帝王レクス
あっさり勝てた。ブレーダーメモリーの攻撃によって両断されたショルシエはまるで泥のように溶けて消えていったのだ。
「勝った……?」
「油断しないで、ショルシエがこんなに弱いわけがない」
ただしこの勝利には違和感しかない。シルトメモリーも勝利を口にはするけど、疑問系。勝ったというより、目の前のショルシエが不自然に弱い。
その辺の一般兵なら倒すのは大変だろうけど、私達としてはかなりの肩透かし。
これじゃ3年前に戦ったショルシエの偽物の方が……。
「分身か……!!」
「ご明察。流石に私と戦った経歴が長い者は察しも良いな」
倒したショルシエが雑な分身だと理解すると、すぐにまた新しいショルシエの姿が現れる。
天井から生えてくるように現れたそれを見て、通りでなんの索敵にも引っ掛かることもなかったのかも理解出来た。
そもそも身体を新しく生成してるんだから、そこに気配も何もあったものじゃない。
索敵出来るわけがない。
新しく現れたショルシエの分身を素早く撃ち抜いて破壊する。
「無駄だ。多少粗雑だが、お前達にとって数は脅威だろう?」
「勝手にどうぞ。出現出来る範囲に限界があるクセに大口叩かれてもね」
「これは手痛い。良い目をしている。憎たらしいが、かつて見たことのある目だ。確か、未来視の能力を持つ魔眼だな?」
ただショルシエの分身体の弱点も見えた。おそらく、特定の範囲内でしか分身体を生成出来ないとか、そういうものだ。少なくとも、何でもかんでルール無用で作れるわけじゃない。
じゃなかったら城内に突入した時点、なんならもっと前の段階で私達の陣営に潜り込んでいてもおかしくない。そんなのはいなかったのは分かっているし、それが出来るならショルシエはもっと楽な手段を取るハズ。
ここに来て分身をわざわざ作って私達を足止めするってことはこの先に進まれたくないってこと。だったら、やることは1つ。
「ブレーダーを連れて先に!!」
「ノワール?!」
「わかった!! 行くよ!!」
私がショルシエの分身を止めて、皆を前に進ませる。これが一番やられたくないことのハズだ。即座にショルシエの分身の額を撃ち抜き、行動を止めたところでブレーダーの首根っこをブラザーが掴み、ルミナスを先頭にして走り出す。
「馬鹿め、誰が一体しか作れないと言った」
「誰が銃が一丁しか無いって言ったの?」
ぽこぽこと何体も同時に現れるショルシエの分身がルミナスたちへ向かおうとするけど、私もすぐさま次々とその頭を打ち抜いて行く。
私の周囲には星属性の魔力で接続され、私の身体を浮かせるのと同じ機構を取り付けた幾つもの魔力銃。その数は8。手にしている『31式狙撃銃・改』を合わせれば9の銃口がショルシエの分身を撃ち抜いて行く。
それだって、全部が全部同じ銃ではない。『31式自動小銃』を中心に2門の大口径砲と『32式機関銃』もある。弾は魔力だから、弾種の切り替えは私一人で素早くできる。
通常弾から榴弾、貫通弾。魔力砲らしくレーザーだって撃てる。もうなんだかやりたい放題過ぎて、担当開発者の人がテンションおかしくなって作ったんだろうなって思ってる。
内容はふざけているかのように聞こえても性能はピカイチ。使い勝手の良い小銃と連射能力に優れた機関銃。大火力の砲に、遠距離と弾速に優れる狙撃銃。
一人で大体熟せる変態脳筋設計だ。これが高速で飛びまわれるっていうんだから、頭おかしいよねホント。
「走って!! 生えてきた先から私が潰してく!!」
「頼もし過ぎ!!」
全速力で走り出すルミナスを飛びながら追い、未来視で視えた分身が生えて来るところに弾を置き撃ちして行く。
生えた先から一言も発せず撃ち抜かれて行く様子は爽快だし、相当不愉快でしょうね。
ざまぁみろって言うのよ。舐めてかかるからそういう目にあうのよ。




