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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
最終決戦

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レッドゾーン


最初に言っておくと、こういう状況で思った通りにことが進むことはほぼ無いってのは今までの経験で分かっていたことっすよね。


「アイツ、誰?」


「さぁ、知らないっすね」


あちこちで大きな規模の戦いが始まっている気配を感じている中での『獣の力』に侵された城勤めの人達の鎮圧。敢えて優しく言うなら保護を優先して、僕らが戦いやすい環境を整えていく中で、僕とニーチェは目の前に突然現れた謎の生き物に遭遇しました。


4足歩行、それでいて2mくらいの高さとがっしりと肩幅のある体格のよさ。雰囲気は……そうっすね、虎に近いと思います。あれの大きい版です。

がっしりした体格に見合った太い腕にそれを支える大きな手にはこれまたその大きさに見合ったふっとい爪。


歩くたびにガリガリと床を削る音が聞こえてきます。


もちろん、牙も見えます。見た目からして凶暴な獣、っすね。何より特徴的なのが、耳の無いのっぺりした頭とあたまの左右に3つずつも目玉が付いていること。

更にはその中心にも大きな瞼のようなモノが見える辺り、あれも眼球っすかね。


「アァ、やっと会えた。ボスからはあまり他の邪魔をするなというお達しでね。あちこちでもうさっさとおっぱじめちまったもんだから、俺にはお鉢が回って来ないかもしれないと思ってたところだ」


ノイズがかかったみたいな耳障りな声に顔をしかめながら、僕らはそのナニかが声を発することを確認すると、これが何なのかを悟りました。


ショルシエの分身体。人化せず、そのまま獣の姿のままで現れたのを考えると戦闘特化タイプっすかね。

尾は7本。僕らが知る中で、ショルシエの分身体としては最大本数です。


つまるところ、強敵。


「そりゃ良かったっすね。そのままハウスで良いですよ」


「ツレねぇなぁ。お前ら強いんだろ? ちょっとは楽しませてくれよ」


「楽しいのはお前だけでしょ」


舌なめずりをしながら話す様子からして、かなりの戦闘狂。見た目からしても今までの分身体と比べて戦闘能力に全振りしている気配っす。


今までのはどちらかと言うと人の生活に溶け込みながら、工作活動をする面の方が大きく出ていたと思います。

だから普段は人型、というより妖精がする人型に近い姿をしていて、本気で戦う時にビーストメモリーを使って獣化する。


そんなイメージです。でも、目の前のコイツにそんな様子は無い。最初からビーストメモリーが常時使用中みたいな状態。そんな個人的な予想です。


「ナァ、戦ろうぜ。こっちはずっとうずうずしてんだ。良いよな? 良いだろ?」


「ニーチェ!!」


「わかってる!! 来るわよ!!」


「ヤろうぜ!! 魔法少女ォッ!!」


のっぺりした頭の中心にあった大きな瞼がカッと開いて、ぎょろりと充血した眼球とその左右にある眼球。合計7つの眼球が一斉にこちらを向いた瞬間、物凄いスピードで腕が伸びて来て、僕たち目掛けて襲い掛かって来ました。


「っ!!」


まさかの攻撃方法に驚いてもそこは腐っても上位層の魔法少女を自負した僕たち。

ニーチェが一瞬の間に魔法具の剣を抜くと伸びて来た腕を切り裂くために逆手持ちの状態で剣を振り上げ、防御に間に合わせます。


「アめぇ!!」


「どっちがっすか!!」


ニーチェの剣が相手の手を切り裂くか、弾くかと思った時に今度は手が二つに分裂。振り切った体勢で防御も回避も難しいニーチェに左右から襲い掛かるのを僕がパンチをお見舞いして防ぎきります。


「ハハぁ、良いねぇ!! そうでなきゃ楽しくねぇ!!」


「助かったわ。まさか分裂するなんて」


「こっちこそっすよ。まさかあの見た目で腕が伸びるなんて思ってなかったんで」


勝手にテンションを上げている相手に対して、僕たちは初撃をやり過ごしたことにお互いを励まし合います。

見た目からしてパワーファイターかと思いきや、初手から搦め手。そしてパワーファイターという見た目印象自体も別に間違ってはいないハズです。


つまるところ、コイツはなんでも出来る万能型。どっから何が飛び出て来るかわからない。一番危険なタイプっす。


「オレはチェッド!! 7尾のチェッドだ!! よろしく頼むぜぇっ、魔法少女!!」


「『轟雷の魔法少女 クルボレレ』。よろしくはしたくないっすね」


「同じく『豪雷の魔法少女 ニーチェ』。こっちもお前みたいなのはお断りしたいわ。しつこいのは嫌いなのよ」


城勤めの人達の保護、先にある程度出来て良かったっすよ。こりゃ加減してる余裕は無さそうっすから。


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― 新着の感想 ―
「こいつ(チェッド)、獣型なのに可愛くないっす!」
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