獣の力を追って
文句を言っても状況が良くなるわけじゃないし、なんなら悪くなる一方だって言う事は分かった。
とりあえずやれることと言えば、増やされた新しいショルシエの配下をすぐに倒すことだった。
「さいわい、性能は大したことは無いようですね」
「即席で分身体レベルとかじゃなくて良かったわ」
アメティアが即座に撃ち込んだ魔法で新しく生み出された配下を倒すと、どろりと溶けて地面に消えていった。
流石にその辺りは即席のクオリティということね。『獣の力』も万能ではないというわけだ。分身体ほどの高性能の配下を生み出すには時間も手間もかかるんでしょうね。
「ドゥラアァァ!!」
「問題はこっち、よね!!」
殴りかかって来るエストラガルを障壁で関節の動きを妨害したり、足元に障害物を置いたりしてこちらにそもそも近付けないようにする。
それでも破壊属性によって障壁は次々に壊されていくんだから堪ったもんじゃない。アメティアの魔法も放つけど、足が全然止まらない。
拳を振りかざしながら猛スピードで突っ込んで来る様子はゴリラのそれだって言うと失礼なのかしらね。
両拳にしか破壊属性の魔法は纏っていないハズなのにこの突破力。前回は『勝利』のメモリーによる砂属性を使った戦術で対等に戦えたけど、今はそのメモリーは昴に渡している。
まさかエストラガルがこんなことになっているのは予想外だったわね。私に対するカウンターとしてぶつけて来るのは予想していたけど、帝王レクスの側近である以上そのそばを離れないと思っていたし、まさか改造されているとまでは考えなかった。
ショルシエからすればわざわざ改造してまで配下を用意するのではなく、分身体を増やした方が効率が良いハズだからね。
だから、帝王レクスと戦う予定の昴に『勝利』メモリーを託したんだけど、これが裏目に出てしまったか。
「それそれ!! さっきのように時間稼ぎだけではもたんぞ!!」
エストラガルの対応に注力していると、拘束の解けた改造軍人たちが数名とショルシエが更に追加で生み出した配下達がけしかけられる。
それを片手間で処理しつつ、突っ込んで来たエストラガルと戦うというのはかなりの重労働。
常に数学の問題を解きながらマラソンをしているって思ってくれれば大体合ってる状況かしら、ね!!
妨害のための魔法も障壁も破壊して来たエストラガルを迎え撃つために出来るだけ懐に飛び込んで渾身の蹴りを撃ち込んでいく。
インファイトはエストラガルの得意な距離だけど、魔法も障壁も破壊されるんじゃ私達じゃ止めきれない。
今はアメティアよりも近接戦闘は私が担当した方が都合が良い。
まさか、私が皆と戦う中で前に出ていくことがあるなんて私自身が驚きだけど、こうなった以上は仕方がない。
破壊属性の伴った拳と障壁で覆った脚技の応酬。振るわれた右の拳を蹴り飛ばして、そのまま身体を半回転させながら踵を脇腹目掛けて蹴り込んでいく。
それを腕を折り畳んだ防御姿勢で受け止められる。エストラガルはそのままの姿勢で私の体勢を崩すためにタックルをして来るのを、咄嗟に受け止められた脚を軸に更に半回転して完全に両足を宙に浮かした後、代わりに地面に着いていた両腕をバネにして空中に跳び上がる。
跳び上がった先、空中にクッション性の高い障壁の足場を展開。左足一点でそれを思いっきり踏んづけると跳ね返りの反動で勢いを増させながらエストラガルの脳天目掛けてかかと落としを撃ち込む。
両腕をクロスさせてガードしたエストラガルは私を吹き飛ばすように両腕を振り上げると私はそのまま身を任せて空中を跳んで着地。
距離を取ったところにアメティアの魔法が一斉に放たれ、エストラガルを吹き飛ばす。
無防備になったアメティアを狙って飛びかかって来たショルシエの作り出した獣型の配下を障壁でねじ切りながら、私はショルシエの周囲を囲むように数えるのもバカらしくなるくらいの箱型の障壁を展開。
「潰れなさい!!」
両手のひらをパチンっと音を立てて合わせる動作と同時に障壁が内側に圧縮。中にいたショルシエ諸共圧し潰して見せる。




