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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
最終決戦

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獣の力を追って


「全く、貴様らというのは理解しがたい。そのまま大人しく滅びを待ってればいいものを。わざわざ自ら敵地に赴くとは」


「虎穴に入らずんば虎子を得ず。大きな目的を達成するには時にリスクのある選択も必要なモノよ」


ショルシエにはわからないだろう。この魔女はとにかく逃げる。リスクというリスクを徹底的に排して、自分の身に危険が及ばないようにすることが最優先だ。


未だに私達の目の間に直接現れたことは無いのだろう。私達の目の前に現れているのは複製か、分身体か。またそれに類する何かか。


とにかく、本体は絶対に敵と直接戦わないという強い意思を感じる。


「逃げてばかりの負け犬根性が染みついた人にはわからないかも知れないわね」


「……魔法少女というのはどいつもこいつも私を苛立たせないと気が済まないようだな」


ぴきぴきと額に青筋が浮かび上がっているのが目で見てわかる程度には苛立つショルシエを見て、こちらとしてはイイザマである。


そうやって怒ってもらった方が都合がいい。怒りとは冷静さを欠くことと同義だ。戦いの場では冷静さを欠いた者から脱落していく。

ある意味ではショルシエの分かりやすい弱点の1つ、と言えるだろう。


とにかく、ショルシエはこういった感情のコントロールと言うモノが全く出来ていない傾向があることは私達はよく知っている。


『獣の王』だから、とも言えるだろう。本能に忠実、理性が薄いのは恐らく『獣』という存在の共通の特徴だ。『獣の王』も当然そうであると考えるのは自然で、それは過去のショルシエの言動からも察することが出来る。


だからと言って挑発をすればいいと言うものでもないけどね。程々にしておかないと、周囲一帯をところかまわず薙ぎ払う、なんてことをしかねない。


あくまで軽く。苛立たせる程度の挑発が効果的と言えるだろう。


「少し遊んでやろうと思ったが、止めだ。貴様らにはここで死んでもらおう」


ほら、予定していた計画を早めた。こうやって用意していた予定調和を崩す辺りが、自制心と言う名の理性が薄いことを表している。


頭が悪いわけではない。頭脳と言う点で見ればショルシエは相当に優秀で、技術者としての知識と経験も豊富なことは私達もよく知っている。


ただし、こうやって感情1つで用意していたはずの作戦を変更してしまうのだ。こうして一つずつ、丁寧に相手が想定していた状況を崩して行けば、いずれショルシエの盤石とも言える逃げ道を塞ぎ、足元を揺らがせることが出来る。


「なんだ、アレは……!! いや、これはまさか?!」


「ガルルル……」


現われたのは、一言で表すなら筋肉ダルマだ。過剰に膨れ上がった筋肉と、口元から覗く鋭利な牙。手には爪ではなく、分厚いグローブ。メリケンサックのように硬い部位が見て取れる。


その武器に、私は見覚えがあった。


「『砕裁のエストラガル』……?」


「ご明察。貴様ら魔法少女に最初に送った刺客の妖精どもだ」


「なんてことを……!!」


『砕裁のエストラガル』。私達が人間界で迎え撃った最初のショルシエの刺客達。そのリーダーの変わり果てた姿に私達は絶句した。


敵として戦ったとはいえ、私が持つ彼への印象は好感の持てるものだったと言って良い。

忠実に職務を遂行し、的確な指示、鍛え上げられた魔法と肉体はまさに君主が理想とする部下像のひとつと言って良かっただろう。


あの時はショルシエの指示に従っていたが、元々は帝王レクスの懐刀だったと聞いている。非常に優秀な人であったことは確実。


それがあんな醜い姿に変わり果てているなんて、敵とは言え受け入れがたい光景だった。


「エスト……」


「リアンシ、下がってください。敵はまだいます」


「さぁ、それ以外にもいるぞ!! 帝国ご自慢の優秀な兵士どもを私が直々に強化してやったその力!! 貴様らの身体で存分に味わうがいい!!」


知り合いであろうリアンシさんからは悲痛な声が上がるけど、それに構っていられる状況でもない。

どこからともなく、ぞろぞろと『獣の力』によって改造され、『獣』へとなり果ててしまった妖精の兵士たちが現れ、私達を取り囲む。


「さぁ、こいつら相手に手を出せるかな? お前達からすれば、こいつらも私の被害者だ。傷つけず、殺さず、生かしながら私を倒して見るがいい」


「ホント、趣味が悪いわよね」


私達の嫌がることを本当によく分かっている。腹が立つけど、今は目の前のことに集中しなければ、こちらもタダでは済まない。

何せ、エストラガルを始めとして、この元優秀な妖精の兵士達から感じられる気配はカトルやベンデと言った分身体達にも匹敵するものなのだから。


「消耗戦ね。わかっていたけど」


「はい、計画通りに時間を稼ぎます」


「恐ろしいね。この状況を自分達で作ってから時間を稼がなきゃいけないなんて」


小言でアメティアと会話をして、予定通りに事が進んでいることを確認する。何のために膨大な魔力を持つ3人で固まっていると思ってるのよ。

こちらも無策では無いわ。まぁ、半分運任せなんだけど。


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― 新着の感想 ―
どこかの異世界転生者みたいに結界魔法をロープがわりに相手を縛り上げたりはできないのかな?
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