獣の力を追って
「やはり、見れば見る程データとは違うな。人の三年とはこうまで重いか。中々勉強になる」
とは言え、そんなものが効くわけもないか。ショルシエの場合、自分に効くような攻撃が来た場合絶対に死に物狂いで回避する。それをしなかった時点で私のこの攻撃は全く効果が無いことは明白だ。
「貴女にも学ぶなんて高尚な考えがあったんですね」
「あるさ。貴様らの脅威は身に染みている。私は勝つためにただ待っていたわけでは無いぞ。貴様らの成長は想定の上を行くが、それで私の優位性が揺らぐわけでは無い。事実として、結果を急がなくてはいけなくなったのは貴様らの方で、私は基本的に待つだけで良い。この差は大きい。そうだろう?」
ショルシエの言う通り、俄然として戦略的優位性を保持しているのはショルシエ側だ。いくら分身体を倒し、本拠地に乗り込んだからと言って、ショルシエ側が不利だと考えるのは表面上だけの話。
実際はどっしりと構えているだけで状況が好転していくショルシエと、無理をしてでも力づくで状況を変えなきゃ勝ち筋が無い私達とでは有利不利が根本から違う。
その事実に舌打ちをしながら、エストラガルとの近接戦闘で負傷した脚を治癒魔法で治す。
こっちはこっちで障壁を纏わせているとは言え、相手は天敵の破壊属性。無いよりはマシだけど、どうしたって障壁を貫通してこっちにダメージが入って来る。
圧倒的な攻撃能力の都合と属性その者の防御性能の無さから、攻撃一辺倒になりやすい破壊属性は攻められると弱い傾向があるって言われているんだけど、一流の騎士であるエストラガル相手ともなるとそんな甘い話ではない。
拳や身体に直接破壊属性を纏う戦闘スタイルは、全身を炸裂装甲で覆っているようなものだ。
幸い全身を常に覆うのは魔力効率的に難しいのか、部分的にしか覆っていないし、基本は拳だけだ。
それでも、これだ。ちょっと戦っただけで皮膚の下の組織が破壊されて内出血を起こしている様子を見ながら、私はどうやって応戦していくかを考えていく。
手元にあった『希望』、『勝利』、『誇り』のメモリーはそれぞれスタン君、昴、そして東堂さんへと託してある。
スタン君と昴は単純な戦力強化として、『誇り』のメモリーは東堂さんにお願いされて、ミルディース王国を出立する時に渡していたりする。
つまるところ、私の手軽な強化手段は無い。とすると『繋がりの力』と私の魔法具『イキシア』で連絡先を知っている魔法少女から力を借りるしかないんだけど、かなり一方的な手前、事前連絡無しで使うのは色々と問題があるのだ。
何せ、私がこの方法で魔法少女から魔力を拝借すると、その魔力の殆どを持って行ってしまうから。これで彼女達が魔獣などとの戦闘中だったら目も当てられないし、復帰に数日を要してしまう。
私個人としてはこれはナンセンスな手段。ともなれば、妖精から借りるのが一番なんだけど……。
「――っ!!」
「ははははは!! そらそらそら、最初の威勢はどうした!!」
一瞬の気のゆるみを悟られたのか、ショルシエの魔法と配下の集中攻撃を受ける。魔法を防ぎ、弾む障壁を使って空中へと跳び上がって回避をしながら追って来た配下を下に伸びる障壁で地面へ叩き落とす。
それをアメティアがしっかり処理をして事なきを得るけど、らしくない失敗をしたと唇を噛む。
パッシオとカレジは私達のことを考えて、私のもとを離れたのだ。そんな彼らから私から一方的に力を借りるのも自分勝手な行為なんじゃないかと思う。
「らしくないですよ。しっかりしてください」
「ごめん。一瞬悩んじゃった」
「『繋がりの力』を使っても有効な手段が浮かびませんからね。同じ破壊属性のウィスティーさんは今、絶賛戦闘中でしょうし」
一番都合が良いのは同じ破壊属性の使い手である『破絶の魔法少女 ウィスティー』さんから魔力を借りることで破壊属性を打ち消すことなんだけど、これはこれでウィスティーさんは今真広と一緒に戦闘中のハズ。
ここから借りるわけにもいかず、やっぱりどうにも都合の良いようにはいかない。ここで私がもうちょっと自分勝手なら魔法少女達から手当たり次第に借りてたし、パッシオとカレジからも容赦なくかりてたんだろうけどね。
そこまで図々しくなれないの自分は甘いというよりはバカよりなのかもしれないと鼻で笑うことくらいしか私には出来ない。
折角の特殊な能力もこれでは宝の持ち腐れだ。自分の力だけで解決しようとする悪癖は死んでも治らないし、今この状況ですら悩む時点でどうしようも無いと思う。




