帝王レクス
「さぁ、次はどう来る? 生半可なものでは私を倒すどころかその男を助けることも出来んぞ?」
メモリーの2枚挿しが3人いてもコレか。わかってはいる。わかってはいるけど、厳しい。
どんどんと不利な状況に追い込まれているのは誰が見ても明白だ。
救援の狼煙はあげたけど、まだお姉ちゃん達が来ないってことはあっちもしっかり足止めされてるってこと。
ショルシエも私たちが来ることを前提にしていたのはわかっていたけど、私達の建てた作戦はだいぶ引っ掻き回されてしまっている状況だった。
せめて誰か1人でも来てくれれば状況はひっくり返る。
少なくとも帝王レクスを逃す余裕は出来る。
でも、それを当てにしてたら絶対に負ける。
「ここまで来たら引かないで良いよね」
「押すしか無い。気合い入れるよ、昴!!」
「良いね、そっちの方が私も好きだよ。墨亜!!」
同じ銃使い同士、性格も違えば年も違うし、戦闘スタイルも違う。
切羽詰まってる時にそんな遠慮なんて考えてるほど悠長でもない。
使えるものは使って、しっかり信じて戦う以外に突破口は無い。
バイザー越しにニカっと好戦的に笑う昴と、表情筋は大して動いていないだろう私。
今、1番戦闘能力が突出しているのは私達2人が。だから、私達が次は切り込んで行く!!
「だらっしゃぁ!!」
ルミナスが極太のレーザーを1発放つ。人ひとり分の幅はあるレーザーの威力は部屋の床材を捲れ上がらせるくらいには威力は抜群。
それに対して、ショルシエは変わらず魔力の塊を放って対処する。ここからでもそれぞれが持つ魔力の差に覆しようのない差があることはこの場にいる誰もが感じていること。
真正面からぶつかり合えば、だけど。
また粒子にぶつかり、極太のレーザーが不規則に分散してく。私の目で追うのも無数に、不規則に、粒子にぶつかるたびにドンドンと細かくなり、レーザー同士がぶつかったら元の太さに戻りながらショルシエに向かっていく。
「ルミナス、動かないでくださいね!!」
レーザーがショルシエの魔力塊を避けて進めば、逆に魔力塊はそのままルミナスに向かう。それをシルトが影を使って現れ、魔力塊を受け止める態勢に入る。
まさか、あの魔力塊を受けきるつもり? さっきの魔力量よりずっと多いのにアレをまともに受けたら普通に考えたら消し炭よ?
あんなのまともに受け切れるのなんて私が知っている魔法少女の中でもごく一部の防御に振り切った人達だけだ。
例えば、アリウムお姉ちゃんなら分かる。障壁を何重にも重ねたり、魔力を受け流したり。そもそも『摂理を弾く倫理の盾』があればどんな攻撃に対しても無敵だろうし。
そんなレベルでようやく受け切れるのがこの魔力塊だと言って良い。それを受けきろうというんだから、シルトの自信は相当だ。
出来る自信があるなら、私は任せる。気にはなるけど、心配したところで私に出来ることはない。
私に出来る最善手は、いつだってこれだ。
「……っ!!」
『31式狙撃銃・改』の引き金を絞って、ショルシエに向かって弾丸を放ち、ショルシエの魔力膜を貫通して見せる。
驚いたショルシエが弾丸が飛んだ方向に魔力塊を雑に飛ばしても、そこに私はいない。
「……」
辺りを探っている様子はあるけど、私の姿が見えず歯がみしている様子が見える。魔力塊を受け止めたスルトとそれに守られたルミナスの無事な姿もあり、今のところ私達はショルシエに対して耐えられていた。




