決意と覚悟
なんて感情に機敏なんだ。出会ってすぐにそんなことに気が付くヤツには流石に出会ったことがない。
そういう感性の強さも特異性たるところから来ているのだろうか。
「そんな勿体無いこと、君にさせるわけにはいかない。俺みたいにいつかは消えないといけない存在じゃなくて、君は未来を託された側だ。君は絶対に生きなきゃいけないんだ。君が失った大切な誰かのためにね」
「……そう、だな。俺は気持ちばっかり先走っていたのかもしれない」
「気付いたのならよし。……あとは、任せた!!」
ガンテツの爺さんが死んでから、俺は焦っていたフシはある。最短で最速で、まともな対策無しで突っ走っていたのは間違いなく結果を急いだ余りの準備不足でしかない。
そもそもにして封印が解かれるかも知れないという件については思いついた時点で番長に直訴するべきだったし、もっと作戦を練るべきだった。
俺は俺自身にわざと負担が大きくなるように仕向けてすらいた。責任を自分が負うようにそれとなく仕向けて、命を賭ければガンテツの爺さんの死に報いることが出来るとどこかで思っていたからこその行動。
全く、バカバカしい。周りもそれには何となく気が付いていたと思う。だからS級魔法少女のウィスティーを多少無理矢理にでも付けたんだろう。時間が無くて、それくらいしか出来なかったとも言える。むしろそれだろうな。後で真白にぶん殴られるんだろうな、と今さら気が付いた。
それに一目で気が付いた高嶺 悠という男を心の底から尊敬する。ガンテツの爺さんや親父達と同じように尊敬出来る大人だ。
「世話になった」
「ははは!! こっちこそ、ありがとう。本当に君達に出会えて幸運だった」
笑いながら、高嶺 悠の声が少しずつ細くなっていく。もう限界らしい。惜しい、あまりにも惜しいがこの人が選んだ結末にケチは付けられない。
俺に出来ることはこの男の最期を見送るだけだ。
「郁斗、桃ちゃん、絵梨、父さんに母さん。ついでに兄貴も。――やっとそっちに行けるよ」
最期は友人と家族の名だろう。既に亡くなっているのは内容からわかる。本人からすれば、やっと皆と一緒に慣れるのは悲願だったのかもな。
そういう意味ではやはり本人にとっては良い結末、か……。
そうして、静かに息を引き取った高嶺 悠の顔は間違いなく穏やかで、やり切った男の顔だった。
「色々悪かったな。こっちの都合に巻き込んで」
「いや、むしろ感謝する。この人がいなかったら、俺は目的を達成することも出来ずに死んでいたハズだ。短い時間だが、色々教えてももらった」
「そうか、それならコイツも喜ぶ。お節介焼きだからさ。最期に笑って死なせてやれて良かったよ」
間 郁斗とお互いに感謝を交わして、高嶺 悠の遺体を抱き上げるのを手伝う。意識の無い人間の身体って言うのは想像以上に重い。
しっかりと抱えたのを確認して、後のことは任せるとしよう。
「埋葬は笠山に?」
「あぁ、俺がしてやれる最後のことだからな。これ以上はこっちの世界にいる正式な言い訳も出来なくなるしな」
「手伝ってはくれないのか」
「悪いな。俺はあくまで高嶺 悠のことについてしか干渉しちゃいけないルールなんだ。千草や要は悠に用事があったから干渉出来たが、ここから先はお前達で何とかするんだ」
残念だ。間 郁斗の実力も相当なモノだと聞いているが、今目の前にいるこの男はこの世界で生まれたわけじゃないらしいからな。いわゆる平行世界の住人であって、本来ならこうして出会うことすら無い存在だ。
何らかの方法で、恐らく上位存在との交渉で実現しているんだろう。ともなれば、ルール違反は許されない。神に背いた人間がどうなるかは、ありとあらゆる神話で語られていることだ。
「やれるさ、お前達なら。コイツも、お前の体力を出来るだけ残して、決戦に参加させるためでもあるハズだぜ。そうすればちょっとは勝率上がるだろ?」
「そこまで考えて……?」
「さぁ? 実際は知らん。が、結果としてそうなってるならそうした方が良い。恩師に報いるなら尚更だ」
そうして、間 郁斗は俺の前から立ち去って行った。二度と会うことはないだろう。だが、俺達に残してくれたものは大きいように思う。
「さて、もうひと仕事するか」
生かされた以上、やるべきことはやらなくては。
俺は白衣を翻しながら、『人滅獣忌』とウィスティーを追うことにする。通信が圏内に入ったら、増援予定だったS級魔法少女にも妖精界に向かうように要請するか。




