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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
最終決戦

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決意と覚悟


「シャドウ!!」


あとはカトルにトドメを刺すだけだともう一度拳を振り上げた時、『人滅獣忌』の様子を見張っていたウィスティーから声が上がり、咄嗟にその場から大きく身を引いた。


直後、凄まじい濃度の瘴気が俺のいた場所を飲み込んでいく。なんて濃度の『獣の力』の気配だ。煙のように見えるそれから感じる『獣の力』の気配は俺が直接感じた中ではトップクラスのそれだ。


飲み込まれていたらタダでは済まなかったかも知れない。あんな濃度、まともに受けたらそれだけで『獣の力』の支配下に置かれてしまいそうなくらいだ。


「ちっ、逃がしたか」


「気にしてる場合じゃない、来るよ!!」


そのどさくさに紛れて、カトルは完全に取り逃がした。アイツに高濃度の『獣の力』もクソも無いからな。あの煙の中でさっさとトンズラこいているだろう。あと一撃、ってところだったんだが、仕方ない。


「久しぶりの対面の感想は?」


「出来れば二度と会いたくなかった、かな」


そりゃそうだ。こんなバケモノ、出来ることなら二度と会いたくないだろう。今、ここで初対面の俺ですらそう思うくらいだからな。


「――!!」


目の前でゆっくりと身体を起こしたソレは身体は瘦せこけ、毛並みはぼさぼさ。見た感じ酷く弱った動物、という印象だ。

だが、そいつから発せられる気配は凄まじく、封印の中で弱っていてなお、人類の天敵という肩書が消えることはないだろうと悟らされる。


ゆっくりと立ち上がり、体高は4mといったところ。骨と皮だけに見える脚は視覚的にはやはり頼りなく見えるが、澱みなく立ち上がったそれは。


「グギャアアアアアアアアアアアア!!」


「……っ!!」


咆哮ひとつで大気を震わせてくるのはS級魔獣共通か。なんて無駄な思考を割きつつ、ビリビリと震える身体に鞭を打ってそこから動く。


飛び退いたそこに目にもとまらぬ速さで叩きつけられた尾が地面を抉り取るのが飛び込んで来る。

瓦礫が飛んでくることも無い。文字通り、そこを抉る取ったわけだ。あんなの一撃でもまともに喰らったら骨も残らないな。


「攻めるよ」


「これを相手にそれは正気の沙汰じゃないな」


「じゃあ帰る?」


「それこそ、冗談だろ?」


一瞬、頭に過る防戦という選択をウィスティーから咎められて、思考を切り替える。ここで防戦したら何の意味も無い。俺達は今からコイツにダメージを与え、妖精界に送り返さなければならないのだから。


そのためには攻めるという選択肢以外は存在しない。守ったら負けだ。その時は死なないかも知れんが負け筋が残り、勝ち筋が消える。

それだけはあっちゃいけない事態だ。


「あっちの攻撃は私が捌く。シャドウ君は本体に直接攻撃を叩き込むことに集中して」


「了解した」


役割分担はシンプル。苛烈な攻撃の対応は単純に俺より強いウィスティーに任せ、獣に対する特効能力を持つ俺が本体にダメージを与える。それだけだ。


出来たら勝ち筋。出来なかったら全滅ってところか。笑えんが、笑うしかないな。まあ文句を言ったところでさっきも言った通りやる以外の選択肢は無い訳だが。


「俺も手伝って良いかい?」


そんな本命との戦いに集中力を高めている中で突然聞こえた新たな声に、気を取られることになったのは仕方がないと言わせてほしい。


「おっと、ダメじゃないか。こんな強敵が目の前にいるのによそ見は」


「させたのは誰だよ」


気を取られた瞬間に襲いかかって来た数本の尾をウィスティーと声の主の2人がかりで対処する。

ウィスティーはともかく、ここに来て現れた謎の男も相当な実力者なのはそれで良くわかった。


コイツ、刀一本で『人滅獣忌』の攻撃を全部捌き切った。

魔力はそう多くない。俺よりは多いが魔法少女よりは少ない。それだって言うのに体術はウィスティーより上だ。


なんだ、コイツ。

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