくれと助けてほしいと誰もが願っている中。俺が、俺達だけが――


「んぐっ?!」


おぞましい、吐き気を催す脳裏に焼き付いた場景が俺の意識を暗く縁取り始めた時。唐突に俺の頬がぶにゅりと押され、突然の感触に俺は素っ頓狂な声を上げた


「怖い顔してるよ。真白君にはそう言うの、似合わないと思うな。碧も、他人には聞かれたくない事って言うのもあるんだから、無闇矢鱈に聞いたらダメだよ」


「……ごめんなさい」


犯人は車の運転中の由香さんだった。左手を伸ばして俺の頬に悪戯する茶目っ気を隠さずににんまりと口元を緩めており、碧ちゃんにこの件についてこれ以上の追及はNGだと釘を刺す


その達観した様子は何だか見透かされているような感じがして、なんだか背中がムズムズする気分になる


「ま、何にせよ。貴重な体験をした人に仲良くしてもらってるんだから、アンタ達はそれをしっかり吸収することね」


「うん」


「へへっ、なんだか得した気分だぜ」


別の意味でも背中が痒くなりそうだ


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