獣
「化け物同士ってのは否定しないわ。間違いなく、私は化け物側よ」
「なら手を組もうじゃないか。僕はより高みへ上り、僕こそが『獣の王』になる。君は僕の協力者として、支配者側の地位を得る。良い関係だと思わないかい?」
アルツが目論んでいるのは反逆か。分身体がショルシエに反旗を翻すことは自殺行為だろうと私から見ても思う。
ショルシエと分身体には埋められない差がある。
決して分身体がオリジナルを上回ることが無いように調整してあるんでしょうね。自分がどういう存在で、その配下が意思を持てば一定の確率で反抗してくるのが出て来るのは織り込み済み、ってヤツ。
だから、カトルが尾を増やし6本尾のアルツになったとしたってショルシエに敵うことはない。
真っ向から勝負してもボコボコにされるだけ。それをアルツはよく分かっている。
だから、私を仲間に引き入れたいってわけだ。
ショルシエと真正面から殴り合えて、いずれ魔法少女としてもはぐれ者になる可能性があるある私なら甘い言葉をかければ仲間になる可能性は0ではない。
むしろ、長期的に見れば利点の方が大きいかもね。
将来、敵になるかもしれない相手に今のうちから手を打っておけば随分と楽出来ることは確かだし。
でもね、私が何の為にこの力を手に入れたと思ってるのかしらね?
「ナメてんじゃないわよ」
アルツからの提案は却下一択。
その言葉と同時に炎が燃え上がって、私がイラついていることを単純に見せびらかす。
誰が誰を裏切るですって? 冗談じゃないわ。
「アンタ、私が何の為にこの力を手に入れたのか知らないでしょ?」
「何のために? そんなもの自らの証明以外に何がある?」
本当に怪訝そうに、何を言っているのか理解出来ないという表情で答えるアルツを鼻で笑う。
所詮は獣。壊すことしか頭にないバカね。これ以上話を聞いたって無駄だわ。
「この力は守るための力よ。自分を、誰かを、仲間、家族、友達を守るための力」
剣を地面に突き立て、魔力を練り上げる。
魔力の燐光がジリジリと焼けて、オレンジ色の火の粉になって私の周りに散り始めると同時に私の身体が竜の鱗で覆われ始める。
「――!!」
異変に気付いたアルツが恐らく『権能』で対応しようと動く。
けど、もう遅いしそれがどういうものなのかは見切った。
「効かないわよ、そんなもの」
「なっ……?!」
『権能』を威圧だけで弾き返す。タネさえわかれば対策は大して難しいわけじゃない。
威圧ひとつで『権能』を弾くのは流石に力技だけど、私達だったらすぐに対策を打てるんじゃないかしらね。
大方、『繋がりの力』を奪うための力。嫌な力だけど当たった相手は最悪だったわね。
「大方、視界に入った力を奪うとかそんなところでしょ。魔法を食って魔力に変換とかじななくて、純粋に力を奪って自分のモノにする能力」
「だからといって抗えるようなものではない!!」
「バカね、格上にその手の能力が効くわけないでしょ」
「……!!」
このタイプの能力や魔法は自分より格下には効果的に使えるけど、格上には効きにくいことが多い。
あの『隷属紋』ですら、かかるタイミングさえわかれば今の私達なら自力である程度レジスト出来る。
対策も分かりきってるしね。だからこの前のアズールはフェイツェイにブチギレられてたわけだけど。
私を弱らせているならまだしも、万全の状態で、バレバレのタイミングで『権能』を使ったってレジストするのは難しくない。
特に私自身に使おうとする時はね。メモリーみたいな外部ツールはその辺は難しいからさっきは引っ込めたワケ。
「『魔法具解放』」
さぁ、さっさとケリを付けましょう。雑魚に構ってる暇は無いわ。




