無限界牢
「遊びじゃないから留守番してなさいって言ったでしょ!!」
「うぇーん!! ごめんなさ〜い!!」
勝手にポーチの中に忍び込んで着いて来ていたのは子供ドラゴンのメルドラ。
普段は私が面倒を見ていて、高2で言うのも何だけど母親代わりのようなことしている。
とは言え、今回の戦いは今までの規模じゃない。普通に私が死ぬリスクは有るし、守ってあげられるかもわからない。
だから竜の里の長老であるトロイデさんに預けていたのだけれど、コレだ。
「まぁまぁ、着いて来ちゃったのはもうしょうがないし」
「引き換えそうにもアテが無いしな。このままルビーにくっ付いていた方が安全だろ」
「はぁ……」
約束を破ってくっ付いて来たメルドラに雷を落としていると、グレースアとフェイツェイが宥めてくる。
着いて来ちゃったのはもうしょうがない。これはもう今更どうしようもないしね。
それはそれとして、良い子で留守番しているという約束を破ったのは事実。
「帰ったらお説教よ。わかってるわね?」
「……ごめんなさい」
悪いことをしたら怒られる。当たり前のことだ。私も小さい頃に悪戯ばかりしてはその度にお婆ちゃんの鉄拳制裁を喰らっていた。
拳骨下さないだけ優しいと思って欲しいわね。本当に危ないことをしているんだから。
「メルドラ、怒られた理由はわかるな?」
「危ないところに勝手について来ちゃったからだよ? 心配してるの。メルちゃんのこと。ね?」
「ごめんなさい……」
過去一番級に怒られたうえに、自分が悪いことを2人に諭されて反省したメルドラはぺしょぺしょになっている。
まぁとりあえず反省しているなら後のお説教は程々にしときましょう。
私より番長やトロイデさんに怒ってもらうのが良さそうね。あの人達も怒るとなると相当怖いわよ。
「わかったなら、次は約束を破るなよ。次破ったらお前のママの代わりに私がゲンコツするからな」
「フェイツェイのゲンコツは痛いわよ〜」
「もうしない!!」
サッとおでこを隠して半泣きになるメルドラの様子に私達は笑って、少し場の空気が和む。
さて、リオ? アンタメルドラがいるのわかってたわよね?
何で私に何も言わなかったのか、後でしっかりこってり絞り上げるから覚悟しなさいよ。
と笑いながら視線を向けるとここぞとばかりに知らん顔。オヤツ抜きね。お母さんから送ってもらった鹿肉のジャーキーは今この瞬間に全部メルドラの物に決定よ。
「全く、波乱続きね。ちっとも計画通りに行ってないじゃない」
「全員わかってたことだろ。ハナから計画なんて有って無いようなものさ」
「始まっちゃえばその時その時で臨機応変に対応するしかないもんね。少なくとも、撤退は無いでしょ」
グレースアの言う通り、一応撤退合図はあるけどそれは本当に最終手段。そうせざるを得なくなった時点で私達の負けが確定すると言って良い。
事実上、私達の戦いはこれが最初で最後のチャンスってわけ。
計画だって立ててはいたけど、最初から上手くいくなんて思ってない。そんなに現実は都合よく動いてくれないのは今まさに私達が陥っている状況がそのまま答え。
「さて、話を振り出しに戻すか。ここをどうやって脱出するかだが、まぁ私達に出来ることと言えば歩きまわるくらいしか無いだろうな」
「捜査は脚で、か。まるで刑事ドラマだね」
「そんな悠長な状況じゃないわよ。出来るだけ閉じ込められている時間は短い方が良いわ。それだけ、ショルシエが私達を脅威に思っている証拠だし」
なんてことない相手を閉じ込めておく理由なんてショルシエには無い。脅威だと思うから私達を隔離して時間稼ぎをするわけだ。
それは逆を返せば、私達が短時間でここを突破されると都合が悪い証拠。
だったら、さっさと突破するに限るわよね。




