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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
最終決戦

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帝王レクス


スタンが三大国の外周を周り、公国に入ったことは分かっている。そうなってもらわなければ俺の計画がそもそもに破綻するのでどうにかしてでも発破をかける必要があったのだが、幸いにも魔法少女と出会った事がアイツの中で転機になったようだった。


だが、いきなり魔法少女を王城の中に招き入れた時は肝を冷やしたぞ。たまたまショルシエの気が別の方向に向いていたから良かったものの、気が付かれていたらあの時点で色々終わっていた。


しかし、おかげで安全な道中を旅出来たようだ。魔法少女の方も少し捻くれた性格はしているようだが、聡明で決断力に優れているらしい。


スタンは優しいがあまりに決断を迷ったり、後回しで良いことは後回しにする悪癖があるからな。ああいう気の強く、物事をパッパッと決められるご令嬢とくっ付いてくれれば、兄としては言う事は無い。


もちろん、王としても、な。


「近く、事が動くだろう。準備を怠るな」


「はっ」


国境付近での軍の一触即発な状況を演出し、それに視線を集中させるのがあちらの狙い。本命はおそらく、既に帝国内には侵入しているハズ。


軍が睨み合いを始めた頃にこちらに乗り込んでくることを考えれば、明日がそのタイミングだろう。

それを逃がすようなレベルの低い者達ではない。あちらは実戦で叩きあげられた精鋭。戦いの嗅覚はこちらより上。


より正確に、こちらが油断したタイミングで飛び込んで来る。それを如何に演出するかが、俺の役目だ。


エストラガルを下がらせ、俺も準備に入る。いざ戦いが始まるというタイミングで準備不足で動けませんでした、はバカのすること。

あらゆる想定はしているつもりだが、それでも細心の注意を払い、最後まで気を抜かずにいるべきだろう。


「随分、気合いが入っているじゃないか。戦争が始まるのはまだもう少し先だろう?」


ほれ、見たことか。突然現れた『獣の王』ショルシエの姿に驚きつつも、特に意に介した様子は見せずに準備を淡々と進めていく。


鎧を着こみ、動きに支障が無いかを確認する。とショルシエは返事が無いことに退屈そうな溜め息を吐いて、部屋の豪奢や机の上に足を上げて寝転がっていた。


「もう少し先だから、今のウチに準備するのだ。戦とは備えが十分な方が勝つもの。舐めてかかると痛い目に遭うぞ」


「あぁ、そうだな。確かにその通りだ」


「……貴様らしくも無い反応だな。いつもなら鼻で笑っているところだろう」


「昔を思い出していたのさ。確かに準備が万全なほど、相手は強くなっていた」


反応してやると、面白くなさそうな表情で肯定が返って来た。正直、そうなるのは予想外で驚きで動くのを止めてしまった。


『獣の王』、『災厄の魔女』たるあのショルシエが、負ける可能性について肯定したのだから。

いつもなら、そんなわけが無いとふんぞり返りながら答えるだろうに、そうではないのは何故かと考えを巡らせるとすぐに答えに行きつくことが出来た。


『獣の王』は古代の妖精界での戦いの中で最終的に負け、敗走している。文献によれば、当時は種族間の垣根を超えた大連合軍とそれを率いた『初代・妖精の王』。そして2柱の神により退けられたとされている。


その伝承自体におおよそ間違いはないのだろう。ショルシエにとって、この戦いはまさに徹底的に勝つための準備をした大連合軍に負けたのだ。


如何にショルシエ言えど、この敗北は強く記憶に刻み込まれた苦い記憶、という訳だ。


ざまぁない。というのが正直な本音だが、それを顔に出すことは無く、俺はまた淡々と準備を始めていた。


「我らの野望も目の前に迫って来た。連中も相当な準備をして来たが、貴様のおかげで魔法少女側の準備は万全ではない。だが、こちらは万全。負ける要素を探す方が難しい」


「くくく、確かにそうだ。我々が負ける要素は限りなく小さいと言って良い。あとは魔法少女を殺し、残りの王族を殺し、『神器』を奪う」


「あぁ、そうすれば俺はこの世界で唯一の王に。貴様は貴様を殺し得るモノを排除し、この世界を蹂躙できる」


これが、俺の建前。バカバカしいが、如何にも悪の大王と言った目的で、ショルシエの目的ともそこそこに合致する。


世界の破壊者たるショルシエにとって、暴君のいる世界はさぞや都合の良いことだろう。ショルシエの最も好きな、自らは手を下さずに世界はゆっくりと破滅の道へと進んでいく。

それが俺達の筋書きと言うモノ。


ゴミクズみたいな目的に頭がくらくらして来る。なんて思っていた。


「あぁそうだな、そうすれば、――『私』の目的は達成されたも同然っ!!」


暴力的な魔力のキラメキが俺の視界を覆い尽くした。


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― 新着の感想 ―
ショルシエに(性的な意味で)食べられちゃうですぅ~!
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